ジンバブエにおける音楽教育 「りる」第7号より
ジンバブエ K.O.
平成5年1次隊
音楽
私は今、Eveline high schoolの音楽授業で、高松第一高校から寄贈して頂いた楽器を使用して授業を始めました。現在、手始めにピアニカを教えていますが、各クラスとも予想以上の反響があり驚きました。ある生徒は私のところへきて、ピアニカを売ってほしいと言ってきました。それで楽器についての事情を説明すると生徒はがっかりした様子で帰っていきました。この生徒だけが特別なわけでは決してありません。生徒の中には楽器を生まれて初めて弾く者もいます。一年生(十三〜十四歳)は、ピアニカが好きとか嫌いではなく、珍しいからとにかく触っていたいのです。
授業が始まり、最初は好きなように練習をさせます。左側に指を運ぶと低音、右側は高音、ピーップーップーと生徒は楽しそうに音を鳴らします。そろそろ時間だと思ったところで「stop」と叫びます。が、静かになるのはほんの一瞬だけ。一人がピー、他の生徒がプー、また、別の生徒がピー、といった具合に永遠に終わる様子もありません。楽しんでくれたのであれば何よりです。習うより慣れろとも言うし、と自分に言い聞かせ、指使いの説明に入ります。
今教えているのは、ドレミの唄です。「ドの場所はここですよ。」と毎時間言うのですが、何人かは分からない生徒がいます。私の英語での説明が十分でないためか、生徒も自分なりに頭の中で理解しようと努力しているのだと思います。
が、分からないことが分からない生徒、分からなくても平気で友人と話に夢中になる生徒もいます。そしてまた、分からなくて済まなさそうに私を見る生徒もいます。そんな時には、私もうまく教えることができず、ただ済まなさそうにその生徒の顔を見てしまうのです。
教師経験が全くなかった私にとって、課題は沢山あります。授業を重ねる度に発見も増えてゆきます。クラスによって、怒らないと聞かないクラスや、何も言わなくても次々に練習していくクラス等様々で、日本でも同じことが言えるのではないでしょうか。クラスの雰囲気づくり、そして、生徒のやる気(集中力)を引き出す魅力ある授業ができるように試行錯誤の毎日です。
大学の恩師や母からの手紙によく「気を長くして教えてあげて下さい。」と書かれています。生徒にではなく、上手に伝えられない自分に腹を立て、ついつい鬼ババー化している自分に気付いた時、そしてこれからも、何度もこの言葉を頭に浮かべることでしょう。
来年一月には、新一年生が入学してきます。リコーダーにも挑戦するつもりです。教師経験のある隊員に訪ねたところ、「リコーダーはピアニカの何倍も教えるのが大変だよ。」と言われました。少し気おくれしながらも、今学期の経験をふまえて、少しでも楽しく分かりやすい授業ができればと思っています。最後になりましたが、ご多忙の中、楽器をご寄贈くださいました関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。