現地隊員レポート    「りる」第46号より

                                                    ベトナム   M.T.
                                                             平成17年度1次隊
                                     日本語教師
                                                                


『ベトナム帰国報告』

*ホーチミン市概要*

  平成17年7月から19年7月まで、ベトナムのホーチミン市で目木語教師として活動してきました。ホーチミン市はベトナム第一の経済都市です。まさに豪快なアジアの町という所で、夜は屋台と人、バイク、そしてそのクラクションの音で喧騒に包まれます。ベトナムの北部には四季がありますが、南部のホーチミン市は常夏の気候です。

湿度も高く暑いのですが、ベトナムの家は夏仕様になっており、床が大理石のような石のタイル張りになっているので、裸足で歩くとひんやりと気持ちよかったです。そのせいか、ふつうベトナムの人は家の中はどこでも裸足、子供たちは外でも裸足で遊んでいます。

 夜遅くまで子供たちが外で遊んでいたり、午前中カフェでゆっくりおしゃべりする人たちを見ると、ゆったりとした時間が流れているようにも見えますが、道路の交通量はすさまじく、ゆったりとした時間と忙しそうな様子両方が感じられるのが、ホーチミン市の魅力のような気がします。

*配属先について*

  私が配属されたホーチミン市人文社会科学大学は、教員数250名、学生数8000人の大学です。その中の東洋学部日本学科で教えていたのですが、そこには約300名の学生が勉強しており、ベトナム人日本語教師も9名ほどいました。

かわいい学生たちと

*活動について*

  私の主な活動は授業で日本語を教えるということでしたが、その他に、3つの目標を立て、活動を行ってきました。

1.新しいベトナム人教師の育成
2.日本語を使う場所を学生に提供すること
3.学習環境の整備:図書室の開設

 長くなりそうなので、2。の「日本語を使う場所を学生に提供する」ということについて、書かせていただきます。人文大学では1クラス30〜35名なので、会話の授業でもクラスメート同士で日本語を話す方法しかとれないため、実際に日本人に接する機会を作ってあげたいと考え、次の三つの活動を行いました。

(1)ボランティアガイドの実施

  06年の11月に、3年生の会話の授業の一環として、日本の人を相手にガイドをする活動を行いました。
案内場所:ホーチミン市の観光名所である統一会堂、聖母マリア協会、中央郵便局の3ヶ所
方法:学生3〜4人のグループを作り、これら三ヶ所を日本の人にガイドをした。

グループ制にすることで、できる学生が不得意な学生をカバーできるようにした。
ガイド終了後、日本の方には、感想のアンケートに協力していただいた。

ボランティアガイドしています

*大変だったこと

  ホーチミン市に観光客はたくさんいるので、日本人の確保は問題ないだろうと思っていたのですが、大間違いでした。日系の某旅行会社にボランティアガイドをさせてもらえないだろうかとお願いに言ってみたが、結果はNG。

日本から協力隊の活動を見に来られる方々がいるというので、その方々を相手にガイドさせていただく予定になったのですが、フライトの遅延で当日約束の時間になってからキャンセルされてしまいました。そこで、ホーチミン市在住の友人、知人(JOCV含む)に片っ端から依頼したところ、翌週何とか20名を確保でき、ガイドにこぎつけることができました。

*感想

これは私が企画したことで実際学生がやりたいと思っていたのかどうか分からなかったのですが、「ガイドを通してベトナムの歴史を知ることができた」とか「自分の実力が分かったから勉強の方法を変えようと思う」など、学生の感想文を読んで本当にやってよかったと思えました。

(2)日本人学校との交流会

  2年生の会話の授業の一環として、日本の小学生に、劇でベトナムの昔話を紹介したり、ベトナムの歌をおしえたりという活動を行いました。時間の都合上、全員が劇に出ることはできなかったので、事前に2週に分けて予選を行いました。

内容は、旧正月の食べ物の「バンチュン」「バンテット」を食べるようになったいわれや、水の神と山の神がお姫様をめぐって戦った話などがありました。予選の際は、そうとは思えないほど、衣装や場面の絵、効果音を準備してきており、正直驚きました。そして本番の際も、緊張しながらも学生たちはとても楽しんでやっていたように思います。

日本人学校での劇

 日本語を勉強して約1年での交流会だったので、学生にとっては1年間の勉強の成果を発表するいい機会になったと思いました。「日本人に会ったけれど、あまり話せなかったので、もっと勉強している」と感想を言う学生が多く、これからの勉強に対するいい刺激になったのではないかと感じました。

また、日本人学校に通っている子供たちはベトナムに住んでいるとはいっても、ほとんどベトナム文化に接する機会はないということでしたが、交流会は、ベトナム文化に触れるいい機会になったのではと思いました。

(3)Exchange Lessonの活動

  三つ目の活動としては、Exchange Lessonというものを始めました。Exchange Lessonというのは、人文大学でベトナム語を勉強している日本の人に、学生の会話の相手になってもらい、その代わりに学生はベトナム語を教えるというものです。まず大学で、ビラを配り、そのビラを見て集まってくださった方に簡単な説明を行いました。そして、お見合いのように、学生と日本の方のマッチングを行い、レッスンを始めてもらいました。

 Exchange Lessonをしていた学生の表情は、教室で見せる顔とは少し違ってよりいきいきとしており、教室外の生の会話がどれほど大切かに改めて気づかされました。

*活動を終えて*

  活動中、いろいろ大変なこともあり、日本語教師をやめたいと思うほど落ちこんだ時期もありました。普段の授業のほかに、計画をたてた活動、スピーチコンテストの準備などをしなければならず、荷が重過ぎると感じたことも幾度かありました。そんなときは同僚や、同じ協力隊の日本語教師隊員の言葉に励まされてなんとかやって来られたと感じています。

 一方、大きなイベントの際は自分でもこんな力があったのかと思うこともあり、新しい自分を少し発見できたような気がしています。そのような力が出せたのも、好きな日本語を教え、協力隊で来たからなのだと思います。そして今、本当に有意義な2年間だったと感じています。

 配属先の日本語教育のレベルは高く、(どうして私が人文大学に配属されたんだろう)と思ったこともありましたが、学生たちに出会え、人文大学に配属されてよかったと感じていまます。あんなに一生懸命でひたむきな学生に教えることができ、それだけでとても幸せだったと言えます。このような機会を与えてくださったことに、感謝しております。

 私はボランティアで行ったけれど、学生、同僚、同じ協力隊の仲間、そして香川の方々や家族など、本当にいろいろな人に支えられて2年間を送ることができたのだと思います。そのことを忘れず、今後は何らかの形でベトナムの人のお世話ができればと考えております。

最後になりましたが、香川県青年海外協力隊を育てる会のみなさまには、活動中多大なご支援をいただき、大変ありがたく感じております。この場を借りて、お礼申し上げます。