現地隊員レポート    「りる」第41号より

                                                    ベトナム   M.T.
                                                             平成17年度1次隊
                                     日本語教師
                                                                


『ベトナムに来て早1年』

 この7月でここホーチミンに来て丸1年が経ちました。初めのほうは辛いことも多かったので、時間が経つのが遅く感じられましたが、今年に入ってからはあっという間に時が過ぎました。ちょうど節目の1年なので、この1年の中で辛かったこと、嬉しかったことを思い出してみました。

 まず辛かったこと。配属先に赴任して最初の3ケ月が一番しんどい時期でした。大学の構内の建物に住むことになったのですが、そこは光のほとんど入らない部屋とトイレ、バスのワンルームタイプでした。(協力隊なんだからぜいたくは言えない)と思って暮らし始めて数日後、「ゴーッ」「ガンガンガン」とすさまじい音が・・・。(な、なに??)と思って外へ出てみて納得。

同じ敷地のすぐ向かいの場所で工事が始まっていたのです。何でも校舎が手狭になったため、2年かけて8階建ての建物を建てるのだとか。(はー、先が思いやられるなあ・・・)と思いながらも(昼間だけ我慢すればいいわ)とその日は近くのカフェで授業の準備をしました。

 そして、日中は家から脱出する生活を送っていたある日の夜、寝床に着こうとしていると「ガガガガガー」とまたすさまじい音が聞こえてきたのです。(まさか!)と思って見てみると、予想通り夜中も工事が行われていたのです・・・。ここは常夏の気候なので、涼しい夜に工事をするのも普通だとか・・・。

それから、毎日夜中の3時4時まで眠れない日が続き、やっと引越しすることにしたのですが、こちらに来てまだ数ヶ月、土地勘もなく言葉もつたない状態で家探しをするのも本当に大変でした。今思い出しても暗い気持ちになってくるほどですが、今は静かな所に住まわせてもらっているので、ありがたいなぁと感じています。引越し、配属から3ヶ月が過ぎたころから、ようやく活動に専念できるようになってきました。

 では次に嬉しかったことを書かせていただきます。毎年、ホーチミン市では大学や日本語学校の教師が事務局となって日本語のスピーチコンテストを開催しています。コンテスト前1ヶ月は、日曜日も休めないほど忙しい日々が続きます。今年は約100名の応募があったのですが、ラッキーなことに私の学生が優勝しました。そのことでも十分嬉しかったのですが、彼女に言ってもらった言葉が本当に嬉しいものでした。
   スピーチコンテストの後で

コンテスト後の懇親会で、感想を聞かれてその学生がこう言ったのです。「実は、私はスピーチコンテストなんて出ようと思ったことはありませんでした。でも高木先生が熱心だったのでがんばりました。優勝できたのは高木先生のおかげです」と。

 優勝できたのはもちろん彼女自身がそれだけの力を持っていたからと思っていますが、それでも今までの努力が報われたようで本当にうれしかったです。この出来事を通して、学生のもともと持っている素質や実力を引き出してやるのが教師の役目なんだと実感しました。偶然、今回はうまくいったのですが、まだまだうまくできてないような気がします。

 この日、ある友人が言っていた言葉を思い出しました。「仕事をしていると、時間や労力で自分の持っているエネルギーがどんどんマイナスになってしまう。でも好きな仕事をしていると、そのマイナス分を埋めてくれる出来事がきっとある。そしてプラスマイナスゼロになって自分の原点に戻れる」と。私は、この日の出来事を一生忘れることはないだろうと感じています。
   学部祭3年生と