現地隊員レポート    「りる」第40号より

                                                    ベトナム   M.T.
                                                             平成17年度1次隊
                                     日本語教師
                                                                


『ホーチミン市便り1』

 ベトナムに来て、早6ヶ月が経ちました。私の任地ホーチミン市はベトナム第一の大都会で、高松より大きいことは誰の目にも明らかなほどです。ハノイは首都ですが、同じベトナムと言っても、ホーチミン市とハノイ市とではぜんぜん違うという印象を受けました。

ホーチミン市は、街も人もハノイ市と比べて全体的に明るい感じがします。痩せている人もあまり見かけないし、近代的な建物も多いし、ハノイ市からホーチミン市に来ると、別の国に来たような感じさえ受けました。豊かな暮らしをしている人も多いようで、とても発展しています。

 ベトナムの人の交通手段は、もつぱらオートバイです。ガソリンの値段が上がっているため、オートバイに乗る人も減っているようですが、減っているとはとても思えないほどの交通量です。はじめのころは、その交通量とひどいマナーに慣れず、「こんなところで2年間もやっていけるのだろうか」と思ったりもしましたが、最近ようやく慣れてきました。(この交通マナーに慣れすぎてはいけないのですが・・・)排気ガスがひどいため、外出の際はベトナム人と同じようにマスクをしているので、学生に「ベトナム人みたい」と言われています。

 今年ベトナムで初めてのテトを迎えました。テトとは、ベトナムの旧正月のことで中国と同じく旧暦で新年を祝います。大晦日、元旦は、学生の田舎で過ごしました。

 年の瀬は日本と同じように、市場周辺は買い物客でにぎわっていました。買い物客のお目当ては、ホアマイ(梅の花)、服、スイカなどでした。そう、ベトナムではお正月にスイカを食べるのです。日本人にとって、スイカをお正月に食べるのは変な感じがしますが、丸い形と中身の赤色が福を表すと考えられているからのようです。
  爆弾のようなスイカ!

そしてホアマイとは黄色い梅の花のことで、テトに鉢植えの花を家の中に飾る習慣があります。元旦に花が咲くと一年を幸せに過ごせると言われるからだそうです。大晦日まで鉢植え市は開かれていて、遅くなればなるほど値段が下がるそうで、大晦日の夜だというのに人でいっぱい。日本の静かな大晦日とは大違いでした。

 そして元旦。前日と打って変わってお店も全て閉まっていて、静かそのもの。学生のお母さんは一年中土日も休まず薬局で働いているため、お正月が唯一家族と一緒にゆっくり過ごせるときだと言っていました。ところでベトナム語で「お正月を楽しく過ごす」というとき、「過ごす」という動詞を使わず、その意味で「An(食べる)」という動詞を使います。その言葉を聞く度に、納得!皆、本当にたくさん食べていました。

遅い朝ご飯を食べた後、学生の家族と一緒に親戚の家にお年賀の挨拶に行ったのですが、行く先々でお菓子やらバインチュンやらを振舞われ・・・「バインチュン」というのは、ベトナムのお正月料理で、もち米の中に緑豆やお肉が入っている、あっさり味の大型ちまきです。テトの後、「太った」と何人かの学生が言っていましたが、「そりゃあそうでしょう・・・」と思ってしまいました。(笑)

 さて、活動の方ですが、ホーチミン市人文社会科学というところで、日本学科の学生に日本語を教えて半年になります。最初の半年は、慣れない環境の中、授業とスピーチコンテストの準備などで忙しく、無我夢中の毎日でした。赴任先の大学は、ホーチミン市では日本語教育の歴史のある大学だけに、進度も日本にある日本語学校と同じくらいのスピードで進めており、優秀な学生ばかりです。そのため、教えがいがありますが、教師である私の方が四苦八苦という状況です。現在は、2年生、3年生の会話・作文の授業を担当しています。
  スピーチコンテストの後 学生と

学期末に、私の授業に対するアンケートを学生に行ったところ、いろんな意見を出してくれました。「日本の文化について知りたい。」「教科書の内容だけでなく、新聞などの他の問題も扱ってほしい。」「恥ずかしがり屋の学生にも発表させるために、前の週にあらかじめ指名しておく。」など。コメントを読み、日本語の勉強に対する彼女たちの熱心な姿勢が感じられたとともに、私もそれに応えるべく、よりよい授業を行っていきたいと思っています。そして、このような学生に教えられるのは、本当にありがたいことだなあとこちらに来て半年経った今、感じています。

3年生の授業
会話では、「テーマ別中級から学ぶ」の「考えましょう」「答えましようの9,10」「話しましょう」を担当したが、文法事項を補うため文法も教えた。今年の3年生はよくできると聞いていたが、本当にその通りだと思う。「ベトナムの環境問題について」というテーマで話しをさせたところ、一人の生徒から「環境を汚しているのは、80%が、工場が原因だそうです。でも政府は何もやっていません。どう思いますか。」との問題提起があった。

それに対して、一人の生徒(A)は
「排気ガスや汚い水をきれいする機械を企業は買わなければなりません。」
また別の生徒(B)は
「会社は利益を出すために、買わないんじゃないでしょうか。」
(A)「それなら、外国の企業の援助をうけた方がいいと思います。」
(B)「環境を汚している会社があっても、警察は賄賂をもらっているし・・・」
など、活発な意見が出された。その日の授業の後、改めて3年生の日本語力の高さを認識するとともに、彼女たちの実力を伸ばせるような授業をしていきたいと思った。また、発表者が偏りがちなので、より多くの生徒が発表できるよう工夫していきたい。

 3年生に対しても、授業の感想のアンケートを行ったところ、いろんな意見を出してくれた。「教科書の内容だけではなく、ニュースなどの他の問題も扱ってほしい。」「恥ずかしがり屋の学生にも発表させるために、前の週にあらかじめ宿題を出し、指名しておく」など。コメントを読み、勉強に対する彼女たちの熱心な姿勢が感じられたとともに、私もそれに応えるべく、よりよい授業を行っていきたいと決意を新たにしている。
  ベトナムの幸せ家族