現地隊員レポート 「りる」第46号より
ベトナム J.H.
平成18年度1次隊前期
日本語教師
「最近、ベトナムでは・・・」香川県青年海外協力隊を育てる会の皆様、いつもご支援ありがとうございます。早いもので、ベトナムでの生活もあと4ヶ月ほどとなりました。
ベトナムといえば、皆様は何を思い浮かべるでしょうか。ベトナム戦争、伝統衣装のアオザイ、フォーや生春巻きなどのベトナム料理・・・
協力隊の試験に合格してベトナムに来ることが決まったころ、私が持っていたベトナムのイメージは、「常夏」でした。ベトナムを始めとする東南アジアの国々は、1年中暑くて、みんな買い物したり働いたりと忙しそうに歩き回って、真っ黒に日焼けして・・・。そんな印象を持っていました。
しかし、私が住んでいる首都ハノイはベトナムの北部に位置し、日本同様ちゃんと四季があり、冬になるとしっかり寒くなるのです。昨年の冬は「寒い寒い」と言いながらも、「冬があるおかげで肌が焼けすぎなくてよかったな〜。」なんてのん気に考えていました。
しかし・・・!今年の冬は異常ともいえる寒さで、ベトナム人によると、「40年ぶりの寒さ」とのこと。とは言っても気温は日本より暖かく、いちばん寒かったころでも最高気温は10度近かったように思うのですが、1日中小雨が降っているし、日本と違って家は全て夏用に作られているためすきま風がひどく、暖房器具もほとんどありません。
寒いハノイの冬幸い私の家はホットシャワーがありますが、雨水で生活している地方隊員もいます。あまりの寒さにハノイの暖房器具も全部売り切れてしまい、小中学校は急遽10度以下の日は休みということになったそうです。私も日本から持ってきたカイロを使い切ってしまい、早く暖かくなることを祈る毎日です。
思えばベトナムへ来たばかりのころは、何を見てもびっくりして疑問に思うことだらけでしたが、2年目になると様々なことが日常のひとつになり、少しのことでは動じなくなりました。しかし昨年末、ベトナムの風物詩とも言える光景が少し変わり、久しぶりに不思議に思うことがありました。
ベトナムにいらっしゃったことがある方なら、道いっぱいに広がってクラクションを鳴らし続ける、バイクの波をご存じでしょう。ヘルメットもかぶらず、2人乗り、3人乗りは当たり前、一家5人で一つのバイクにまたがっていることもあります。そんな光景が、2007年12月15日を境に、ちょっとだけ変わりました。
ヘルメットの着用が義務付けられたのです。これまでも何度かヘルメット着用義務化を試みたものの失敗した、という話も聞いていたし、交通ルールはあってないようなものだと思っている(ように見える)ベトナム人を見ていて、12月14日まで、私はみんながその法律を守るとは思っていませんでした。
しかし、12月15日の朝道路に出てびっくり!道行くベトナム人がみんな、真新しいヘルメットをかぶっていたのです。ハノイ市内のヘルメット着用率は99%以上とも言われており、最初は罰金を恐れてみんな嫌々ヘルメットをかぶっているようでしたが、気がつくと、ヘルメットに絵を描くお店ができ、今ではみんないつでもどこでもヘルメットをかぶっています。
バイク5人乗りバイクに乗っているときだけではなく、バスやタクシーの中、喫茶店の中でもかぶっている人を見かけます。先日旅行をした際、飛行機の中でもヘルメットをかぶっていた人がいたのには、本当に驚かされました。また、食堂で接客をしている人がかぶっていたり、道端のマネキンがかぶっていたり・・・。
飛行機の中でもヘルメットベトナム人にとってのそれは、ヘルメットというより新しい帽子といった感覚なのでしょうか。バイクに乗っていないのにヘルメットをかぶっているベトナム人を見たり、お店で普通の帽子といっしょに陳列されているヘルメットを見たりする度に、不思議な気持ちになります。
よく考えてみると、さすが発展途上国というのか、私がベトナムへ来てからの短い間にも、この国には本当に様々な変化があったように思います。WTO加盟、国連安全保障理事会非常任理事国入りといった国としての大きな成長から、新しいビルの建設や道路の整備、また、ファーストフード店の増加や電子機器の普及といった身近なことまで、目にする全てのものがこの国の発展を象徴しているように感じられます。
このような時期のベトナムで活動し、若者たちといろいろな話ができることは、私にとって本当に貴重な経験になるだろうと思っています。
ベトナムへ来てまだ仕事や生活に慣れていないころは途方もなく長いと思っていた2年間も、あっという間にあと4ヶ月を残すのみとなり、授業も最後の1学期になってしまいました。ベトナムでの出会いや経験を大切にし、日本に帰ってから何らかの形で地域に生かせたらと思います。いつも見守ってくださって、本当にありがとうございます。