本当の援助の難しさ 「りる」第15号より
トンガ I.S.
平成7年2次隊
電話線路
現在トンガは2000年2001年の観光旅行客を見込んでホテル増築等の記事が新聞をにぎわしています。日付変更線が設定される際に、基本線とされた経線が、イギリスの重要な植民地であったフィジー諸島を横切っていたため、東へ大きくずらして引かれた結果、トンガが世界で一番早く朝をむかえる国になったのです。
そんな訳でその年の年末年始にかけては大きな(?)ホテルは旅行会社等の予約で満室との事です。しかし、これと言った観光名所も乏しく世界地図の上では点でしかないこの島国でその21世紀ブームが去った後はどうするつもりなのでしょう。私には目先の事しか考えてないように思えるのです。
現在のフィジーのようにいろんな国からの直行便があるのなら観光で外貨を稼ぐ事もできるでしょう。でも、どこかの国で必ず飛行機を乗り替えなければトンガには来る事は出来ません。この先観光で外貨を稼ぐにはあまりにもハンディが大き過ぎます。
ブローホールズ(潮吹き穴)トンガ観光名所の一つ
このはるかかなたに南極大陸があります
この国のお店を覗(のぞ)いて見ると、家庭電器、食器類は中国製、やかん、鍋類はインド製、服は中国製か韓国製が多いようです。もちろん日本の電気製品もありますが、それらは東南アジアの工場で製造された物のようです。いろんな国の製品が入っていますが、自国で製造する事ができない以上この現状はいつまでも続くでしょう。
私がトンガに来て一年半、その間「変ったなあ」と思うのは日本の無償援助で道路が整備された事、そして日本からの中古車のグレードがアップし車両台数も増えた事、この二点が目に見えて変化しました。しかしそれにしても車はいつか動かなくなるものです。その時の事は全く考えられていません。スクラップ車はどこでどうするのか?道端にはジュースや缶詰の空缶が当たり前のように捨てられています。
確かにこの国の人達は陽気で大らかです。でも日本人の目からみれば「本当にこれでいいの?」と言いたくなる事が山ほどあります。協力隊に参加して訓練所でいた時から援助(協力)に関していろんな事を教わりました。ここに来て援助をすることの難しさ、そしてこのような国が抱える問題の多さを改めて知らされたように思います。ただ単に自分の職務を二年間全うすればそれで『自分は援助したと言う事が成り立つのか』と考えさせられます。
作業現場にて カウンターパートと
日本人であるが故に他方面にも目が向き、もっと違ったところに援助が必要なのではないかと思ったりもします。援助活動とは本当に難しいものだと実感しています。
トンガの保守操作部門隊員の勢ぞろい(右端筆者)
東京電力(電気工事)、ヤマハ(船外機)、NTT(電話線路)
先日新聞(毎週一回発行)にトンガのラグビー選手が日本の会社と契約して日本に行く事になったと言う記事が載っていました。
その選手の月給はUS$7000とのことです。それを読んだ周りのトンガ人が「お前は日本でいくら給料を貰っているんだ?」と聞いてきます。この手の記事が出る事は私にとってはえらい迷惑な話です。「海外の選手は特別だ。」と言ってもわかってもらえません。トンガははっきり言って物価は高いです。
しかし、賃金はかなり低いです。我々協力隊員は世界中の途上国の物価を知るために、よく卵一個の値段を参考にしたりしますが、トンガは一個35円するのです。これはひょっとして日本よりも高いのではないでしょうか。
もちろん地元で取れる野菜などは安いのですが、それ以外は殆んど輸入品ですから日本と比べて安いと言った印象はありません。(もちろん卵は輸入品ではありません。)トンガの隊員の現地生活費は月額US$400です。それでもトンガの中ではかなり高額です。
首都に滞在している私は毎月赤字の連続です。トンガの人達はココナッツ、バナナ、パパイヤ、マンゴのような果物、それに主食の芋類は殆んどただで手に入りますが、外国人である私はバナナ一本でもマーケットで買わなければなりません。そんなふうに細かい事を言い出せば切りがありませんが、トンガの素朴で陽気なところが非常に気に入っています。青い海、青い空360度どこに目をやってもヤシの木が風景の中に入っています。ここは本当に「南国の楽園」なのでしょう。
トンガテレコムのメインオフィスの女性スタッフ達
みんなデカイです
今日は日曜日、朝10時には教会の鐘が鳴りみんな盛装して教会へと出かけて行きます。そして声量豊かなすばらしい賛美歌が聞こえて来ます。国中の交通機関(飛行機、船、バス、タクシーはストップし商店も全て閉店、非常に静かな休日(安息日)です。日本で暮らしていた時と比べるとまるで別世界にいるような時間の流れです。残りの任期が半年となった今、日本に帰れば絶対に味わう事の出来ないトンガの日曜日を十分に味わって帰りたいと思い
ます。