中傷文章事件
一番精神的につらかった事件でした。ちょうど業務にも生活にも慣れたころに、任地とダルエスサラームの公共機関30箇所に私に関する脅迫めいた中傷文章がFAXで送られたのでした。その内容は、
・NGO支援を違法商売。(古着を売買していると強盗が来ると脅迫めいた内容)
・数学の授業で難題を短時間で解かせようとするから悪い教師である。
・語学が下手。
・日本の紹介は自慢話。
などなど、A4用紙12枚にも及ぶ内容でした。もちろん、全くと言っていいほど、偽りです。ちょっと説明をすると、
・NGOの支援では、古着の売上は、苦労ばかりの無給奉仕でした、売上も前述の通り良くなかったため、苦労ばかりで結果が出ていなかったので、不満があったほどです。
・授業では確かに生徒に時間を考慮させましたが、国家試験には到底及ばない基礎問題ば かりを演習させていました、結局それ以降は時間にゆとりを持たせていましたが、国家 試験本番では、「難問はなかったけど、時間が足りなかった」と生徒は愚痴を言うので す。
・語学は赴任してから一年間半、日本人一人でしたから、隊員並以上には話せていたと思 います。
・生徒は数学以外に、高等経済学を勉強していたので、時折、日本の経済発展紹介した程 度ですが、聞きようによっては、自慢話とも取れるかもしねません、しかし、自分から 話したのでなく、生徒のリクエストに答えただけなのです。
どれもこれも第三者から見ると真実味があることが怖いところです。
文書を見て、書いたのが同僚の先生一人と生徒二人であることがわかった時は、かなりショックでした。(「この国に何をしに来たのだろう」と言う感じで、食事も睡眠も出来ない状況でした。)
もちろん、文書が出回った明朝早く、移民局が来ましたが、本件に関することは全く質問されず、ただ単に、町にいる外国人を把握しに来ただけで、(説明をするために心構えしていたため)拍子抜けしてしまいました。在外事務所でも文書が送られたダルエスサラームの公共機関に説明に行って頂きましたが、こういった(日本の隊員に関わらず、他国のボランティアについても)ボランティアに関する苦情文書はかなり送られてきているようです。知らないのはボランティア本人だけだったようです。少し残念ですが、途上国ではボランティアはあまり感謝されていない面もあるのは事実です。
この事件を通していろいろ勉強させられました。
まず、アフリカ人の性格です。「自己中心的で、プライドが高く、道徳観がない」と言うとひどいと感じますが、日本人と比べるとひどいものです。もちろん、すばらしい人もいますが、親友のアラブ人の話によると「アフリカの黒人は少数の良い人と多数の悪い人がいて、両者とも同じように接してくるため、見分けがつかないので、100%心を許すことは危険。」というわけです。(この親友のアラブ人は、タンザニアで生まれて、アフリカ人として生活してきているので極度の偏見ではないと思います。)
聞いた泥棒の話を紹介します。一つ目は、タンザニアでは、半数以上がキリスト教徒ですが、ある泥棒は、罪を犯した後、教会にざんげに行くのです。そして、また犯行を続けるわけです。その犯罪毎のざんげでのその犯行は「神が許された」と言うわけです。ニつ目は、バス事故がおきると当然死傷者が出るのですが、その付近の住民は死傷者を助けるどころか、乗客の荷物を村総出で盗むのです。先日起きた「中国人の留学生を面倒見ていた方が留学生に殺害された事件」を考えると、島国である日本人の外国人に対する接し方はある意味で、欠点だと思います。
「自分が不愉快な感じる相手は相手も不愉快に感じている。」と言われるように、日本人同士ですと、ある程度、接している時に信頼できるかどうか判断できると思いますが、それは外国人相手には通用しないと思います。結果として、「(見分けるのは難しいですが)悪意のある外国人に心を100パーセント許して接してしまうのでは」と思います。
次に、外国人であるがゆえに付きまとう語学と言う欠点があることです。ある程度外国語が話せても、第三者から見れば、外国人ですから、「語学が出来ない」と言われると妙な説得力があります。ですから、やはり敵は作らないことです。
最後に、途上国の指導において、学力、職歴、能力などのバックグラウンドが無意味になることがあると言うことです。そんな時は、やはり、相手のプライドを持ち上げて、調子に乗らせ、心理的に導くのが良いのではと思います。ただ、意外と難しいもので、プライドだけが高いタンザニア人には、日本では穏やかな隊員までも怒りっぽくなってしまうのです。