タンザニア紹介 「りる」第10号より
タンザニア H.I.
平成7年1次隊
果樹
今は十月です。紫雲山が紅葉している頃でしょうか。ここタンザニアは南半球にあり、季節は言うなれば春から初夏というところでジャカランタという街路樹が薄紫色の花を咲かせています。
私は赴任して三ヶ月。まだ仕事について報告出来るところまで行きませんので、今日はタンザニアについて紹介します。この国の公用語はスワヒリ語で、多数の部族がおり、日本でお馴染(なじ)みのマサイ族もその一つです。宗教もキリスト教、イスラム教、ヒンズー教等様々ありますが、部族間、宗教間の対立はなく、とても平和な国です。
タンザニアの田舎 よく見ると遠景にブロックの家が建ちつつある。
アフリカの変貌が見られる。
皆さん「ジャンボ」という挨拶を聞いたことがありますか?これは「ごきげんよう」という意味のスワヒリ語です。しかし、この国での挨拶は「ジャンボ」だけに止まらず「お目覚めはいかが?今日の調子はどう?ご家族はお元気?お仕事ははかどってる?」と長々と続くのであります。しかも年齢に対する上下関係が厳しくて、年上の人に会うと開口一番「シカモー」と最上級の敬語で挨拶しなければなりません。
「シカモー」に慣れていない私はすぐに「ジャンボ」と言ってしまい、「シカモーが先でしょ」と注意されたこともありました。子供達は私とすれ違う時「シカモー」と言ってくれるのですが、言われることにも慣れていない私はとても照れてしまいます。
この年齢に対する上下関係はバスの中で特に発揮されます。小中学生はよほどバスの中がガラガラでない限り座りません。小さい子が座っていて、お年寄りが立っていたりすると、車掌が子供を立たせて、お年寄りを座らせます。次に席を譲られるのは赤ちゃんを連れたお母さんです。その次になぜか私。私は背も低く童顔で、日本ではよく高校生に間違われていたのにどうしてでしょうか。でも座れと言ってくれているのだからいつも喜んで座らせてもらっています。
バスの多くは日本のおさがりで、○○幼稚園、△△スイミングスクール、仕出し××と書いたまま走っていて、それに定員三百%くらい詰め込んで走っているため、座っていないと苦しいのです。
タンザニア全体についてはこのくらいにして、次に私の任地ムベヤを紹介したいと思います。ムベヤはタンザン鉄道の通っている町で市内からマラウィ国境・ザンビア国境までそれぞれ百q程です。タンザニアといえば暑くて、サバンナが広がっていて・・・と多くの方が想像されると思いますが、ムベヤは全く違います。
タンザニア・ケニアの国境に聳(そび)えるアフリカの最高峰キリマンジャロの勇勢
標高千七百mだから涼しいし、特に私の住んでいる村は市内から三十Km程山にはいった標高二千四百mの高地で、日中はポカポカしているのですが、朝晩は吐く息が白くなります。ここで果樹の仕事をしているわけですが、栽培しているのはモモです。
「タンザニアでモモなんて!」と思われるかも知れませんが確かに桃なのです。栽培歴が新しいので岡山で採れるような立派なものではありませんが、八月頃にはピンクの花を咲かせ、村の景色は日本の山村そのものです。また、九月、十月には近くの川でニジマスが釣れ、炭火で塩焼きにして食べると日本が恋しくなります。タンザニアで料理する時には炭や薪を使うのが一般的で、日本では贅沢(ぜいたく)となった肉や魚の炭焼きが気軽に手に入ります。
何十年か前の日本にタイムスリップしたようなこの村で、村人に溶け込むことから手始めに、今後の活動を進めて行こうと思います。
私の母校で協力隊のパネル展が開かれ、隊員の活動に関心が持たれつつあることを知り嬉しく思いました。日本の、そして何より任国の人々の期待にどこまで答えられるか分かりませんが、自分なりに努力し、任期を終えられるよう励みます。
では今回はこの辺りで失礼します。
アフリカの最高峰キリマンジャロをバックにI隊員のお父様(右端)