現地隊員レポート 「りる」第72号より
タイ 山地 優子
平成28年度3次隊
日本語教育
『任地「タイ」の紹介』
みなさま、こんにちは!私は日本語教育隊員として、2017年1月からタイに赴任しています。タイというと日本人の皆さまにおなじみなのは、首都バンコク、古都チェンマイ、あとはプーケットなどの南の島々、といった感じだと思いますが、私の任地は、タイ東北部のシーサケット県。カンボジアと国境を接する地方都市です。目立った観光地もなく、旅行者もほとんど見かけない土地ですが、このような場所でタイの人々と共に働く機会が得られるのは、協力隊ならではだなあと思っています。
配属先について
私の配属先は、シーサケット市内中心部にある中高一貫校です。シーサケット市内は飲食店や市場などもたくさんあり、生活に困ることはありません。学校の生徒数は2,800人で、中学生から高校生約500人が選択科目、あるいは専攻コースで日本語を学んでいます。タイの多くの中高校で第二外国語として日本語が学習されていて、外国語教育に関しては、タイの中高のほうがすすんでいるなあと感じることがあります
今回は、タイの学校で働いて、日本との違いにびっくりすることが多々あるので、皆さんにご紹介したいと思います。
タイの挨拶
タイは仏教国であり、仏教の教えが人々の日々の生活に浸透しています。タイでは、年上は敬うもの、尊敬するものとされています。ですから、生徒は先生にあったら、かならずワイ(合掌)をします。ワイは年下から年上にするものなので、先生から学生に進んで挨拶(ワイ)することはありません。教職員同士も同様に、年下の先生から、年上の先生にワイします。
実は私は外国語学科の教員の中で一番年上なのですが、日本人の習慣として自分からすすんで挨拶(ワイ)をしていました。そのたびに、同僚の先生から「先生はピー(お姉さん)なのですから、ワイはしないでください」と注意されます。年上からワイされると、とても戸惑ってしまうようです。このように、ところ変われば習慣も変わるので、とても戸惑いますが、郷に入れば郷に従え、最近ようやく自分からワイしないようになりました。
タイ中高校の朝礼
タイの中高校では毎朝朝礼が行われます。全校生徒が校庭に集まり、国家斉唱したあと、国旗掲揚し、お経を唱えます。また、瞑想(サマーティ)の時間がとられたりすることもあります。そして、中学一年生から順番に上級生にワイしていき、最後は国王の歌を斉唱し、礼は終了します。朝礼でお経を唱えたり、瞑想するなんて、まさに仏教国ならではの光景ですよね。また、お坊さんが定期的に学校にやってきて托鉢をすることもあります。タイの人々は托鉢することで徳を積むことができ、来世はとても幸せになれると信じています。
先生と生徒
職員室や日本語の教室などで、生徒は靴を脱いで入室しますが、教職員は靴を脱ぎません。また、先生と話すときは、生徒は床にひざまづきます。ですので、職員室では先生の周りに生徒たちが座り込んでいる光景がよくみられます。タイで先生は尊敬すべき存在なので、このようになるのですが、赴任当初はちょっとなれませんでした。先生が生徒をお使いにやったり、雑用を頼んだりすることも多く、それを生徒はよろこんで引き受けており、先生と生徒の関係も日本とはちがうなあと感じます。
国王への尊敬の念
この様に、タイでは仏教の教えが人々の生活の一部となっていますが、同様に、タイの人々は国王への尊敬の気持ちがとても強いです。
昨年の10月にタイ前国王である、プミポン国王が崩御されましたが、その後1年間は公務員は哀悼の意を表すため、黒い服装の着用が推奨されていました。というわけで、私も赴任直後から勤務中は黒づくめの恰好で過ごしています。最初は黒い服を買い集めるのが大変でした。基本、タイ人にはカラフルな服装が好まれるとのことなので、この喪が明けたあとは、カラフルな洋服を買いに走らなければならなくなりそうです。
日替わりの制服
カラフル、と言えば、タイの高校では、曜日で着る制服が決まっています。私の配属先では、月曜日は全校指定の制服、火曜日はスクールカラーのピンクのシャツにズボン、水曜日は制服(中学生はガールスカウト、ボーイスカウトの服)、木曜日はクラスのシャツ(クラスごとにカラーが決まっている)にズボン、金曜日は制服といった具合です。赴任当初は、毎日校内で、色とりどりのシャツを着た学生が歩いているがとても不思議でしたが、タイの高校ではこれがスタンダードのようです。
時間の観念の違い
時間の観念もタイと日本ではまったく違います。まず、授業と授業の間に休み時間が設定されていません。なので、始まる時間、終わる時間もあいまいです。先生も生徒も遅刻はあたりまえ。でもなんとなく始まってなんとなく終わる、これがふつうです。集合時間に30分おくれるなんてことは日常茶飯事。遅れても、遅れられても特に怒りません。なんだか、時間に厳しい日本人にとってはちょっとうらやましく感じることもあります、
日本語教育という要請でタイの高校で活動していますが、ここで求められているのは、日本語教師としてというよりも、高校の先生として生徒の人間形成にかかわる姿勢だと感じています。ここに書ききれないくらい、驚くことや、ありえないと思うことも多発するタイですが、自分の考えを押し付けてもうまくいきません。タイの人々を理解して、ともに働き、生徒たちの中高校生活が少しでも色鮮やかになればいいなあと思い、日々奮闘しています。