アッサラーム・アライクム 「りる」第12号より
シリア S.T.
平成7年2次隊
電子機器
この表題は、「あなた方の上に平安あれ」という意味のアラビア語で、「こんにちは」や「さようなら」の意味で使える便利なあいさつなので、私も多用しています。今回は配属先の様子、活動の状況、シリアでの生活について報告させていただきます。
一、配属先の様子
私の配属先、工業試験研究所、電気課の業務は、家庭用電気製品の検査が中心となっています。シリアの企業が電気製品を製造する場合、工業省の操業の認可が必要となるらしく、配属先の電気課は、その認可業務のための製品検査の一部を担当しています。
シリア南部 ローマ時代の城のあと
電気課には、課長(51歳、男性)と3人の課員(30代後半の女性2人と30歳の女性)が在籍しています。電気課に限らず、若年の(特に男性)従業員が少ないことが工業試験研究所の人員構成の特徴です。国営部門の給与が低いことが原因の一つだと聞いています。
シリア南部 ボスラのローマ時代の円形劇場
依頼される検品は、鉛蓄電池、扇風機、電気温水器、洗濯機、冷蔵庫、電熱器、照明器具、銅線、遮断器等雑多です。認可のための検査が主ということもあって、検品の量は多くないのですが、一つの課で、電気・電子関係の製品を対象にするのは、範囲が広すぎると私には感じられます。そのためか、検品の構造や原理、規格や測定原理を理解しようという姿勢はあまり見られず、検品をブラックボックスとして扱って、所有している(不十分な)測定機器で測定可能な項目だけを選び、結果を報告書にまとめています。
シリア南部 ボスラのローマ時代の遺跡にて子供と
工業試験研究所は、国営の検査機関なのですが、検査収入と消耗品や工具、機材等の支出との収支が関心事の一つであるらしく、また事務手続きが煩雑らしい事もあって、工具や消耗品の購入には心理的な抵抗があるようです。電気課には、電線さえ常備されていませんでした。
二、活動の状況
日常の検査業務に対応しつつ、検査に必要な簡単な装置を自分たちで作ろうと考えています。電気課の人に限らず、工業試験研究所内の技術者で装置の自作に興味を持ってくれる人を対象に、簡単な回路を一緒に作っていこうと考えています。
検査業務を効率的にすすめるために、JISや海外の規格等を電気課に常備することを試みています。また、不足している測定機器の中で重要度の高い機材の仕様や値段、入手方法の調査をすすめています。
今年の3月末に協力隊の予算で、”はんだごて”等の工具とトランジスタ等電子部品を少量購入し、直流安定化電源、トラッキング電源、デジタルパネルメータ、トランジスタセンサーを用いた温度計、2相発振器を製作しました。残念ながら電気課の人は、装置の自作にあまり興味を示してくれていませんが、修理工場に所属するシリア人技術者が、回路の製作に興味を示してくれています。彼は直流安定化電源の製作を1回路終えました。
シリア南部 シャハバの遺跡にて子供達と
私の所属する電気課が、装置の製作に乗り気でなく、彼は違う部署に所属していることから、予算の確保が難しく、また私自身、装置の自作の経験がないので、金銭的にも技術的にも問題がありますが、装置の自作の試みを継続しようと考えています。
電気課の同僚たちは、英語に興味があるので、技術的なことは、置いておいて、ときどき一緒に英語を勉強することから始めています。
三、シリアでの生活について
4人の同僚の内、3人までが結婚していて、子供がいます。ときたま、子供を仕事場に連れてきて、実験室で遊ばせるので、工具にいたずらをされて困りますが、微笑(ほほえ)ましく、のどかです。彼女らは、子供が試験だといって2週間ほど仕事を休んでいました。どうして子供が試験だと親が仕事を休んで子供を教えなければならないのか、よく分かりませんが、その位大事なことなのだろうと想像しています。シリアは、日本以上の学歴祉会で、給料は、学歴と年齢だけで決まってしまいます(国営部門の場合)そういうことも関係しているのだろうと思います。
シリア人同僚
アラブでは、人の呼び方も子供中心です。父親は、本名以外に長男の名前で呼ばれる通称名を持っています。例えば長男がヤーロブの父親は、本名以外にアブーヤーロブと呼ばれます(アブーは父親という意味)。
シリアの室内照明は、蛍光灯よりも白熱灯の方が一般的です。シャンデリア状のもが多く、小さな白熱灯を多数用います。インドネシア製等の安価な輸入品を使うので、よく電球が切れます。そのため電球の数を多くして、どれかが切れても全体としてあまり暗くならないように考えられているようです。
レストラン等でも全ての電球が点灯しているのはまれです。市の中心部では、電圧値も比較的よく制御されていますが、郊外では公称220Vの電圧が120V程度まで下がることもあると聞きます、蛍光灯が点灯しなくなることも、しばしばだそうです。シャンデリア状の白熱灯はシリアに適した照明だと思いますが、難点は、まれに点灯時の突入電流で、電球が爆発して、部屋の中が、ガラスの破片だらけになることです。
工業試験研究所では、10時半から11時までが休憩時間で、皆遅い朝食を食べます。私も同僚にサンドイッチをもらって食べています。昼食は、2時に仕事が終わった後、家に帰って食べます。昼食の後、昼寝をするのが一般的のようです。私の部屋はビルの最上階にあり、強い陽射しで焼けた屋根のせいで夜中まで部屋の中は暑くなります。日中の午後の方が部屋の中は、涼しく私も昼寝をしています。
以上、簡単に活動の状況とシリアでの生活の様子を報告させていただきました。活動内容については、今後、私自身勉強しながら、シリア人同僚と話し合い、軌道修正していくことが必要だと思っています。進展がありましたら、また報告させていただきます。