シリアの紹介 「りる」第11号より
シリア S.T.
平成7年2次隊
電子機器
私がシリアに赴任して約ニケ月、配属先の機関で活動を開始してから約一ケ月が過ぎました。配属先での仕事について、まだ十分な報告ができませんので、以下シリアの紹介を中心に現在の状況を報告させていただきます。
1.任国について
シリアは中東のアラブの国の一つで、イスラム教徒が人口の9割を占める国です。中東というと、砂漠の国というイメージがあるかと思いますが、シリアは農産物の豊かな国で中東の農業国です。
(農業国といっても国の東半分は砂漠が広がり、豊かな農地は国の西側に集中しているらしいのですが。)実際に首都のダマスカスの八百屋には、安くて大きな野菜がたくさん並んでいます。野菜はだいたいkg当たり25円から100円くらいです。(今にんじんは1kgで25円くらい。)
ダマスカスのモスク
公用語は、アラビア語です。アラビア語にはフスハ(正則アラビア語)とアンミーエ(方言のようなもの)があり、コーランを書き表すのに用いられているのがフスハです。神聖なコーランの解釈が時代とともに変わっては困るので、フスハはイスラム教の誕生した7世紀当時そのままの言葉となっています。
学校教育やTVのニュースはフスハで行われ、アラブ諸国の共通語となっています。アンミーエは各地域によって変わる方言のようなもので、文字に書き表されることがほとんどありませんが、日常生活では、主にアンミーエが使われています。
私たち協力隊員は、このアンミーエの現地訓練を受けて各機関に配属されます。アンミーエは文字に書き表されることがないので、シリア人の先生の手作りの教科書で、シリアのアンミーエを勉強しています。英語のように辞書があるということは、実にすごいことなんだと感じています。
シリアのTVニュースは、英語放送もフランス語放送もあって国際色豊かなのですが、一般の人の英語にはとまどうこともあります。アラビア語には、本来pやvの音がないので、「pen」が「ben」になってしまうことがよくあります。
もっとも私たち日本人の英語もひどいものかもしれませんが。私たちにはあたりまえのpとvの区別が彼らには難しく、彼らには自然なrとl(エル)の区別が私たちにとっては難しく感じられ育った環境の違いを感じます。
語学研修中のアウトドアレッスン ダマスカスの北のカシオン山にて
2.任地の生活環境
私の任地ダマスカスは、人口約300万人(周辺部を含む)のアラブ諸国の都市の中で最古の町です。時々停電がありますが、日常生活に困るほどのことはなく、食料品、その他の日用品も安価に入手できます。例えば米は1kg約90円くらい、牛肉は1kg約570円くらいです。
交通手段は、タクシiと、セルビスと呼ばれる小型の市バスのようなものが中心でセルビスの料金は1回12円くらいです。ただし、行き先がアラビア語だけで書かれているので、まだ私は一人で行きたい所に行くことができません。
イスラム諸国には、ラマダンと呼ばれる断食月が一年に約一ケ月あり、今ちょうどラマダンの最中です。日の出から日没までの間、食べること、飲むこと、たばこを吸うことが禁じられています。(私はイスラム教徒「ムスリム」ではないので、ラマダンに従う必要はありませんが、ムスリムの前では食べないようにしています。)
普段は勤務時間が午前八時から午後二時までなのですが、ラマダン中は午前九時から午後一時半となり、商店の営業時間も不規則になります。休日の金曜日には商店も普通営業しないので、ラマダン中は買物が思うようにできません。
3.配属先について
私の配属先は、シリアの工業省、工業試験研究所というところで、工業製品の検査をする機関です。私の所属する電気課は、私を含めても総員五人という小所帯です。
事務手続きが複雑なことや予算が少ないせいもあってか、電気、電子の実験室には、普通置いてある小物や部品(抵抗やトランジスタ、はんだごて、絶縁テープ等)がなく、また試験所に当然あるべき文献類(工業規格や標準試験方法等のドキュメント)もありません。
これからどうやって活動を進めていくのか考えているところです。幸いなことに(不思議なことに?)町ではIC類や電子機器部品もたくさん売られているので、それらを使って何かできないかと考えています。
詳細については次回、報告させていただきます。
語学研修中の一泊旅行で行ったパルミラの風景