現地隊員レポート             「りる」第57号より 

                                                    セネガル   T.W.
                                                             平成21年度4次隊
                                         村落開発普及員
    

 

『セネガル養蜂レポート』

 前々号の55号に投稿して、「次号につづく」で締めておきながら、うっかり、56号の投稿を忘れてしまいました。失礼しました。その55号での投稿以降の活動、事件をいくつか紹介します。

 今年の1月に、Nadiawara村というところで、第1回目となる養蜂研修を3日間の日程で開催しました。私の前任者が養蜂箱を既に設置しているNadiawara村から2人と、今回新たに養蜂を導入する近隣の2村からの各2人、計6人が研修の主なターゲットです。

この3村はお互いに隣接していて、養蜂に必要な道具類をお互い、貸し借りしやすいようにと選びました。研修の講師は、私の任地のある県では最高の養蜂技術、知識、経験を持っているであろう、熟練養蜂家にお願いしました。

養蜂研修では、養蜂の技術や知識を身につけるほか、実際に養蜂箱を作ることもします。研修でセメント製と木製を各1基作り、さらに研修後に、復習もかねて、セメント製と木製を各1基作りました。

ただ出来上がった養蜂箱を住民にあげるのではなくて、住民自らが養蜂箱を作り、それを自分たちの村に設置することで、養蜂箱に対するオーナーシップ意識を持ってもらうことが狙いです。

 そして、養蜂箱が出来上がり、村の茂みに設置したわけですが、そのうちの木製の1基は、わずか3ヶ月で使い物にならなくなってしまいました。原因はシロアリです。風で養蜂箱が木の上から転落。その報告を私が受けたのは10日ほど経ってからで、防護服持参で現場に向かったときには、既に写真のような状態に・・・。

一見、泥のかたまりのように見えるのが、実は養蜂箱の残骸なのです。ほのかに蜂密の香りが残っていて、蜂が作ったであろう巣板のかけらも見えました。蜂がいたこの箱は、わずか10日でご覧のとおり、シロアリの餌食となってしまったのです。

 また別の村では、ウシ事件が起こりました。養蜂箱を設置した茂みは、ウシなどの家畜の放牧地にもなっています。何が引き金となったのか、放牧中のウシが養蜂箱を襲撃しました。

 怒り狂った蜂たちは養蜂箱から飛び出します。そのとき運悪く、村の女性が茂みで薪拾いをしていました。女性は蜂に襲われ、何ヶ所か刺されてしまいました。近くにいた子どもたちが女性を連れて逃げ、大事に至ることはありませんでしたが、村では大事件になりました。この村での養蜂はかなりうまくいっていて、上質な蜂蜜が何リットルも採れているのですが、人への被害があってはいけません。

ウシ事件のあと、私、養蜂家、住民、村長で集まって話し合いを持ちました。結果、薪拾いは行わないような、村から少し離れた別の茂みへ養蜂箱を移設するということで決着しました。

 6月には、私の任地、Medina Sabakh村で第2回目となる養蜂研修を行いました。今回は、既に養蜂をやっている村2村と、養蜂をこれから始める3村からの参加です。研修内容は前回同様です。

研修後、3村に新たに養蜂箱を設置したのですが、これがなかなかうまくいかないのです。1月に養蜂箱を設置したときは、ものの3日ぐらいで蜂群が「入居」してくれたのですが、今回は蜂群がなかなか入らず、1村ではトカゲが、残り2村では無数のアリが住み着いてしまうのです。

何度掃除して追い払っても、次、観察したときにはまた、トカゲ、アリ。原因は、季節にあったのかもしれません。雨季が終わりかける9月にはトカゲが退去して間もなく、蜂群が入りました。アリの方も、雨季が終わった11月には寄り付かなくなり、今は蜂群が入るのを待っているところです。今回の養蜂研修では、セメント製養蜂箱の製作に必要な型枠や、2〜3ヶ村で共有するための防護服や燻煙器などを発注、購入しました。

これで、住民が養蜂箱を新たに作りたい場合は、さして高価ではない原材料さえ買い揃えれば養蜂箱が作れるようになりましたし、防護服等も、最寄りの養蜂組合に出向いて貸し出してもらえるようになりました。そして既に、「自分で原材料を買って養蜂箱を作りたいから、型枠を貸してくれないか」と言ってくる人が何人か私を訪ねてきています。

さらに、私が1ヶ月ほどの旅行で出かけていた間には、ある養蜂家は養蜂研修で習ったことを自分なりに工夫して、自己流の養蜂箱を既に作っていました。

 私の任期も残り5ヶ月を切りました。私が帰国してからも、村の「蜂好きおやじ」たちが養蜂を続けていけるようなサポートを続けていきたいです。