隊員レポート 「りる」第33号より
セネガル S.I.
平成13年度2次隊
村落開発普及員
1年半の活動を振り返って
私がセネガルに協力隊村落開発普及員として派遣されて一年半が過ぎた。
私の任地フンジュン県は、セネガルの中でも生活の厳しい地域の一つであるファティック州に属している。入り江の入りくむデルタ地帯を構成しており、マングローブや野鳥など多くの自然が残されている反面、ここ数十年続く少雨のため、塩害が一段とひどくなり、海洋資源の減少、土壌・井戸水の塩害化に悩まされ続けている。
その県都であるフンジュン市は、内海に面した港で、植民地時代には落花生の積出港として賑わっていた。現在は、小規模な漁業とフランス人相手の観光が主な産業となっている。対岸との間に定期的にフェリーが運航されているが、内海とフェリーを見ているとふと高松が懐かしく感じることもある。愉快に唄い踊る村人たち(りる34号)
そのような環境の中で、私は女性のための貯蓄貸付組合との活動、漁協信用組合との活動を中心に行っている。女性のための組合は、社会的に商売等の資金を借りる機会の少ない女性を対象に県下の女性グループ・個人を対象に融資を行っている。活動内容は、組合全体の経営の指導、特に目標管理を重点的に行っている。
日常業務に関しては、業務を開始して既に1年以上経ち、ずいぶん手際も良くなってきた。ただ、県の総面積は19,700ku(香川県:1,876kuの10倍、四国:18,788kuとほぼ同じ)もあるのに、本店一つしか窓口が無いため、県下全ての女性にサービスを行き届かせられないという問題を抱えてきた。
県下の遠隔地に支店を設けられるようセネガルの援助機関に支援を求め続けてきたが、なかなか支援が得られないので、現在、県下の主な都市や郡部の責任者の家で支店業務を行えるよう地方からの人材集め・人材育成に取り組んでいる。
漁協信用組合の方は、対象となる島の村々とは漁船で結ばれているので距離的な遠さはあまり気にならない。さらに手持ちの小銭で買った野菜・海産物などを市場・路上で売るといったスタイルがメインの女性たちに比べて、漁師たちは現金収入に恵まれているので、こちらの方が後発であるにもかかわらず、貯蓄は女性のための組合よりもたくさん集まってきている。
こちらの方で求められている業務は、貸付対象の選定の際、貸付使途の有効性を高めるための助言と、女性のための組合よりも高度な目標管理の実施(当組合にはパソコンが導入されている)である。当組合の職員は、地元の大学を出たばかりの若者2名なので、とても覚えが早いし勘も良い。
将来的には、この組合の若者たちに、同業他社である女性組合の方への助言等も行ってもらえたらと期待している。
また、金融分野以外では、近くの島で村の診療小屋の建設・運営を手伝っている。いつもお金の計算ばかりというのにちょっとうんざりして始めた活動だが、村で集められる資金にも限りがあり、結局、こちらでもお金と格闘している。建物はもうすぐ完成を迎える予定だが、持続的に運営していけるためのシステム作りを行えるかどうか、これからが正念場だ。
1年半も過ぎているのに、言葉の面での苦労は今だ絶えない。セネガル人たちとの普段の生活では、軽口を言い合ってとても楽しんでいるが、真剣に活動しているともっといろんなことを伝えたくなる。残り任期わずかになって、フランス語・現地語の習得、現地の文化の理解にいっそう身が入ってきた気がする。