セネガル・コルダから      「りる」第21号より

     セネガル       H.S.

                     平成10年度3次隊

                     野菜

 

 セネガルは西アフリカにある国で、パリ・ダカール・ラリーの終着地ダカールが首都である。今は雨季に入り、国民の70%を占める農民達は主食の米、ミレット、換金作物の落花生、綿花の栽培をしており、今回は野菜隊員としての活動報告ではなく、私の体験、思っていることを書こうと思う。

 任地コルダに派遣される前、首都ダカールでホームステイをしながらの現地語語学研修があった。語学学校の近くでセネガルの有名な打楽器・タムタムを作りながら売って生活をしている人がいた。駒ヶ根訓練所時代、西アフリカ隊員を中心に駒ヶ根市民のみなさんとタムタムを習っていたので、「せっかく本場セネガルに来たのだから。」と習い始めた。

 タムタムの先生の友人も仕事が終わった後、そこに各々、タムタムやギターを持って来、演奏しながら楽しい時を過ごしていた。イスラム教のタマハリの日には、男の子は女の子の、女の子は男の子の格好で手作りのタムタムを手に、家々をお菓子をもらいながら回るのだが、私もタムタムを通して知り合った友人達とタムタムを叩き、踊りながら祭りに参加した。私が知り合ったセネガル人は皆、良く知らない日本人の私にも親切で、タムタム以外にも彼らの興味があること文化などを話し合った。彼らとは、ダカールを離れた今でも交流が続いている。

 コルダでも人々は親切で、毎日いっしょにご飯を食べている。語学訓練の時挨拶中心に勉強したのだが、本当にみんな挨拶が好きなのか、道で知り合いに会ったというだけで、「あなたに会えて、とてもうれしい。」という笑みとともに挨拶をする。仕事はどうか、家庭は元気か、友達は元気か、と。いつまでもこの文化がなくならないことを願っている。セネガルでは大皿を囲んで手でご飯を食べるのだが、日本の銭湯での「裸の付き合い」と同じで心の結びつきが深まる良い習慣だと思う。

 任地コルダは、首都ダカールから車で南下すること8時間のところに在る。首都の近くは砂漠が続き「あぁ、ここは砂漠の国なのだ。」と感じ、砂漠化の問題に思いを馳せるが、コルダに近づくにつれて、緑が目を楽しませ、土地の豊かさが手に取るように感じられ、大きな河を通り過ぎると、コルダ州に入る。州はセネガルでは貧しい部類に属しているのだが、農業の気候は恵まれている。紙の上で勉強してきたセネガルの知識に、今は色がついてきたのを感じる。

 セネガル問題の一つに、「タリベ」という、親から離れてイスラム教のコーランを勉強して修業をしている子供たちが大勢いる。彼らはコーランを勉強している時以外は、家々を回ってコーランを唱えるかわりにご飯を食べさせてもらったり、お米やお金をもらったりする。彼らは社会的には、仕事のない弱者で、同じコルダの看護婦隊員はタリベの村で子供や妊婦の検診、指導を行っている。

 私の派遣内容は、女性グループや青年グループヘの有機栽培、換金作物の栽培指導であるが、タリベの子供達に野菜栽培を教えたいと思っている。将来、彼らが、大きくなった時、仕事を持つ手助けになれば、うれしい。

 まだまだ始まったばかりで、これから大きな壁があるかも知れないが、今まで知り合った友人や日本の家族、友人のことを思いながら協力隊生活を始めようと思う。