現地隊員レポート 「りる」第32号より
ポーランド N.W.
平成13年度2次隊
日本語教師
ポーランド2度めの春
日本のみなさん、ご機嫌いかがですか?私のポーランド生活も、もうすぐ1年半を迎えます。「協力隊活動は、2年めが過ぎるのがとても早い」と言われますが、まったくそのとおりだと思う今日この頃です。
ポーランド人でさえ「長い」と嘆いていた冬(10月から4月まで雪が降っていました。香川県人として、最低気温がマイナス20度を下回る中での生活は容易ではなかったです)がようやく終わりを告げ、この国にもつかの間の春夏がやってきました。私が住むTorunは観光地であるため、遠足の子どもたちやドイツからの観光客の姿が絶えません。
冬の間は閑散としていた広場にもオープンカフェが所狭しと並び、魅力的な風景を作り出しています。春夏の天気がいい日にポーランドを訪れると、いわゆる西欧の国々と何ら変わりがない、と感じられるかもしれません。しかし、街を歩いているとあいかわらず、「生まれて初めてアジア人を見てびっくり」といった風な子どもたちの好奇な視線の的となります。
さて、私の日本語教師としての活動は順調です。現在Torun大学で日本語を学んでいる学生は30〜40名。学年度始めには驚くなかれ130名以上いた学習希望者も、教師陣の予想どおり次々と脱落していき、今は本当に興味がある学生が残っているという感じです。日本語教育に関わるポーランド人の先生が4人もいるという恵まれた環境の中で、私は2年目以上の学生を担当しています。
日本語を勉強する学生は、私の学生に関して言えば、礼儀正しく優しいタイプの学生が多いです。日本語に興味を持つくらいなので、3ヶ国語を話せる学生は珍しくなく、中には中国語やチベット語を含め10ヶ国語以上を勉強している言語マニアもいます。彼らの言語能力には舌を巻くばかりです。
新しい取り組みといえば、4月から書道の授業が始まりました。赴任した当初から希望が強かった書道教室ですが、普段の授業に追われたり、道具が揃わなかったり、はたまた私自身に教える自信がなかったりと、今の今まで引き延ばしてきましたが、とうとう始めることとなりました。協力隊事務所から余っていた筆を譲り受け、墨は水性インクで代用、練習も主に新聞を使うという、ないもの尽くしの授業です。
書道の授業風景学生は、道具の数に制限があるため1クラスにつき6〜7名、1週間1回、現在2クラスが学んでいます。開始前はどうなることかと不安だらけだったのですが、いざ蓋を開けてみたら、学生たちはみんな熱心で、上達のスピードも速く、私も教えるのが楽しくて仕方がありません。日本人らしいことがまったくできない私ですが、日本文化を伝えることに少しでも貢献できているとしたら嬉しいです。
また、5月前半には、野球隊員が活動するKutnoという町で、日本大使館職員とアメリカ大使館職員、そして全ポーランドの協力隊員を招いてのソフトボールの試合がありました。Kutnoには、ヨーロッパの少年野球の本部事務所が置かれており、日本人が見てもびっくりするような立派な芝の球場があります。ポーランドに限らず、ヨーロッパではサッカーの人気が高く、野球はまったくと言っていいほど知られていないのですが、Kutnoに限ってはそうでもないようです。試合はKutnoの野球チームも参加して和気藹々(わきあいあい)と進み、私も親善試合ということで少しだけ出場させてもらいました。日本ではなかなかできない貴重な経験でした。
と、このような感じで毎日元気に過ごしています。残り少なくなった隊員活動を、少しでも学生たちのために有意義なものにしたいと思います。配属地Torun(中世ドイツの街並みを残す美しい街。コペルニクス生誕の地でもある)