現地隊員レポート 「りる」第60号より
パラグアイ K.I.
平成22年度4次隊
村落開発普及員
『パラグアイ情報2』
前回はパラグアイに来て1年2か月過ぎた頃に原稿を書きました。
ただいま、1年8か月経っています。
紙面の都合で(?)私の違う時期の原稿が1度に掲載されることになる、とお聞きしましたので、前回以降の活動や出来事、私の感じたことなどを書きたいと思います。
[活動:観光開発]
この6か月間は、イベントが多い期間でした。特に、県内の2つの市でパラグアリ県庁あげてのエキスポが行われました。エキスポというのは、地域のお祭りのようなもので、工芸品、特産品を展示、販売するブース、飲食ブースなどが軒を並べ、メインのステージ上では、地元の子どもたちのダンスや演劇、ミュージシャンによるコンサートが行われたりするものです。
地元の子ども達によるパラグアイ・ダンスの披露昨年同様、準備会議から参加しました。やはり初年目と比べて、今から何をするか、どういう問題が起きやすいか等、想像がついたので気が楽でした。会議はだいたい段取りがいいとはいえず、なかなか始まらないうえ、すぐ脱線もすれば迷走もします。それが分かっていたので、事前にしたらいいと思うことを会議主催者に伝えておいたり、少し軌道修正したりできました。
地域の人たちが制作した工芸品の販売ブース先に手が打てるようになるのも2年目だからです。また、うまく進んでいない状況にいても「まあ、これがここのペースなんだろうなぁ」と(昨年よりは?)穏やかに、自分が他にできることを考えられるようになりました。
牛の品評会当日には、日本文化を紹介するブースも出しました。お辞儀、挨拶、食事を紹介し、書道、折紙、水風船の体験コーナーも作りました。どれも老若男女問わずとても人気で、休む暇もないくらい忙しかったです。
書道体験は大人気日本文化の魅力、奥深さを改めて知ることができました。特に嬉しかったのが、昨年も来てくれた子供が「今年も楽しみにしていた」とまた来てくれたことです。会議や準備は大変でも、1年ぶりの再会で彼らの成長も見れて楽しい時間になりました。
1年後の大きくなった彼らに再会また、2年に一度首都アスンシオンにて日系人主催で開かれる日本パラグアイ交流展にも香川県ブースを出す形で参加しました。パラグアイ香川県人会の皆さんと香川県の名所、名物、特産品を紹介しました。香川県の企業、関係者の皆さんからの支援が充実していたのもあって、とても活気のあるブースになり、にぎわいました。
昨年、水風船に喜んでくれた兄弟首都開催なだけあって、客層もパラグアリとは異なり、ここでは高価な香川県産品でも売ってほしい、という声も多数ありました。今回は展示紹介に限っていたのですが、どうにかこのような客層を対象に経済交流ができないものかと県人会の皆さんと考えています。
日本パラグアイ交流展2012 香川県ブースパラグアリの観光者向けの地図・パンフレット作りに取り組んでいますが、少し難航しています。パラグアリ県のシンボルであるセロ(岩山)に登れるように地図を作ろうとしても、お薦めし難いなんとも危ない道しかなかったり(全て自己責任でいいのかもしれませんが・・)、バスの発着所を記そうにも誰にたずねてもどうもテキトウであったり、発着時刻もなんとなくこの頃、といった感じで・・・。大雑把というのか鷹揚というのか・・・どうにも活字として記すのに悩ましい状況です。
[活動:Colka(コルカ)]
香川県の支援で開発されたコルメナ産100%ブドウジュース、トマトピューレの販売を開始しました。まずは、コルメナ市内の商店でピューレを販売。
トマトピューレの試食アンケート100%で保存料等無添加というコンセプトは地元の人たちにも好評です。ただ、ピューレはここでは日常よく使われるものであるだけに、既に競合商品が多く非常に安価に売られているので、新商品開発も検討しようとしています。難しいのは、ここの人たちの嗜好の幅がとても狭い傾向にあることです。変わったもの、新しいものには手を出したがりません。
ぶどうジュースの販売(日本パラグアイ交流展2012)野菜や果物も色々と売られていますが、毎日、同じ食材を使っていつもの調理法で同じような料理です。よく飽きないなあと思います。その多くが、糖分、塩分、油分が高く、体に悪いと分かっているけどやっぱり好きということで、毎日続いているように思えます。
この頑なさの中にいると、逆に、どうして日本人は新しいもの好きなのか、多少まずくても健康にいいとなれば口にできるのかと考えます。開発・加工する側のメンバーには、自分の嗜好、食わず嫌いの気質はどうにかさておき、新しいモノづくりに挑戦するように勧めているところです。
コルメナ市内の食堂でトマトピューレ販売開始100%ブドウジュースは、日パ交流展で加工していた全てを売りきりました。当日の40℃を超すような天候とカップ販売がちょうど上手く合致し、「美味しい」「これで砂糖なし?」と生の消費者の声を直接聞くこともできました。まだコルメナのメンバーに収入が得られる状況には至っておらず、彼らのやる気にも波があり、活動が苦しい時期ではありますが、このような声を励みにがんばってもらいたいと思います。
2013年1月には、香川県から専門家が来て最後の研修が行われます。今は、その内容が有意義なものになるように詰めているところです。この3ヶ年で香川県とコルメナ市とのやりとりも活発になりました。3ヶ年事業の締めくくりにふさわしい研修になると思います。
[活動:その他]
まだまだ現地・人を知る必要があると思うので、時間をみつけては色々なところに顔を出しています。近所にある養護学校では折紙や紙芝居をしています。ユニークでやんちゃな子が多いです。また、肥満の人が多いのでウオーキングを勧めています。毎夕一緒に歩く人も出てきました(言った手前、私もしっかり続くようになりよかったです)。
活動の中間報告会他には、ここでは何かを提案するとすぐ「買ってほしい」となりがちです。今、計画しているのは、ある工芸品作りをしている女性グループを対象に、新聞紙を活用して包装紙・袋を作る講習です。あるものを使つて、センス次第で素敵になることを提案したいと思っています。
[生活]
2013年5月頃まで、5年に1度の大統領、県知事、国会・県会議員選挙の時期となっています。日本と違ってトップが変われば末端職員まで変わるそうで、生活がかかっている人たちは、政治活動が主体になっています。私が関わっている人たちがちょうど選挙に出馬したり、後援活動を主にしたりする人たちで、何はさておき選挙活動です。パラグアリ県庁内も政治活動色が濃くなり、本来業務は止まりつつあるようにみえます。そして、トップが変われば、これまでやってきたプロジェクトも継続されなくなったりするそうです。支援してきたことも同様です。選挙の度にこれでいいのかと疑問に感じます。しかし、ここの実情がこれであるのであれば仕方がない。自分でコントロールできないものには気をとられず、できることをやろうと思います。
また、任地にいるアメリカや韓国のボランティアたちとも仲よくなりました。お互いの活動を協力しあったり、抱えている悩みや問題を共有したりしています。ボランティアという立場上、共通、共感するところも多く、物事のアプローチの仕方や考え方の違いもあり、おもしろい仲間です。
パラグアイに来て、異文化・異習慣を理解し、外部の人間がボランティアという立場で物事を進めていくことはとても難しいと実感しました。6か月前まではちょうどそのストレスがピークでした。今は、よくも悪くも「人や状況はそう簡単には変わらない。」と理解できるようになり、そのなかで、自分には何がどこまでできるか自分を試し、力を付ける機会ととらえるようにもなりました。
泣いても笑ってもあと4か月。私の去った後に少しでも残る活動になるようにまとめていくことも始めつつ、私自身もパラグアイの良さに少しでも多く出会い吸収できるようにしたいと思います。