現地隊員レポート 「りる」第59号より
パナマ A.Y.
平成22年度3次隊
村落開発普及員
『女性グループとの生計向上活動』
皆様、こんにちは。協力隊生活も残り約半年となり、少しずつ帰国後のことを考えるようにもなりました。私は3次隊なので、帰国するのは来年の1月。美味しい日本食と温かいお風呂が今から楽しみです。その前に、今パナマにいるこの時間を大切に、残りの期間を思いっきり楽しみ、精一杯活動したいと思っています。
さて、「りる」1月号に書きました女性グループとの手工芸品作り、販売による生計向上活動ですが、少しずつ進めることができています。今回は最も活発に活動しているグループの活動を紹介します。
「女性グループの紹介」
村の中心からバスで15分、そこから徒歩で約1時間程山道を歩いたコミュニティにあります。このコミュニティは、総世帯数65戸、333名(男性172名、女性161名)住んでおり、農牧畜を生業としている、村の中では大きなコミュニティの1つです。グループの名前は「La Amistad」=友情という意味です。もともと仲が良かったお母さんたち同士ということもあり、メンバー皆意見が一致し決まりました。12人の女性(10代〜50代)で構成され、毎週集まって活動しています。グループの役員会も決め、リーダー、副リーダー、会計係がいます。「手工芸品作り」
大きく2つのカテゴリーの手工芸品を作っています。1つは、自然の素材を活用した手工芸品です。ココナッツの殻や木の幹、種を加工したり、鳥の羽やコーヒー豆、その他の豆類を使ったりと、身の回りにある素材を活用してアクセサリーを作っています。メンバーの中には、木の葉から帽子を編める人もいるので、小さな帽子の形をしたピアスなども作っています。これらはメンバーと意見交換をして何が作れるか試してみて、売れそうなものに関しては各自で練習をしてきました。
「ココナッツピアス」もう1つは、自然の素材を使わないアクセサリーや小物作りです。パナマの女性はビーズアクセサリーがとても好きです。メンバーも皆もちろんビーズアクセサリーが好きで、ネックレス、指輪、ブレスレット、ピアスを上手に作ります。また、無地のタオルの淵に鈎針できれいな模様をつけたり、カンバと呼ばれるプラスチックの素材を使った小さなかばん、お財布、小物入れなども作ります。これらは、今まで他の協力隊や政府系機関が主催したセミナーに参加してメンバーがもともと知っていたことです。それを知って是非商品にしてみようと提案し、商品作りを始めました。
「鳥の羽のピアス」どちらのタイプの手工芸にしろ、お母さんたちは物作りが大好きです。新作を持ってきては皆で品評会が始まります。メンバー同士仲もよく、誰もアイディア意見を否定しないので、いつも意見は活発で、私が話す隙さえないぐらいです。
「話し合いの様子」「販売活動」
現在までは1月、3月、5月に開催された村や近隣の地域のお祭りに参加して販売してきました。売れ残った商品に関しては、自主的にメンバーが友人や親戚などに販売したり、小学校のお祭り、教会のミサなどで販売しています。販売して資金を稼ごうとする意識がとても強く、私にも「これ、あゆこの分、友達に売ってきてね」と商品を渡してくれるほどです。現在このグループは、約400ドルの資金を稼ぐことができました。(ちなみにコミュニティの平均月収は約80ドルです)もちろん初めはJICAにお願いをして業務費から材料費の補助をしましたが、今ではグループの資金だけでまかなっています。正直半年でこれだけの資金を稼ぐことができると思っていなかったので、びっくりしています。メンバーもそもそも販売経験すらないお母さんたちです。ですが、お母さんたちは本当に頼もしく、「初めはどうしたらいいか分からなかったけど、どうやってお客さんに接したらいいか分かってきた!」と言ってくれます。そういう前向きな意見を聞くことができ、私も協力隊冥利に尽きます。
「お祭りで販売している様子」「環境庁との連携」
なかなか配属先の環境庁と連携した活動ができていませんでしたが、最近になり配属先の協力が以前に増して得られるようになってきました。例えば、先日私が配属している環境庁環境持続センターのセンター長に、自然の素材を活用した手工芸品やグループ組織強化に関する講習会を開いていただきました。今後も、マーケティングに関する講習会や首都にある民芸品市場への視察なども予定しています。ありがたいことに他省庁や市役所にも興味を持ってもらうことができ、様々な機関から支援を受けることができそうです。「グループの今後」
私が帰国してからも継続して活動する、と言ってくれているグループメンバーですが、やはり心配なのが、販売先です。今はお祭りで販売していますが、これは環境庁のブースを間借りして販売しているので、ブース料が必要ありません。しかし、私が帰国し、そして、政権交代などで配属先の職員が替わったら、継続して女性グループを支援し続けてくれるとは限りません。帰国までの残りの期間で町にある手工芸品店や雑貨屋などを周り、商品を置いてくれるところをメンバーたちと一緒に探す予定でいます。やはり、市場ありきで商品を作らないと続かないと思っています。これが今一番の課題です。
「講習会後、皆で一緒に」
また、このグループの資金ですが、メンバーたちと話し合い、継続して手工芸品作りをするための資金を除いた額を年末にみんなで分け合うことになりました、グループの作業所を作る、食器棚作りをする、などなど様々な意見もありましたが、やはりそれぞれの家庭で色んなニーズがあります。子どもための机を買いたい、ベットマットを新調したいなど、各家庭で、各家庭ごとにより快適な生活ができるように、資金を活用してもらいたいと思います。正直村の男性であればお酒や博打にお金を使ってしまうのではないかと心配ですが(全ての男性がそうではないですが、概して村の男性は村の酒場でお酒を飲み、稼ぎを使ってしまうことがあると聞いています。)お母さんたちなので、家族や子どもの教育のためにお金を使ってくれると信じています。「おわりに」
残り6ヶ月になり、女性グループたちとの活動について、やりたいこと、やれること、やれないこと、が見えてきてなんだか落ち着かない時期もありました。訪問しても女性たちが集まっていないこともあり、予定通りにいかないこともやっぱりありますし、配属先の意向で1グループの訪問は月2回と決められていて、なかなかやりたいことが進まず悲しいときもあります。しかし、悩んでいる時間さえももったいなく、今はグループの女性たちに少しでも喜んでもらえるように精一杯活動していきたいと思います。