現地隊員レポート             「りる」第57号より 

                                                    パナマ    A.Y.
                                                             平成22年度3次隊
                                         村落開発普及員
    

 

『小さなプロジエクト開始』

時が経つのはとても早く、パナマに来て11ヶ月が経ちます。パナマは熱帯性気候で、一年中暑く、雨季(5月〜12月)と乾季(1月〜4月)しかないため、一年の変化を日本ほど感じません。日本は四季がはっきりしていて、カレンダーを見なくとも、肌やにおいで季節、そして時の流れを感じられるのは、とても素敵なことで、貴重なことなんだと感じながら、日々を過ごしています。

 11月はパナマにとって大事な月であり、お祭りの月でした。なぜなら、独立記念日が2回(1821年11月28日にスペインから、19Q3年11月3日にコロンビアから独立)あるからです。記念日を祝うために、各地域で行進が行われ、民族衣装に着飾った子どもたちや音楽隊、バトン隊が中心となり、町の中心地を練り歩きます。

  独立記念日 村の行進の様子

私が住んでいるエル・カカオ村でも行進が行われました。エル・カカオ村はとても小さな村で、山の中にあるため、平地部分を10分ほど歩くだけの小さな行進ですが、村各地から人々が集まり、盛大に祝われました。パナマの国旗を掲げ、独立を祝い、今後の発展を祈ります。パナマのアイデンティティーを認識する大事な1ヶ月です。

また、お祭り好きのパナマ人にとっては、楽しい1ヶ月で、街中がお祭りモード一色でした。

  独立記念日 民族衣装を着た女性と

 5月から始めた栄養講習会をきっかけに4つのコミュニティで女性グループを組織化しました。各グループは5名〜20名のお母さんたちで構成されています。要請内容が生活改善ということもあるため、栄養だけではなく、村にあるフルーツでお菓子を作ったり、アクセサリー、シュシュを作っています。

また、家にある資源ゴミ(空き缶や牛乳パック)から鉛筆立てや小物入れを作るなど、環境庁配属であるため、リサイクルを意識した活動も少しずつ始めたところです。

 恥ずかしながら、生活改善ということを考えながら活動してきたものの、具体的にどのような状態を目指すのか漠然としか持っていませんでした。残り期間1年と少ししかない、と焦る気持ちも出てきましたし、具体的な目標を定め、グループメンバーにしっかりと活動方針を明確に伝え共有しようと思い、目標を改めて定めました。

 設定した目標は、「自然環境から採れる種や実、木などを材料にアクセサリーや小物を作り、販売し、その資金をもとに生活改善活動をする」ということです。

  空きツナ缶を再利用した針山作り

やはり生活改善活動をしていく上での一番の問題は、改善活動のための資金をどこから得るか、ということでした。もちろん、お金を必要としない活動もありますが、お母さんたちにアンケートを取ったり、話をしていく中で、食器棚を作りたい、学校に持っていく文房具をそろえたい、村の教会の壁を直したい、などなど、各家庭やコミュニティの中で改善したいことがたくさん出てきました。何をするにもお金がかかります。

配属先、またお母さんたちと相談し、上記のような手工芸品を作り販売し、集めた資金から活動していくことにしました。

  アクセサリー作り

 また、この目標を設定したもう1つの理由としては、私が帰国してからもお母さんたちが引き続き協力して生活改善活動をしていってほしいと思ったからです。

どうしても誰かが助けてくれることを待っている村の人たち。もらうことに慣れてしまっています。グループ活動をしたいが、誰も支援してくれないから継続できない、という声も聞きます。

また、配属先の環境庁は、環境に配慮した物づくりや手工芸品を作るグループを支援しています。従って、私が帰国してからも引き続き配属先が何らかの支援をしてくれる可能性が高いのです。今までなかなか環境庁の仕事とリンクした生活改善活動を探すことができませんでしたが、現在はうまくコラボレートしながら活動していくことができそうです。
  とはいえ、やっと1つの女性グループが本格的に動き出したところです。このグループと一緒に1月にある村の大きなお祭りで手工芸品やお菓子などを売ることに決めました。先日もちょうどココナッツで作ったピアス作りをしてきたところです。4つのグループの中でも一番前向きでやる気いっぱいのお母さんたち。

お母さんたちからたくさん手工芸品作りのアイディアが出てきました。来月12月の活動日(週1回木曜日)は、様々な手工芸品作りで予定がいっぱいに詰まっています。さらに、お母さんたちと相談し、お祭りで販売するお菓子作りに必要な材料は、ビーズで作ったクリスマスツリーやリーフ、十字架などを販売することで資金を貯め、そこから買うことにしました。

 また、環境教育隊員と協力することにもなり、活動の幅も広がりそうです。女性グループと一緒に、廃油からろうそく、石鹸を作ったり、アクリルたわしを作っていくことになっています。しかし、まだまだ考えなければいけないことはたくさんあります。お金の管理、どのような手工芸品が売れるのか、いくらで売るのか、安定した販路の開拓、などです。

 お母さんたちと残りの1年で販売ができる仕組みを作りあげ、そして、お母さんたちの希望でもある食器棚作りや教会の壁修復など、できることから実現していきたいと思います。