H隊員からの手紙         「りる」第6号より

     ネパール         Y.H.

                     平成3年1次隊

                     理数科教師

 

拝啓
 うっとおしい梅雨の季節がつづきます。いかがお過ごしでしょうか。Nさんはあいかわらず精力的な活動をつづけていることと思います。私も本年度になりかなり多忙になりまして、帰宅が夜の十時を過ぎる日が続いています。

 さて、お借りしていた本をお返しいたします。貴重なNさんの分身をあずけていただき、ありがとうございました。私は、いつも読んでいました。この身から離さず、少しずつではありますが、少しでも行間と、Nさんの意を汲もうと本を読ませてもらいました。

 私は、Iさんという、度量の大きく、やさしい人のことよりも、どこさでも純粋で、しかも無念の死をとげた同年代の青年たちのことが大きく心にのしかかってくるのを覚えました。同じ海外に行<のにしても、恵まれた、自分の状況を思わないではいられませんでした。

 

協力隊は現代の若い人にとってみれば、チャレンジしたり望んだりするものであると思います。戦争にも同様のものがないとは言えませんが、本質的に違うものだと思います。この本を読み、今まで知らなかった新たなことを学びました。私にとっては新しい、Nさんにとっては古くからの事実というわけです。Nさんが協力隊員の活動を通して、戦争を語るのと、私がネパールを通して現代日本を語るのを重ねてしまいました。

 

私は、協力隊員は昔の日本の豊かさを発展途上国を通して見ていることと思います。今のように発展するまでの途中で落としてきてしまったものを気付き、感じていると思います。私は文明の利器のないネパールの山奥に、うらやましいほど豊かな生活があるのを見てきました。だから、発展する前の日本も豊かさでは負けないものだったと思います。それを知っているのは、経験者です。本当の豊かさを子供達に伝えていかねばならないのは大人の責任であると思います。私も、その一人だと思っています。

 

そう思うと、Nさんが、平和という豊かさを伝えている、語り部のような気がするのでした。Nさんが放っているテレパシーを少しでも、共感できるようにしたいものです。
重ね重ね、ありがとうございました。

 日ごとに暑さの増す頃、お身体を大切にしてください。

敬具

 



子供は水汲みへ、おばあさんは代わって犬の世話


薪を売った代金でノートを買い誇らしげに見せる少年


水汲みの兄と妹



校舎をバックに1〜3年生とH隊員


6年生の理科の授業に取り組むH隊員