帰国隊員報告 「りる」第44号より
モルディブ T.T.
平成16年度3次隊
写真
『モルディブについて』
モルディブ共和国はインド洋に浮かぶ約1190の群島国家です。住民島が約200島、リゾート島が約90島、そして無人島が約900島です。南北約823キロにわたり島々が連なっていて一番南の島は赤道直下にあります。海抜が1〜3メートルという島々ばかりで、2004年12月、スマトラ沖地震の際に起こった大津波で多くの島が被害を受けました。地球温暖化で海面上昇が起こると水没してしまう恐れのある国です。人口は約30万人。気候は熱帯気候。宗教はイスラム教です。もともとは漁業が盛んな国ですが、現在は世界有数のリゾート地として有名です。
報告するT隊員OB
『YSDC(青少年スポーツ開発センター)について』
「スポーツ訓練及び技術訓練プログラムを通じ、健全な青少年の育成をはかる」これが私の配属先であるYSDCの目的です。訓練コースはYouth(技術)部門とSports部門からなる職業訓練学校です。技術部門には美容、服飾などのコースもあります。終了者には認定書が授与され、プロとして仕事を始める者も多いです。私の担当した写真コースからプロカメラマンとして独立してスタジオを開いた生徒さんもいます。
『活動について』
赴任前、私が二年間生活した首都島マーレの情報を得ることが難しく、カメラの機材やフィルムは流通していてもデジタルカメラの市場など想像もしていませんでした。生活し始めて驚いたのは、マーレの発展そして写真業界の進歩でした。
南北約2キロ東西3キロという狭い島に約10万4000人の人々が住み、さまざまな近代的なもので溢れていました。カメラマンはデジタル一眼レフカメラを使い、PCで画像処理もして仕事をしていました。私の学校の教室にはスタジオ撮影用ストロボも立派な暗室もありましたが、逆に不十分だと感じるほどマーレの民間スタジオは進んでいました。しかし、この発展はマーレだけに限られる話で、その他多くの地方島は昔ながらの生活をする人々が多いのです。
私も赴任当初からデジタルカメラ導入の重要性を上司に説いてきましたが、承認されたのは帰国前で、リストアップした機材を使うことはできませんでしたが、後任の写真隊員の方に引き継ぐことができたのではと思います。
写真コースは合計三期関わることができました。1コース期間約半年。生徒数10〜15人。二期目は午前と午後の2コース制を試行してみるなど工夫もしてみました。合計39名の生徒さんと関わることができました。授業は写真理論を学んでから課題を実際に撮影してもらうことで理解してもらう形にしました。課題を制作してもらうのに全部で5台のカメラをシェアしてもらいながら進めましたが、なかなかシェアがうまくいかずに課題制作が進まなかったり、せっかく撮影したフィルムを現像する際に失敗してしまい再撮影をしてもらわなくてはいけなくなったりなど授業をやってみないとわからない問題ばかりでしたが、ひとつひとつのコースを進める度に改善して進めました。
どうすれば写真について理解してくれるかという作業は、自分の中の知識をいかにシンプルなものに置き換えていくかという作業でもありました。教えることで生徒さんから学んだことが多かったと思います。
写真コースの合間には地方島で活動する隊員たちを訪ねて撮影をしてきました。マーレに居るだけでは経験できないことばかりで、写真を撮ることで多くの人々と知り合うことができました。
『活動を終えて』
二年間という活動期間は想像していたよりも短く、自分が与えるよりもモルディブの人々そして生徒さんから学ぶことの方が、ずっと多かったように思います。
自分の得た貴重な経験をこれからも大切にして、そして日本の皆さんにモルディブという国のことを知ってもらえるように写真も撮り続けていきたいと思います。
最後になりましたが、育てる会の皆様から活動中ご支援をいただき、ありがとうございました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。