モルディブだより(U)      「りる」第22号より

     モルディブ      Y.K.

                     平成10年度1次隊

                     体育

 

スポーツ王国・クルドゥフシ

1、ドッヂボールクラスマッチ

 9月5日から3学期がスタートし、体育の授業では、いくつか新しい種目を教え始めた。そのうちの1つがドッヂボール。球技といえばフットボールにしか興味を持たない子供達。この国では、フットボールがナショナルスポーツなのである。

いつも他のスポーツに興味を持たせるまでが一苦労。そこで、動機づけにしようと思い、ドッヂボールクラスマッチを企画した。生徒はもちろん教師達も「ドッヂボールって何?クラスマッチってどうするの?」という状況からのスタート。

まずは、教師達を集め、他の種目も含めた研修会。そして授業スタート。子供達もなんとかドッヂボールを理解してきた頃、10月15・16日の休日にクラスマッチをするから練習しておくように、と告知した。

そのとたん、島にあるフットボールグラウンドに午前の部の生徒は午後に、午後の部の生徒は早朝に自ら集まり、大練習会が始まった。今回、対象にしたのは、3年から7年生(計56クラス・約1700人)で、生徒が多すぎたため、いくつか問題もあり、各クラス1チームに制限せざるを得ず。

そして、クラスが多いからトーナメントにしようというと、ほとんどの教師達は「トーナメントって何?」という状態。いつもスポーツ大会というと地区対抗のようなもので、島を4つの地区に分け、行っていたため、わずか4チームなのでトーナメントにする必要はなかったのだ。

地区対抗だといつも出場する子供が限られているので、少しでも多くの子供に楽しんでもらおうと思い、私はあえてクラス対抗にした。多くの子供が出場するせいで数々の問題も生じた。6年・7年生のPTAや他の教科の数人の教師達からもついに苦情が出る始末。

「体育を一生懸命しすぎて、体育の次の授業から疲れて勉強しない」、「制服が乱れる(体育は制服のままで行っている)」、「学校が終わると(6・7年生は午前の部)テストが近いのに勉強も宿題もせず練習に行ってしまう」、「突き指した。」等々。

 当日にむけての準備、クレーム対応に追われる日々が続き大変であったが、なんとか当日をむかえ、大会も無事終了。日本で考えれば、ただのクラスマッチが、ここではお祭り騒ぎだった。大会終了後、各学年の優勝チームがトラックの荷台に乗り、島内を走りまわっていた。「○クラス、チャンピオン。」と叫びながら。

 ただのドッヂボールクラスマッチでこんなに盛り上がるとは思ってもみなかったことだ。来年もまた、PTAに負けずに何かイベントを企画するつもりである。

2、大人達(特に教師達)もスポーツにあけくれる日々。

 この島はスポーツ王国かと思う程、4〜5ヵ月程前から祝日となると大人達(特にAEC→アトール・エドゥケイション・センターの教師達)がスポーツ大会を行うようになった。初めにやったのはバレーボールだった。

  バレーボール大会

 そして、今回の祝日・11月3日(VICTORY DAY)は、私達AECの女性教師達対他の住民チームでラグビー大会(?)。ラグビーの試合をするから来い、と言われ、夕方にフットボールのグラウンドに行くと「ラグビー?これが?」というものだった。

本当のラグビーと違い、ハンドボールのルールを少し変えたようなものだった。ドリブルせずボールを持って走る、人をつかんでもOKというような。そして、ゴールは棒を2本だて、そこに縄をわたして作った囲いの内側に投げ入れてシュートをうつというもの。20分・ハーフタイム・20分となかなかハードなものだった。

この日、「女は怖い。」とつくづく感じた。私はあざだらけになり、着ていたTシャツも何度も引っぱられて伸びてしまった。

 11月9日(MARTY’S DAY)は早朝6:45から、AEC教師達のラグビー大会。男女2チームずつ作り行った。今回は平和に試合ができ、あざもできず、Tシャツも無事だった。

 11月11日(REPUBLIC DAY)はこれまた早朝6:30からAECの教師達でミニフットボール大会。この大会は教師達のあいだで特に力が入っており、自分達でユニフォームを作ったり、この日のために10月末頃から毎日夜8:30〜10:00まで練習会もしていた。

男女3チーム(1チーム4人)ずつ作り総あたり戦なのだが予選をし、13日(土曜日なので休日)の夕方には決勝。私のチームは予選で2試合とも勝ち、そして決勝へ。本来ならその時点で優勝決定なのだが。

 そうしてむかえた13日の夕方。昔から競技スポーツをしてきた私は、ついつい少し本気になってしまった。運良く私のシュートがゴールし、そのまま逃げ切り私のチームは優勝。そして最優秀選手賞までいただいた。それはうれしいのだが、少し頑張りすぎたようで、右脚太ももが肉離れをおこしてしまった。我ながら情けない。

 こうして、島での祝日をスポーツにあけくれ過ごした。

  体育授業

 島内、AECの教師達のあいだでスポーツに目覚めたのは大変うれしいが、どの種目にでも毎回呼ばれる私は少し疲れてしまう。私は体育専門だから何でもできると思われているようだ。

 この島の人達は元気だな、とつくづく感じる。全ての人ではないけれど、ほとんどの人達は、祝日・休日・暇な時間はのんびり休むということをしない。ボーッとのんびりするのはたいくつで、たいくつを嫌う人達だから、休養をとるより、ピクニックヘ他の島に遊びに行ったり、スポーツしたりして楽しみたいようだ。

私は本音を言うと普段、早朝から夕方まで忙しいので、休みの日くらいはのんびりしたいのだが・・・。島の人達を見習わなければいけないなと思う。

 娯楽施設など全くない島で、島の人達はうまく余暇を過ごす方法を見つけたようで、体育・スポーツを広めるためにこの島に来た私としてはうれしいことである。

3、さいごに

 以前の予定では、来年は他の島へ行くはずだったのだが、訳あって、来年もこの島に戻って来ることになった。他の島でも活動してみたかったな、と思う反面、この島に友人達もたくさんでき、「住めば都」で、情もうつっているので、またこの島でよかったな、と少し「ホッ」としている。

 来年もまた他のスポーツを知ってもらい、島の子供達、大人達が楽しめるよう活動していけたらな、と思う。

スポーツ王国・クルドゥフシより。