モロッコ「日本展」開催記 「りる」第5号より
モロッコ K.M.
平成3年3次隊
工作機械
昨年十二月二〜六日の五日間、私の赴任地アガディールにおいて、日本展を行った。昨今、モロッコでは一昨年のテトワン日本展を皮切りに今回アガディールまで、一年間で実に五日という、協力隊員による日本展ラッシュであった。その内容も、企画した隊員の意向はもちろんのこと、開催地の土地柄、関連したモロッコ側の組織の意向などを反映して、それぞれに特色ある企画を展開してきた。
私たちの場合も、アガディールというモロッコでも特殊な土地柄が本展の方向づけに大きく作用したように思う。詳述すると、ここアガディールは大西洋遠洋漁業の基地として、またヨーロッパからのリゾート地として、常に多くの外国人居住者を抱えている。特に二千人とも言われる韓国人、中国人などアジア系漁業関係従事者の多さは、モロッコ国内でも出色のものがある。この中で同じアジア系人種ながら十人にも満たない日本人、また日本文化に対する在アガディールモロッコ人の認識は非常に希薄であると言わざるを得ない。本展はこの特徴に対応するものでなければならなかった。
そこで今回、いわば『日本文化入門』的な企画を行ってみた。すなわち、できるだけ多くのモロッコ人に、易しく総合的に日本文化を知ってもらうという意図に基づくものである。広く、親しみやすくをモットーに山車行進、綱引きをはじめ、日本食試食、茶会、日本の玩具の体験コーナーなど、体験できる企画を多くした。また、彼等自身で興味のあるものを選択できるように、企画数も以前の日本展より増した。その結果、五日間でのべ三千人近くの見学者が訪れ、その対応に苦慮したほどである。
山車行進・ラストスパート
また、忘れてはならないのが、本展開催中の、下関にある水産大学校の練習船”耕洋丸”のアガディール寄港であろう。今回は、開催期間を敢えてこの行事にぶつけてみた。当初、船への練絡の困難さから、コミュニケーション不足による互いの行事の衝突を懸念したものである。しかし、乾船長以下、スタッフの方々の柔軟な対応、加えて学生諸君の積極的な参加により、私たちの期待をはるかに上回る活躍をしていただいた。また私たち自身、世界一周という、日本の水産系大学でも特筆すべき航海実習の思い出の一ページに活躍の場を演出したことに大きな喜びを感じるものである。
モロッコ日本展開会式で挨拶するM隊員
以上、本業外ではあるが、多くのモロッコ人と交流を深めることができた。そして、アガディール日本展の実施のため、ご協力いただいた多くのモロッコ人、また、日本大使館、JICAモロッコ事務所の方々、協力隊の仲間に改めて『ありがとう!』と言いたい。