現地隊員レポート             「りる」第79号より 

                                                    モンゴル   上原 歩
                                                             平成30年度(2018)3次隊
                                         音楽
   

モンゴルに来て1年

 インバイノー!(こんにちは。)2018年度3次隊、モンゴル派遣の上原です。モンゴルに来て1年が過ぎ、任期も折り返し地点を迎えました。日本では暖冬だとニュースで見ましたが、モンゴルも同じく暖冬です。

とはいってもマイナス30℃以下になる日もよくあります。1日中氷点下なので、雪が溶けず道路は凍結しています。雪が滅多に降らない暖かい香川県で生活していた私は、凍結した道路をどう歩いていいかわからず、よく転んでいました。

 さて、今回のレポートでは、旧正月についてお伝えしたかったのですが、モンゴルの今年の旧正月は2月末です。ですので今回はモンゴル人について私が感じたことと、最近の活動についてお届けしたいと思います。
  氷のオブジェ。もちろん溶けません。

私から見たモンゴル人

モンゴルに来て驚くことはよくあるのですが、その中でもモンゴル人の習慣や価値観に驚かされることが1番多いです。以下に書くことは、あくまで私個人が感じたことで、他の日本人や外国人が全く同じように感じるわけではないと思いますが、一個人が感じたこととしてお読みいただければと思います。

・自信家が多い
どちらかというと消極的な人が多い日本人と比較すると、モンゴル人は目立ちたがりで積極性がある人が多い印象です。例えば、カラオケに行けば常に誰かが歌い(マイクの争奪戦が行われることもしばしば)、授業中や職員会議では皆一斉に喋り出し、パーティーでは自分が1番といわんばかりの派手な衣装ぞろい・・・といった具合です。
  職場のパーティー

 ところで、「自信がある」というのは「自己肯定感が高い」とも言い換えることができると思います。自己肯定感とは、「自分自身の在り方や存在価値を自分自身で認め、それを受け入れられる感情」です。

日本人は自己肯定感が低い人が多いとよく言われますが、その日本で生活してきた私にとっては、モンゴル人の自己肯定感の高さは刺激的でした。正直最初は、パワフルで自信満々に見えるモンゴル人に少し疲れてしまい、彼らと関わるのに消極的になっていた時期もありました。

 私の場合、これといったきっかけがあったわけではありませんが、活動を一緒に行っている音楽の先生と授業についての意見交換をしているうちに徐々に慣れ、今ではモンゴル人に私自身の自己肯定感を高めてもらっているとさえ感じます。

1つ例をあげると、日本にいた頃の私は、公私ともに意見を言うのがあまり得意ではなく、特に反対意見を持っていても発言する勇気が無く、周囲に流されていました。しかしモンゴルに来て、自分の意見を持ちそれをしっかりと発言するモンゴル人に囲まれて生活しているうちに、私も物怖じせずに自分の意見を発言できるようになりました。

・ありがとうを言わない!?
モンゴルには「ありがとう。」と直接口に出して言う習慣があまりありません。これについては、いくらモンゴルと日本の価値観が違うとはいえ、私がその真相を知るまでは、正直あまり気持ちの良いものではありませんでした。

 ある日、職員室で他教科の先生方と談笑している時に、「あなたはすぐありがとうと言うよね。とても変に感じる!」と言われたことがありました。誰かに何かをしてもらったら些細なことでもありがとうと言うのは当たり前だと思っていた私は、何と返したら良いか迷い、逆に質問してみました。

「ずっと気になっていたのだけど、モンゴル人はありがとうとあまり言わないですよね。なぜですか?」と。すると次のような答えが返ってきたのです。「物の貸し借りやお菓子をシェアするくらいのことは、当たり前のことだからありがとうとわざわざ言わないだけ。
ありがとうと言うのはもっと大きなやり取りがあった時だけね。」と教えてくれました。

 私が数ヶ月モヤモヤしていたものが、これを聞き一気に晴れました。また、今まで知らなかった価値観を知り、舌を巻きました。そしてこれ以降、私の中で「ありがとうと言ってくれてもいいのになあ・・・。」と思うこともなくなりました。

最近の活動

皆様がこの記事をご覧になっている頃はどうなっているかわかりませんが、私がこの記事を書いている今(2月上旬)は、コロナウイルスによる新型肺炎が流行し、事態は日々深刻化しています。

これを受け、モンゴル政府は新型肺炎の流行拡大を懸念し、なんと1月末から3月頭まで学校の臨時休校を決定しました。新学期が始まり1週間しか経っていない時の出来事でした。何の前触れもない状況での突然の発表だったので、学校側も混乱している様子でした。

ちなみにこの1ヶ月間の休校による授業進度の遅れは、テレビで授業内容を放送したり、土曜日に補習を行ったりすることで補填をするそうです。

 話が逸れましたが、最近の活動をご紹介したいと思います。私は主に授業で、同僚の音楽の先生と一緒に音楽技術面でのサポート(ピアノ伴奏やリコーダーの模範演奏)を行っています。
 リコーダーの授業

私の配属先では、どの学年の子供たちも大きな声でのびのびと歌ってくれます。上手下手に関わらず、みんな歌うことが好きなのだということが伝わってきます。「もう1回歌いたい!」とせがまれ、授業時間の半分近くずっと歌いっぱなしということもありました。

より良い声になってもらいたいと思い、発声練習の楽譜を作りました。今、発声練習は私が1人で行っていますが、帰国するまでに同僚の先生がこの楽譜を元に発声練習を指導できるように、少しずつ技術移転を行っていきたいと考えています。

 ところでモンゴルには「起立、礼、着席」という授業の号令がありません。チャイムはあるのですが、教師も子供もチャイムに対する意識はそこまで高くないようです。授業が始まった時、子供たちの気持ちが授業へ向かうように、号令に代わる何かを作りたいと思い「はじまりの歌」を作詞作曲しました。
  日本とは違い音楽の授業でダンスもします。

この歌を歌ってから発声練習をするという流れを決め、毎時間取り組みました。最初は戸惑いの様子も見られましたが、今ではこの流れのおかげで落ち着いて授業を始めることができるようになりました。

 帰国までの折り返し地点を迎え、夏休みや冬休みを考慮すると子供たちと関わるのはあと半年少しです。帰国するという現実が近づいてきて焦る気持ちもありますが、焦らず、慌てず、諦めず、コツコツと活動していきたいです。