現地隊員レポート             「りる」第77号より 

                                                    モンゴル   上原 歩
                                                             平成30年度(2018)3次隊
                                         音楽
   

『モンゴルに半年住んで発見したこと』

1.モンゴルって?
サインバイノー!(こんにちは!)2018年度3次隊、モンゴル派遣の上原歩です。私は2019年1月下旬の極寒の中、モンゴルに来ました。来た当初は、マイナス35℃前後の日もあり、手足の感覚を失いそうになるくらいの寒さでした。そんな厳しい寒さも月日の流れと共に和らぎ、6月中旬頃から夏を感じられるようになりました。

日本のムシムシとした暑さとは違い、カラッとしていて過ごしやすい夏です。しかしそれもつかの間、7月下旬にはコスモスが咲いているのを見かけ、秋の訪れを感じました。先日、テレビで日本のチャンネルを付けると、「梅雨明け」「熱中症に注意!」といったニュースが流れていました。モンゴルではもう秋の気配すら感じているのに、日本はこれから夏か、と想像すると、同じアジアでもこの季節・気候の違いに驚くばかりです。

 さて、みなさんは「モンゴル」と聞くと何が思い浮かびますか。砂漠?お相撲?遊牧民?こんなところでしょうか。私もモンゴルに来る前までは、このようなイメージしかありませんでした。しかし、半年間モンゴルに住んでみると発見がたくさんありましたので、ご紹介していきたいと思います。

2.大都会!ウランバートル
青年海外協力隊は派遣後約1ヶ月間、首都に滞在し、各種ブリーフィングを受けたり、語学学校に通ったりしながら、配属先での活動に向けて準備を行います。高松で育った私にとって、モンゴルの首都、ウランバートルはあまりに都会でした。

 高層ビルに電光掲示板、日本でも馴染みのある外資系ファストフード店や高級チョコレート店。100円ショップや和食レストラン、日本の調味料を扱う市場もあり、生活を送るには困りません。市内を走る6・7割の車はプリウスではないかというくらいプリウスが多く走っていて、日本を思い出すような、少し違和感のような、不思議な感覚になったこともありました。

また、町を一望できる展望スポットもあり、私も何度か観光に行きました。インターネットの通信速度も速いです。強いて言うなら、内陸国なので海鮮があまり売られておらず、どうしても食べたくなった時は高級お寿司屋等へ行くしかありません。

 いくら首都とはいえ、ここまで発展しているとは思っていませんでした。便利なウランバートルですが、その一方でいくつか課題も知ることができました。

ウランバートルを一望

・大気汚染
冬のウランバートルの大気汚染は世界最悪レベルです。それに伴い、呼吸器系の疾患が急増しており、ユニセフの発表によると今では肺炎が5歳未満児の死亡原因の第2位になっているそうです。特に風が無い日は空気の流れが悪いためか、町全体がくすんだように見え、黄色っぽくなっていました。うっかりマスクをせずに外出すると、空気の異臭を感じたり、咳が出たりしていました。

・交通渋滞
モンゴルの人口は約300万人。そのうち半数の150万人が首都に住んでいます。ウランバートルは大きな都市なのですが、電車や地下鉄がないので、当然渋滞が発生します。朝や夕方の通勤・帰宅ラッシュの時だけでなく、1日中渋滞していることもしばしば。バスでたった数キロ移動するのに1時間以上かかったこともありました。

3.ゲル訪問
モンゴル語で「ゲル」とは家の意味ですが、このタイトルのゲルは、遊牧民の移動式住居の意味で使っています。

 冬に犬ぞりと乗馬をするため、遊牧民のゲルに遊びに行かせていただきました。ゲルではモンゴル人の優しさとおもてなしの精神に感動しました。作り立ての温かい伝統料理でもてなしてくれたのですが、新鮮なお肉で調理された伝統料理の美味しさは今も忘れられません。「これも食べて。」「お茶もっと飲む?」と親切に気遣ってくれ、初対面にも関わらず、すぐに打ち解けることができました。

 私は乗馬も犬ぞりも初めてだったので少し緊張していたのですが、とても楽しかったです。馬を操縦するのは難しかったですが、慣れてくると、手綱を通じて馬とコミュニケーションが取れるようになりました。

犬ぞりでは、凍った川を歩くのも初めてだったので興奮しました。その凍った川をシベリアンハスキーの引くそりに乗って爽快に走り抜けるのです。犬達はそりに乗った私たちのことを気にかけることなく走っていくので、少しヒヤッとする場面もありましたが、あの颯爽と走り抜ける快感は、何度でも味わいたいと思えるもので、極寒の大自然の中でしか味わえない経験をすることができました。

犬ぞり中!

4.いよいよ任地へ
一ヶ月間の首都生活を終え、同期隊員と別れを告げ、いよいよ任地に向けて出発です。語学力や外国人として生活することに多少の不安はありましたが、それよりも期待のほうが大きかったです。

 私の任地は、都心から東へ120kmほど行ったところにあるバガノールという小さな町です。人口は4万人弱。現在はここで配属先の学校の音楽教員と一緒に1年生〜9年生(小1〜中3)までの音楽の授業に入って、ピアノ伴奏をしたりリコーダー指導をしたりしています。協力隊としての活動を書きたいところなのですが、赴任してわずか3ヶ月で夏休みに入ったこともあり、まだ十分な活動らしい活動は出来ていないので、今回は生活について書きたいと思います。

 モンゴルは大陸性気候なので、昼夜の気温差が激しいのが特徴です。昼夜の気温差が15℃くらいあった日もあります。また、5月なのに雪が積もる日もあれば、20℃くらいまで暖かくなる日もあり、厳しい気候でした。それに加え、かなり乾燥しているので、体が環境に慣れるまでは体調を何度か崩してしまいました。

 この町は住宅アパートが数多くあり、子供が遊べる公園やスーパーマーケットがあります。子供たちが外で遊んでいる声がよく聞こえ、治安も良いです。日本のスキンケア用品だけを扱ったお店もあり、生活を送るのに不便はありません。ありがたいことに断水や停電もしたことがなく、他の協力隊と比べると恵まれた環境で過ごしているように感じます。

 前述のとおり、活動で1年生〜9年生という大勢の子供たちと音楽の授業で繋がっていることもあり、家の近所を歩いていると、よく声をかけられます。ここに来たばかりの頃は右も左もわからない状態だったので、子供たちが買い物を手伝ってくれたり、助けてくれたりしました。モンゴル語がまだ全然話せない私と、なんとかコミュニケーションを取ろうと頑張ってくれた人懐っこい子供たちには感謝しています。

仲良しの子供たちと

 数ヶ月経過した今では、八百屋さんやスーパーマーケットの店員さん、首都に行く時に利用するタクシーの運転手さん達に顔を覚えてもらえ、出会うと挨拶を交わすようになりました。コミュニティが少しずつですが形成されてきたことを実感でき、嬉しく感じます。

 ここに住むようになってから、モンゴル人に助けてもらってばかりの日々です。ボランティアとして来たのにまだ何もできていません。あと1年半の任期で、少しでも役に立てるよう、何かを残せるよう、模索しながら活動したいと思います。

 外で音楽に合わせて踊る授業もありました