現地隊員レポート 「りる」第57号より
ミクロネシア Y.K.
平成21年度3次隊
環境教育
『ゴミのポイ捨てとのあくなき闘い(コスラエ)』
香川県の皆さん、こんにちは。私も任期が残り1ヶ月となりました。これまでの環境活動について振り返ります。私の職種が環境教育なので、環境という名のもと専門的に1分野を徹底的に行う活動ではなく、「主役はコスラエの人々」で青年海外協力隊はあくまでもサポートという形のもとで行いました。そして日々の地道な活動の積み重ねが最も大事だという事も気づきました。
水質検査の促進、医療廃棄物の分別点検のサポート、コスラエの各家庭を対象とした廃棄物実測調査と廃棄物収集システムアンケート調査、ゴミのポイ捨てに対する環境啓発活動、廃棄物収集システムの向上と不法投棄現場の撲滅、「ゴミの減量化」を目指してゴミ分別の促進などを目的とした住民集会の開催などが主な私の活動内容で、その中でいくつか紹介します。
まず医療廃棄物の分別点検のサポート。これは前回の私のレポートでも少し書きましたが、その続きです。改善に少しずつ動き始めてはいたのですが病院のスタッフが医療廃棄物を適切に分別・処理しようという意識が低く、停滞していて、医療廃棄物がこちゃまぜになり、焼却処理されずに溜まっていくという元の悪い状態に戻っていっていました。
そこでその状態を出張で来られていたJICAミクロネシアの健康管理員の方と当時おられた病院勤務のシニア海外ボランティアの方で新しく代わった病院長を訪問し、報告しました。
院長はすぐ動き今年5月に医療廃棄物の現状報告会が行われました。医療廃棄物の現状報告のプレゼンを私とシニアの方で土台を作り、それをサニテーションのディレクターがまとめて発表され、病院スタッフとの間で盛んに議論が行われました。そして分別点検のスタッフも決まり毎週木曜日に点検を実施する事になり、私もサポートする事にしました。
何回かサポートしてその後病院スタッフだけに任せようとしましたが、なかなかそうはいきませんでした。スタッフの意識が低く、私がコスラエにいない時はサボっていました。そこでその分別点検の重要さをしっかり認識させるため、毎週繰り返し常に行うことを啓発しました。その分別点検のスタッフだけでなく各部署の病院スタッフにも。
一般廃棄物のゴミ箱に感染性廃棄物が混ざっているゴミ箱を発見したときは、繰り返し分別を呼びかけ、時にはその部署のディレクターを呼び出してスタッフに適切に分別するように啓発しました。その毎週の繰り返しが少しずつ実り始め、だんだんと適切に分別できるようになり、また分別点検のスタッフもやる気を見せ始め、自分からやろうという意欲が出てきました。
またその分別した医療廃棄物は病院のメンテナンススタッフにより定期的に焼却処理が行われています。このように毎週繰り返し啓発する事で医療廃棄物の分別・処理の改善は少しずつ前に進み始めています。
次に廃棄物収集システムアンケート調査、これは今年の2月にコスラエの家庭90件を対象に実施しました。実施した目的は現在コスラエには不法投棄現場がいくつもあります。コスラエには中心地のトフォールに福岡方式の廃棄物処分場があり、昨年不衛生な不法投棄現場を全て閉鎖し、その廃棄物処分場に一般廃棄物を全て収集する予定でしたが、結局廃棄物収集システムが機能していないためにこのような不法投棄問題が発生しています。
その問題の原因を追究し、今後の収集システムの改善するためにこの調査を配属先のKIRMAスタッフと実施しました。調査の結果やはり多くの人々が収集システムに不満を持っていました。この調査結果をどう生かすか、今年はJICA大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト(J−PRISM)の初年度であり、ミクロネシア連邦はこの初年度にコスラエの廃棄物管理システムを確立させる方向で動いています。
コスラエは福岡方式の廃棄物処分場があり、また2007年UNDPの基金で始まったリサイクルシステムが非常に機能しており、プロジェクトのパイロットサイトとして注目を集めています。そしてKIRMAスタッフと短期廃棄物専門家の方と環境企画調査員の方とこの廃棄物収集システムの確立と廃棄物の減量化するため廃棄物分別の促進を目的とした住民集会を今年11月にコスラエの4つの村で開催しました。
住民集会にて。廃棄物分別のデモンストレーション。グリーン系廃棄物「これはどう処理するの?」とコスラエの人々に問いかけています。KIRMAスタッフと環境企画調査員の方が収集システムの紹介および今後の対策を話し、私は廃棄物収集システムアンケート調査の結果発表とゴミの分別とゴミ缶の適正な使い方をコスラエ語でアクションを交えて実演、さらにゴミのポイ捨て防止を啓発するスライドショーを実施しました。
コスラエの廃棄物分別の素晴らしい点は、生ゴミをほとんど豚や犬にあげる、及びリサイクルシステムが機能しているため、缶やビン、ペットボトルのゴミがほとんどない事です。実際に廃棄物処分場に生ゴミや、缶、ビン、ペットボトルはほとんどありません。生ゴミがほとんどないためあまり臭くもありません。これは非常に素晴らしい事だとコスラエアンに話しました。
ただプラスチック系の廃棄物とグリーン系廃棄物の違いが分かっていない人が多く、その違いをアクションで説明、またグリーン系廃棄物をKIRMAではコンポストに利用している点も説明しました。
私はホームステイしており地域のイベントにも積極的に参加してコスラエ語でコスラエの人々と交流しており、また人口約7000人弱と小豆島よりも小さいコスラエでは私の事を知っているコスラエアンもかなり多いため、それをうまく有効活用してコスラエの人々がどうやったら喜んで興味を持つかも分かっていたので、そこを利用しました。配属先のKIRMAにとってもコスラエの人々にとっても有意義な第1回住民集会であったと思います。
コスラエの人々と共に早朝のクリーンアップ活動そして私にとって最大の活動、最大の環境教育はなんといっても毎朝のコスラエのメインロードの20〜30分程のゴミ拾い活動です。今年の4月後半から始めました。目的はゴミを道路脇にポイポイ捨てるコスラエアンのゴミポイ捨て防止啓発活動です。言葉ではなく姿勢で見せるという事です。6月からは観光局配属の隊員とも協力して行っていますが改善には全く至りません。
なかなか改善しないだろうと十分承知の上で始めました。州政府の人間には車から目の前でゴミをポイ捨てさせられる屈辱も味わいました。ですが続けました。そしてKIRMAやコスラエの人々がこれをどう受け止め、感じとってアクション起こすか待ちました。
なかなか動くことはないだろうと思っていましたが、今年10月KIRMAのスタッフが「うちらスタッフとNena(私のコスラエでの名前)で週1回ゴミ拾いを始めよう。」と提案してきました。コスラエの環境局のKIRMAが動き始めました。
KIRMAのスタッフは優秀なのですが続けることは苦手です。しかし彼らから提案してきた事なので提案があったからには彼らに奨励しています。更に他のスタッフから「その事をラジオで話さないか?」「このゴミのポイ捨てのスライドをローカルチャンネルで流そう」と提案してきました。これを待っていました。自分から提案してもよかったのでしょうが、私はそれでは意味がないと思っていました。
彼らがコスラエの人々が自発的に感じることが大事だと、それを気づかせるのが協力隊の仕事だと思いました。ローカルムービーは作成しました。放送はまだですが必ず放映される日が来ると思います。
運動会やカヌーレースでは常にゴミをポイ捨てするのはやめよう、ゴミ箱に入れようという事をマイクを握ってアナウンスしました。自治体の市長にゴミ缶を用意してもらえるようにお願いして用意してくれる時もあればすっかり忘れられている事もありました。ゴミ缶を用意してアナウンスした日はゴミのポイ捨ては減少しました。これをコスラエの人々が自覚してシステム化する事が大事です。なかなかそうはいきませんが。
環境活動以外にもコスラエのイベントには積極的に参加しました。運動会・カヌーレース・クリスマスマーチング等です。今年の11月には運動会の競技の一つ、8マイル(約12・8q)マラソンに参加しました。ホントきつかったですが完走直前の運動会のトラックで「Nenaコール」を受けました。これは嬉しかったですね。「ゴミ拾いのNena」「マラソンのNena」でコスラエで更に有名になり、人々との交流もより増えました。
昨年のクリスマスマーチングの様子。今年は4年に一度の大きなマーチングに。今年3月11日に発生した東日本大震災はコスラエの人々にも大きなショックでした。私もなんとか日本のためにコスラエから支援できないかと思いまして、コスラエの人々からのメッセージを日本に送ることにしました。このメッセージは自身のブログやJICAボランティアが有志で始めたメッセージプロジェクトに掲載し、JICAミクロネシア支所を通して日本へ送られました。
すべての日本人の人々が苦難に遭遇している間、私たちは日本の皆さんを勇気づけるために祈ります。5月26日にはコスラエの人々主催で東日本大震災追悼セレモニーが行われました。セレモニーでは追悼ソングや義援金の募金活動が行われていました。そして一番感動したのはコスラエの人々からの日本語で書かれた応援メッセージ、これには驚きました。
次々と応援メッセージが披露され、私もこの時は主催者に急きょお願いしてコスラエに住む日本人としてコスラエの人々にコスラエ語でお礼を言いました。このセレモ二ーを少しでも日本の人々に届けたいという事でミクロネシア環境隊員ブログに投稿、更にJICAミクロネシア支所を通じてJICAの世界HOTアングルのコーナーにこのセレモニーの様子が掲載されました。
私にとってこのコスラエは大きな故郷になるでしょう。常にコスラエの人々と共に活動・交流し、コスラエ語を話しました。残り1ヶ月最後の最後までコスラエを駆け抜けたいと思います。
最後になりますが香川県青年海外協力隊を育てる会の皆様には毎月支援物資や四国新聞等を郵送して頂いており、とても心強く嬉しく思います。健康に気をつけ無事に香川に来年1月に戻りたいと思います。そして香川県の人々にこの「コスラエ」の事を知ってもらいたいと思います。「Kuloh ma luhlahp!(クロマララップ)ありがとうございました」。
東日本大震災追悼セレモニー。「コスラエより心を込めて」「遠い南の島からも日 本を思っている」