現地隊員レポート             「りる」第53号より 

                                                    ミクロネシア   Y.K.
                                                             平成21年度3次隊
                                         環境教育
    

 

『ミクロネシアの宝石、コスラエ』

「Lewo(レンウォー)」このコスラエ語の意味は「こんにちは」です。

 はじめまして。平成21年度3次隊、環境教育隊員としてミクロネシア連邦コスラエ島に派遣されているY.K.と申します。コスラエには本年の1月18日に赴任しまして早くも5ヶ月が経ちました。

  コスラエの代名詞、スリーピングレディ

 ミクロネシア連邦はオセアニア地域にあり、赤道の少し北側に位置するミクロの文字通りとても小さな国です。総入口は約11万人で偶然にも私の出身地の丸亀市とだいだい同じ人口です。607の大小の島々からなり、世界有数の珊瑚礁に囲まれた自然の美しい国です。ミクロネシア連邦はヤップ、チューク、ポンペイ、コスラエの4つの州で成り立っています。4つの州ともそれぞれ現地語が違い、4つの州は全く別の国のような様子だそうです。

 私が赴任しているコスラエ州はミクロネシア連邦の中で最東端に位置しています。コスラエ州は4州の中で唯一離島がなく、コスラエ島1島のみで成り立っています。人口は8000人弱、4州の中で1番人口が少なく、店もほとんどなく穏やかな島です。「すごい!どこまでも広がる青い海。そして広く多く生い茂る緑。マジ南の楽園に来た!」私が初めてコスラエに着いた時の印象です。今まではほとんど日本の海しか見てこなかったのでこんなに美しい海を見たのは初めてです。そうです、コスラエは4州の中で1番人口も少なく店も少なく不便な島なのですが、それを覆すような手つかずの自然が1番残っている島なのです。

(1)気候
  コスラエは北緯約5度に位置するので赤道に近く1年中夏です。しかし日本の夏のように35℃を越えるような事はないのでさほど暑くありません。年間約5000mm程の雨が降り、世界有数の多雨地域です。朝から晴れていても突然スコールが降りだすことがしばしばあります。今年はエルニーニョ現象の影響で10日ほど雨が降らない事があったのですが、その後は1週間の間に日が射す事がなく、ひたすら曇りと雨の繰り返しという事もありました。これだけ雨が降る島なので滝や川、湧水などの水が豊富にあるため断水になる事はあまりありません。レインコート、長靴、防水用バックは重宝します。

(2)生活、文化
  電気も発電所があって安定しており、停電になることもあまりありません。隊員の方の中にも、電気や水が不安定で大変な国もたくさんあると聞きますが、このコスラエは店が少なくても生活で重要な2大要素、水と電気が基本安定しているために過ごしやすいと感じているので贅沢は言えないなと思います。

 コスラエの人々をコスラエアンと呼びます。たいていの人に英語は通用するのですが、やはりコスラエ語を話せたほうが親密になれると思います。コスラエ語で交流することにより、コスラエアンも仲間に入れようとする雰囲気が感じられます。私は現在、ホームスティをしていますがホストファミリーと職場のKIRMAの人から日々コスラエ語を勉強中です。今は日常会話をできる限りコスラエ語で、仕事の話をする時は英語でやるという感じです。日本人には大変友好的です。またコスラエでは長く滞在する外国人にコスラエ独自の名前をつけられます。私のコスラエでの名前は「Nena(ネエナ)」です。コスラエアンによく聞かれてるのが「Kom fuhkah?(コンファキャン?)」(元気ですか?)

 コスラエアンは非常に優しく明るいためとても親しみやすいです。道のいたるところで「Lewo(レンウォー)」と声を掛けられ、私も声を掛けます。そして道を歩いているとこっちが何も言わなくても車が止まって乗せてもらえます。ヒッチハイクです。こんな事ができるのはコスラエだけかもしれません。仕事が15時で終わるため夕方は家の近くの高校(コスラエ唯一の高校)のグラウンドでジョギングしたりしているのですが、その時に高校の陸上部のコーチから「一緒に練習しよう。」と誘われ、高校生と一緒に短距離走をやることもあります。とても気さくで明るい雰囲気です。

 コスラエの日曜日は特別です。宗教としてキリスト教を崇高しているのですが、日曜日は安息の日として全ての店が閉まり、仕事が休みなのはもちろんの事、酒を飲むことも禁止、スポーツをやるのも禁止です。何もせずに家で休みなさいというルール。これはミクロネシア連邦でもコスラエ州のみのルールです。毎週日曜の朝はホストファミリーと必ず教会へ行きます。教会でのやりとりは全てコスラエ語で早口なので難しいです。

 当初、私はこの日曜コスラエルールが苦痛でした。一番苦痛の理由は体を動かせないことです。私はスポーツするのがが大好きで日本でも野球、サーフィン、ジョギング等をよくやっていました。しかしコスラエの日曜日は天気がよく海が身近にあっても泳ぎに行くこともできない、走ることもできない、もったいないと思っています。しかしこれはコスラエでのルールであり、自分ではどうしようもできないことなので、日曜日はホストファミリーからコスラエ語を教わったり、英語の勉強したり本を読んだりと、時間を有効にいくらでも使えると前向きにやっていけるようになりました。

 果物が豊富に取れます。タンジェリン、オレンジ、アップル、マンゴー等をよく食べますが、私が1番好きなのがココナッツジュースです。これは本当においしいです!

(3)手つかずの自然
  コスラエの自然は「ミクロネシアの宝石」です。海は透視度が非常によく、30mはあると言われます。私は2回(仕事で1回、プライベートで1回)スキューバーダイビングをしましたが、海の中はとても青く美しい手つかず珊瑚礁が広がっています。海がとても美しいためシュノーケリングでも十分に魚や珊瑚を見ることができます。

  コスラエ島ワラン村のビーチ。道路がなく、ボートでしか行けない聖地。

 またマングローブも森林も深緑でとても美しいのがコスラエの特徴です。マングローブを探索するツアーもあります。世界でもマングローブの汚れが少なく美しいのもコスラエの特徴です。私はカヌーの船頭さんと仲良くなっているので、もしみなさんがコスラエに来られる事があれば案内いたします。川で泳ぐこともでき、たくさんの種類の木でコスラエ島を覆い(コスラエ語でしかないオリジナルの木もあります)果物も豊富に取れ、コスラエはまさに「南の楽園」です!

  マングローブツアー。船頭さんと

(4)仕事
  私の配属先はKIRMA(Kosrae Island Resource Management Authority)です。コスラエ島の自然を監視する環境局みたいなところです。英語もコスラエ語もほとんど話せない自分が当初取り組んだことはKIRMAのスタッフの現場の仕事に積極的に参加することでした。海洋保護部とはスキューバーダイビングで珊瑚礁の状況を確認したり、ボートでコスラエ島を1周して他国の船が領海に入ってきていないかなどの確認。森林管理部とはスタッフと共にカッパを着て、伐採した木や二酸化炭素を多く排出する雑草、木に化学薬品を散布する作業に参加したり、木を植える作業、土のコンポスト化などいろいろな現場の業務にどんどん参加し、スタッフと共に汗を流しました。KIRMAのスタッフはグアムやハワイ等で勉強や研修を経ている人がたくさんいるので、非常に優秀です。私も森林や海洋の分野は全く初めてなので逆にスタッフからいろいろ教わっています。

 アースディ(4月22日)と世界環境の日(6月5日)には大規模なクリーンアップ活動が行われました。(6月5日(土)だったため、前日の4日(金)に実施。)私もKIRMAのスタッフやコスラエアンに交じって粗大ゴミをトラックに運び込む作業をドロドロになりながら行いました。

 ゴミは大変でしたが、コスラエアンも一生懸命になって頑張っていました。この活動には子供たちもたくさん参加していたので、今後子供たちにはゴミを拾うのはこんなに大変だからゴミを道に捨てないようになって欲しいなと思います。そのような啓発活動も今後やれたらと思います。

  アースディ(4月22日)クリーンアップ作業を終え、小学校の子供たちと。この日大雨でした。

 現在、コスラエ島には準好気性処分方式(福岡方式)のゴミ処分場があります。その処分場の水質検査を2008年11月から月1回のペースで行っています。検査項目は現在の段階ではCOD(化学的酸素要求量)とPH(水素イオン濃度)の2項目のみで日本製のPACテストとリトマス試験紙で行っています。簡易的なものなので正確なデーターは取れず目安が分かる程度の検査ですが、データーはしっかり記録され保管されています。しかし、それを解析するための排水基準が今のコスラエにはありません。これではただデーターを取っているだけになっています。そこで日本の排水基準やコスラエに似た環境であるグアムやハワイの排水基準のデーターをKIRMAのスタッフに提供し、それを基にしてコスラエ独自の排水基準を作ってもらおうと思っています。

 PACテストは簡易的なものなのですがKIRMAのスタッフから今後も継続して検査を行いたいという動きがあり、PACテストの購入にも意欲的でした。現状はこのPACテストで処分場のCOD、PHの検査を続け今後の状況に応じて検査項目を増やしたりと少しずつ改善していこうと思っています。それに乗じて、コスラエでも下水の汚れが問題となってきているので、河川や海洋の水のサンプリングをして現状のCOD、PHの検査を行い解析してコスラエの水質の改善に努めることをこれからの活動の最大の焦点として頑張っていこうと思います。

 私はコスラエの海や山を含めた美しい自然、そしてコスラエアンが大好きです。現在はまだコスラエに対して環境の面で何も貢献できていませんが、いつか必ず環境面で、そしてそれ以外の面でも国際貢献、国際交流できることを今後の目標にします。1日1日を大切に、残り約1年半思う存分コスラエの海を山を自然を駆け抜けて活動していきたいと思います。

 最後になりますが香川県青年海外協力隊を育てる会の皆様には毎月支援物質や四国新聞等を郵送して頂き大変お世話になっています。とても心強く嬉しく思い、また香川が懐かしく感じられます。現在派遣中の隊員の皆様もくれぐれも健康には互いに気をつけてこれからも頑張っていきましょう。

「Kuloh ma luhlahp!(クロマララップ)」ありがとうございました。

  KIRMAのスタッフと