現地隊員レポート 「りる」第57号より
マーシャル N.K.
平成22年度3次隊
理数科教師
『香川県のみなさん、こんにちは』
香川県のみなさん、こんにちは。私は平成22年度3次隊として「マーシャル諸島」に派遣されました桑原直幹です。日本は今からさらに寒さが増す時期ですね。こちらは12月といえど、年中太陽は休むことなく暑さをもたらし、そんな中で行う授業では汗をふいてもふききれない、そんな毎日を過ごしています。しかし、太陽の暑さに負けず、毎日活動に励んでいます!
この国「マーシャル諸島」は、日本ととても深い関係が歴史的な背景からあり、日本人に似ている人もいれば、この国の言葉(マーシャル語)にいくつかの日本語が存在します。たとえば、ヤキュー(野球)やデンキ、タマ(電気)、ゾウリ(草履)、バカタレ(馬鹿たれ)など、どれも戦時中の日本人が導入した言葉だそうです。生徒にも日本人の名前をしたヒデオ君、タケオ君、ヤマムラさん、など、これも戦時中に日本人男性と交際をしたマーシャル人がいたからです。祖父母に日本人を持つマーシャル人がいて、中には「上を向いて歩こう」を歌える人もいます。
Beautiful sun setこの国には、みなさんの中で御存知の人もいると思われますが、「ビキニ環礁」という原子爆弾により被害をうけた環礁があります。水着の「ビキニ」は、この原爆の実験の衝撃性にちなんで、名付けられたというほど、過酷なものでした。
戦時中、戦後、マーシャル人は侵略してきた外国人の言うことをただ従うしか生きる方法はありませんでした。そして、その中でも強く生き耐え抜いたからこそ、いまの国があるのだと思います。国の人はみな優しさに満ち溢れています。温厚で争い事はきらいで、助け合いの精神があります。
3月11日に起きた東北大地震で被害にあった方々への応援メッセージを我が校の生徒たちの発言がきっかけで作りました。あの時は、どこへ歩いても「日本の家族はだいじょうぶか?」、レジのおばさんにも「日本はだいじょうぶかい?」と言われるほどみんな日本のことを心配してくれて、こちらでも大きなニュースとなっていました。そこで、ポスターに生徒や同僚の先生方で東北の方への応援メッセージを書き、仙台のKTC中央高等学院に送らせていただきました。
pray for JAPANぼくの活動を紹介します。
クワジェリン高校というこの島唯一の公立校で数学の教師として、9年生(日本でいう中学3年生)と11年生(高校2年生)を対象に教えています。赴任した当時、生徒の数学の学力の低さ、授業態度の悪さには本当に驚きました。「高校生になっても九九が定着されていない」「授業中ツバをはきに外にでる」「ガムを食べながら授業をうける」「時間に遅れて授業にやってくる」このように日常的な姿勢、授業を受ける態度がきちんと養われていません。
授業風景僕は数学を教える以前にこの授業に臨む姿勢を教えなければならないと感じ、毎日厳しく指導しています。しかし、この国の人は「外はゴミ箱」と言い出す大人がいるくらいですから、中々直りません。授業態度も、小学校の見学を拝見したことがあるのですが、先生の教え方も雑で、子どもは教室内を走り回ったり、横になったり、基本的なことを先生が教えていませんでした。
子どもは大人を見て育つので、外にゴミを捨てる大人の姿をみれば、子どもも当然マネをします。「子どもの能力はどの世界もほぼ同じレベルだ。教える人によって、生徒の能力は伸びもするし、下がりもする」マーシャル諸島に派遣される前に、駒ケ根訓練所で聞いた言葉です。ぼくは、ここの生徒にどれだけのことを教えられるだろうか。子どもに責任はない。教える先生次第で、子どもは変わると信じながら毎日授業しています。
毎日生徒を指導していると疲れますが、そんな疲れを癒してくれるのが、空の景色です。ここの空は日本の空と違って、くすむことなく鮮明に映し出されています。ひょっこり顔をだす朝日、黄金のように輝く夕焼け、今にも落ちてきそうな積乱雲、ヒツジ雲、手を伸ばせば届きそうな満天の星空、ここに来てからよく空を眺めては、感謝の気持ちが込みあがります。
空1
このような景色を見せてくれることに感謝、この国で青年海外協力隊として派遣することを許してくれた両親への感謝、手紙やメールで連絡をくれる友人への感謝、いろんな人への感謝の気持ちを忘れず、ここでの貴重な時間を過ごし、毎日全力で励みたいです。もちろん、健康第一です!!機関紙「りる」様からいただいた文房具は本当にありがたく、有効的に活用しています。折り紙では正方形の性質を説明するときに用いたり、生徒に鶴のおり方を教えたり、シールは生徒の机の配置をまっすぐにするため、床に貼っています。本当にありがとうございます。