現地隊員レポート 「りる」第72号より
マラウイ 成瀬 美紀
平成29年度1次隊
コミュニティ開発
『任地への出発!(2回目!)』
2017年度1次隊、コミュニティ開発の職種でアフリカ南部、マラウイ共和国に派遣されていろ成瀬美紀です。
青年海外協力隊では、一つの決まった場所、ある国のある町に2年間腰を据えて活動をするのが普通です。が、私はイレギュラーなことに、途中で任地を変更することになってしまったのでその事件についてお話しします。
2017年7月に日本を発ち、マラウイにやってきました、私の要請は南部にあるムランジェ県というところ(山が有名なため山梨県を想像してください)の農業普及所で働くことでした。首都での1か月のオリエンテーションを終えて、8月12日、待ちに待った任地への引っ越しです。協力隊の応募、選考、合格発表、働いていた会社の退職、親戚や友人への挨拶、日本での研修、マラウイでのオリエンテーションなどなどを経て、「やっと!活動できる!」とかなり高揚していたことを思い出します。同期たちに見送られ、隊員宿泊所をあとにしました。
1回目の赴任。トラックに積み込まれた荷物実際に生活を始めると、初めての途上国一人暮らし、わくわくしていた気持ちはどこへやら、虫が大量発生、停電が頻発する、水は止まる、食材は日本と違う、理解できない現地語の嵐・・・、隊員や日本にいる家族、友人に愚痴をこぼしながら、なんとか職場の人やご近所さんとも仲良くなり、現地の友達もでき、不便さにも慣れてきた矢先のことでした。1か月半がたったころです
山の上の村にいるときに、突然「どこから話したらいいかな・・・、吸血鬼の噂は聞いてますか?」とJICAからの電話「今、フィールドに出ているのでまた確認してご連絡します。」とりあえず同じ任地の隊員に連絡をとると「へーよくわかんないね。」そうこうしているうちに、かなり真剣なトーンでJICAから「緊急で首都に退避してもらうことになりました。明日の昼頃ピックアップにいくので、荷物をまとめてください」とのこと。
事態があわただしく展開し当時は理解が追い付かなかったのですが、魔術を使う吸血人間がモザンビークからやってきたという噂がマラウイ南部地域で広まり、疑心暗鬼になった村人たちが外からの訪問者を襲撃、死亡させるという事件が起こったのでした。ただでさえ外国人は道を歩いているだけでも注目の的。集団ヒステリー、リンチに巻き込まれると危険であるとの判断から、首都に一時退避することが決定されました。
いつ任地に戻れるのか、進みかけていたプロジェクトはどうなるのか、残してきた荷物は大丈夫なのか、電気代の支払いはどうするのか、大小さまざまな不安がありましたが、安全を最優先し、任地を変更するという結論に至りました。JICAスタッフの方々の奔走のおかげで、これらの不安も問題もすべてとっばらわれ、10月30日、またまた隊員宿泊所から大荷物を持って車へと乗りこみました。「この新鮮さ、この風景、・・・デジャブ?」と見送ってくれる隊員と笑いながら2回目の任地への出発です。
2回目の赴任出発。そして現在はホテル暮らしをしながら住む家を探しつつ、活動を開始しています。2つ目の任地はコタコタ県という暑さで有名な地域。瀬戸内海より少し大きいサイズのマラウイ湖沿いにあり、湖に浮かぶ島も瀬戸内の小島さながらなので、マラウイの香川県といったところでしょうか。
瀬戸内海と言われればそんな気がしてくるマラウイ湖2年という限られた任期のうち3ヶ月ほど同期に後れを取ってしまい焦りを感じるなど、任地変更のマイナス面はもちろんあるものの、プラスなこともあります。
一つは、前の任地で「今更これをやっても微妙だな、」と思っていたことにトライできたことです。それは、職場に自己紹介ポスターを作ること。日本とは違って職場に新しい人が来ても、名札があるわけでもなく整理された名簿があるわけでもないので、同僚が私をMIKIだと認識するのは口頭での自己紹介のみ。なじみのない日本人の名前で、1回聞いても忘れてしまうのは当然です。迷いなく「MIKI!」と呼んでもらうためにも、自己紹介ポスターを作成し、手書きの日本地図とともに職場の掲示板にはりつけました。前とは打って変わって、皆にすんなり名前を覚えてもらうことに成功しました。
手作りの「自己紹介ポスター」日々の過ごし方についても、もっとこうできた、こうすべきだったと後悔していることは行動を改めるようにしています。
ムランジェにもう戻れないように、2年が終わればコタコタ、マラウイに戻って同じ生活をすることはできません。一瞬一瞬を大切に、悔いのない濃い生き方をしようと意識を新たにできた一件となりました。差し当たり、「もっと頑張るんだった・・・」と後悔しないような、活動の基盤となるいい家探しに全力を挙げるつもりです。
JICA四国の視察団からいただいた日本のおやつに喜ぶ友人