現地隊員レポート 「りる」第48号より
マラウイ R.A.
平成19年度1次隊
小学校教諭
『マラウイ便り』
香川県青年海外協力隊を育てる会の皆様、いつもご支援ありがとうございます。私のマラウイでの生活も1年を切りました。ここで、マラウイの紹介と私の活動について報告したいと思います。〈マラウイ概要〉
人口約1200万人、面積は11.8万平方キロ(北海道と九州を合わせたくらい)、以前はイギリスの保護領で1964年に独立。通貨はMK(マラウイクワチャ1MK=0.6円)〈主食〉
シマと呼ばれるとうもろこしの粉をお湯で練ってお餅のようにしたものを食べます。付け合せには、チキン・かぼちゃの葉・豆・卵などがあります。値段はローカルレストランで200MK。レストランでは500MKくらいします。
マラウイの主食「シマ」〈服装〉
女の人のほとんどがスカートを着ています。パンツを履いている女の人の多くは都市部で働いている人です。私は小学校で活動をしているのですが、赴任前から「必ずスカートを着用するように!」と言われました。スカートの他に、女の人はマラウィアンドレスと言われる民族衣装を日常的に着用しています。ほとんどがオーダーメイドで布は4メートル800MK〜3000MKで、仕立て代は上下で1500MKくらいです。〈交通事情〉
一般的にミニバスと呼ばれる乗り物を活用しています。大きさは小さいもので11人乗り、大きいものだと30人乗りのバスがあります。今年から交通法が改正されましたが、それまでは11人の車に15人、3人かけのシートに4人、5人と乗ることもありました。乗ってくるのも人ばかりではなく、街で売る野菜・果物・タイヤ・両足を縛られたヤギやニワトリ、オーブンレンジが乗ってくることもあります。マラウイの国土は南北に細長く、首都から極北へ行くのには飛行機もないので、バスで2〜3日かかります。
ミニバス〈要請&活動内容〉
首都リロングウェにある「セントジョーンズ小学校」にて「Expressive arts(以下、表現芸術)」を教えています。「表現芸術」とは、日本でいう音楽・体育・図工・家庭科が一緒になった教科です。対象学年は6年生です。日本で6年生といえば11〜12才ですが、マラウイでは4才から入学することができ、試験の結果で留年もあるので、私のクラスには下は9歳から上は16歳の児童がいます。
授業をしていて困ったことは、ずばり言語!授業は公用語である英語で行われるのですが、児童のほとんどはチェワ語と呼ばれる現地語を話すので、ほとんど理解していません。私はジェスチャーで伝えたり、現地の教師に通訳してもらったりして活動しています。6年生のほかに5年生の先生と「表現芸術」をTT(Team Teaching)で教えています。というのも、この「表現芸術」は最近取り入れられたもので、マラウイの教師たちもどのように教えていいのか分からない状態なのです。活動当初は「日本で3年しか教えていない私が、マラウイで何年も教えている教師に指導するなんて・・・」と思って敬遠していましたが、今年の8月からTTを取り入れることにしました。が、なかなか意思の疎通が図れないのが現状です。
前日に話し合ったことも当日に変わっていて、理由を聞いても答えてくれない・・・ということもありました。しかしながら、さすが現地の先生、児童とのコミュニケーションはバッチリなので、予定が変更になっても児童は楽しそうです。そんな姿を見ていると、「まっ、いっか」と気持ちの切り替えをするようになりました。多くの学校が問題としているのが、教室と教師の不足です。
私の学校も児童数3000名に対して教師の数が60名、教室は日本からの援助で20教室ほどありますが、全然間に合っていません。机やイスがある教室も4教室しかありません。教室に入れなかったクラスは木に黒板を立てかけて外で勉強しています。机やイスがない児童は、地べたに座り自分のひざを机代わりにして勉強しています。
現地の教師と
〈マラウイのここが面白い(1)運動会〉
マラウイの協力隊には分科会というものがあり、似た職種の隊員が集まって日頃の活動を報告しあったり、マラウイの人たち向けにワークショップを開いたりしています。私はその中の「健康教育分科会」に属しています。この分科会は、隊員のいる任地で運動会を開催するのが主な活動内容です。マラウイには体育という教科はあっても、ほとんどの教師の間で面倒くさがられ、まともに教えていないのが現状です。
運動をすることが身体にいいことだと分かってはいるものの、どのようにすればいいのか、何が正しいのかを知らない人がほとんどです。そのため「運動は大切だ!」をテーマとして、健康教育分科会ではこれまでに2回運動会を開催しました。1回目は私の任地の小学校で行いました。練習期間は1週間、人数を500人から80人に減らしての挑戦でした。種目は、2人3脚・長なわ・リレー・棒引きなどです。そこで驚いたのは、子どもたちの跳躍力のすごさ!子どもたちは裸足でピョンピョンなわを飛んでいました。
長なわとび2回目は幼稚園教諭の配属先である孤児院で行いました。当日来るはずだった子どもたちがなかなか来ず、ゲームをしながら待つこと2時間、5〜15歳くらいの子どもたち約60名が集まってくれました。種目は1回目のものに、今回は応急処置法を加えました。
怪我をした時に次の4つ「水・塩・灯油・食用油」のうちどれをかけますか。という質問にほぼ全員が「塩」と答えました。中には「灯油」と答えた人もいて、かなりびっくりしましたが、必ず水で洗い流しきれいな布で抑えることを伝えました。〈マラウイのここが面白い(2)かつら〉
マラウイの女性は基本縮れ毛で坊主です。でもとってもおしゃれで、ほとんどの女性が服を着替えるのと同じような感覚でかつらをつけています。アフロヘアーやロングヘアーなど様々な種類のかつらから、自分にあう色や長さを選んでつけています。もう一つのおしゃれが「髪編み」です。毛糸や付け毛を使って髪を編みます。私は髪もまっすぐで長さもあるので、髪編みに向いているらしく、早速挑戦してみました。とにかく痛い!最初の夜は頭痛薬を飲まないと眠れず、何人かの日本人は皮膚が真っ赤に充血していました。
日が経つにつれて痛みはなくなりましたが、その代わり髪を洗えないので、かゆみが私を襲いました。現地の人はかつらや髪編みを何ヶ月も持たせるようですが、私の最高記録は2週間でした。2週間後のシャンプーの気持ちよさは今でも忘れられません!
髪編み〈マラウイのここが面白い(3)ダンス〉
とにかくよく踊る!日本では恥ずかしがってしないようなダンスや歌を、マラウイの子どもたちは自分が主役とばかりに一生懸命表現してくれます。私の授業でダンス大会をやった時も、飽きることなく延々と踊っていました。観客も踊っている人たちに負けないくらい、口笛や拍手を送って盛り上げています。音楽は彼らの歌です。
楽器がなくても手や足を使ってリズムをきざみ、子どもとは思えないような腰の動きを見せてくれます。女性用と男性用の踊りがあるようで、女性は腰を男性は腰とひざをよく動かしていました。歌の内容はキリスト教の関係もあって神様をたたえるものがほとんどです。私が授業の合間に日本語の歌を教えるときも、自分が歌ったあと児童が歌って覚えていくという感じです。児童に人気だったのは「かえるのうた」。ゲロゲロという響きが楽しかったようです。
あと、マラウイには拍という感覚があまりないので、「うみ」を歌ったときには、3拍子がうまくとれず苦戦しましたが、「ひざたたき・手拍子・手拍子」という風に拍を感じられるような動きを加えて、何とか歌えるようになりました。
〈マラウイのここが面白い(4)発音〉
マラウイの人が英語を話すとき、必ずと言っていいほど語尾が「イ」になります。例えば「But(バット)」は、マラウイでは「バッティ」になります。なので、赴任してすぐは何を言っているのかわかりませんでした。授業でも「Let's start(レッツ スタート)」を「レッツ スターティー」と言わないと反応しなくて、すごく話すのが恥ずかしかったです。
お店で注文するときも「スプライト」を「スプライト」と発音すると、店員さんに「ノー、スプライティ!」と指摘されました。日本に帰る頃には、私もマラウイ風英語になっているのでしょうね。〈マラウイのここが面白い(5)ショッカー〉
マラウイではよく誰かをひやかします。誰かが失敗したときは、「イー」とショッカーのような雄叫びをあげて相手を非難したあと、「アイー(ダメね。)」と注意します。何かに驚いたときは「イー」のあとに笑いが起きます。赴任してすぐの頃は私のどんな行動も珍しいらしく、ことあるごとに「イー!」を連発され、腹が立ちました。今では私までも日本人との会話に「イー」を取り入れてしまい、自分が恥ずかしいです。〈マラウイのここが面白い(6)グンビ〉
グンビとは羽アリの一種で、マラウイの人たちはグンビの羽をむしって、から煎りにして食べます。マラウイの人たちにとって、ただで手に入る大切な蛋白源になっているようです。ある日グンビが大量発生したとき、外でとてもにぎやかな音が・・・見てみると数人のマラウイ人と犬が電気にあつまるグンビを捕まえようと、躍起になっていました。
犬は口をパクパク、マラウイ人は網を持って参戦!どっちがたくさんとれたかは分かりませんが、犬と一緒になって羽アリに夢中になっている人間をみたのは、あれが初めてでした。〈マラウイのここが面白い(7)胸〉
マラウイの女性は大事なものをよく胸の中にしまっています。バスに乗っているとき、隣の女性の携帯が鳴って、その人はおもむろに手をブラジャーの中へ・・・。私が「へっ?」と思っていると、彼女の手には携帯が・・・訓練所でも「大切なものは身に付けておくこと!」と言われましたが、ブラジャーの中とは・・・恐れ入りました。携帯のほかにも丸められたお札などが女性たちの胸にしまわれるようです。これが私の生活するマラウイです。時にはマラウイのことを嫌いになって、日本に帰りたくなるときもありますが、そんなときにやっぱり元気をもらうのはマラウイの人たちからです。子どもたちの笑顔があるから頑張れます。残り、あと半年ですが、マラウイのことをもっともっと好きになって笑顔で日本に帰りたいと思います。