現地隊員レポート             「りる」第56号より 

                                                       ケニア  M.F.
                                                             平成21年度1次隊
                                         観光業
    

『ケニア各地訪問の旅』

 香川県の皆様、こんにちは。いつも応援頂き、ありがとうございます。

 私の任期も残り僅かとなり、先日休暇を取ってケニア各地をまわってきました。これまでお世話になったケニアの方々に帰国前に再度会っておきたかったのと、日本人観光客の多くが訪れる、マサイマラ国立保護区、アンボセリ国立公園等をまだ訪問していなかったので、その見学が2大目的でした。

 ナイロビなど都会に住む友人はともかく、田舎に住む友人宅を訪問するのは、最寄りのマタツ(乗合バス)ステージから遠かったり、雨期で道がドロドロだったりして、予想はしていたものの、大変でした。でもどこでも大歓迎で、貧しいながらも精一杯のおもてなしをして頂き、感謝の気持ちでいっぱいになることばかりでした。

  訪問したボンドのお宅の前にて

 国立公園・保護区ではビッグ5と呼ばれるライオン、サイ、ゾウ、ヒョウ、バッファローのみならず、キリンやシマウマ、カバ、ワニ等多くの野生動物が大自然の中で生きている様子を見ることができ、人気がある訳がよくわかりました。とりわけアンボセリ国立公園はアフリカ最高峰キリマンジャロ山(5895m)を背景にしたサバンナに野生動物がくつろぐ景色が素晴らしかったです。

 今回の旅で最も強く感じたのは「ケニアの国立公園・保護区は、ケニア庶民のものにはなっていない」ということです。普段配属先でも感じていることですが、今回更にそれを実感しました。

 配属先KWS(ケニア野生生物公社:Kenya Wildlife Service)の正規スタッフは主な職場が国立公園・保護区ですし、異動も多いので、ケニアの国立公園・保護区を結構知っていますが、一般庶民は全くと言っていいほど知りません。アンボセリ・マサイマラは勿論のこと、近郊の国立公園・保護区にも行ったことのない人ばかりです。

 どうしてでしょうか。答えは簡単。お金がかかるからです。観光客は国立公園・保護区には飛行機ツアーで行くか、陸路で行くとしても、サファリカーをチャーターするか、自分の車で出掛けるのが一般的です。国立公園・保護区に入るには入場料がかかりますし、ホテルやロッジは高級で、値段も高いです。

 今回の旅は主にマタツ等を利用して回りましたが、国立公園・保護区内は交通手段が無く、ゲートでホテルに行く車が通るのを数時間待ち、車が通ると交渉して乗せてもらう、等の手段を取るしかなく、結構大変でした。

 ケニア人の友人に旅の話をしたところ「そんなにいろんな国立公園・保護区に行ったのなら、とてもお金がかかったでしょう」と言われました。「でも車をチャーターせずに行ったし、ホテルも見るだけで泊まらなかったりして、できるだけコストを抑えてまわったのよ」と説明したところ、「それは外国人だからできたこと。ケニア人の自分が国立公園のゲートで車に乗せて、と言っても誰も相手にしてくれないよ」と言われ、確かにそうだと思いました。

 ケニアはまさに観光大国で、野生動物も自然も海も本当に素晴らしいです。こんなに素晴らしい自国の資源を、ケニアの人たちの多くが知らないことをとても残念に思います。自国の素晴らしさを知ればそれをきっと誇りに思うでしょう。それが自然を守ること、環境をきれいに保つこと、への意識につながります。より多くのケニア人に自国の素晴らしさを知ってもらえることを心から願います。

 私はもうすぐ任期を終えて帰国しますが、協力隊の任期2年間では多くを学ぶことができ、JICAボランティア事業の素晴らしさを改めて感じています。支えて下さった周囲の皆様、また遠くから応援して下さった日本の皆様、香川県の皆様にも感謝しています。ありがとうございました。この経験を無駄にすることなく、今後の人生に活かしていきたいと思っています。