現地隊員レポート 「りる」第54号より
ケニア M.F.
平成21年度1次隊
観光業
ケニアの東海岸から(4)
『コースト地域の食生活』皆さん、こんにちは。日本では寒い季節ですが、インド洋に面するケニアのコースト地域は常夏の「夏」を迎え、連日蒸し暑い日が続いています。この時期、ヨーロッパから多くの避寒客が訪れ、リゾートホテルは1年で最も忙しいシーズンです。今回はコースト地域の食生活についてご紹介します。
ケニアの主食はトウモロコシの粉を熱湯に入れてゆで、もちもち状に練った「ウガリ」です。出来たての熱々のウガリをゆでた野菜、豆のスープ、お肉などと共に頂きます。肉は牛肉、鶏肉、ヤギの肉を焼いたり、煮込んでシチューにしたりしますが、一般の人にとっては高価なので毎日は食べることができないのが現状です。
ウガリと鶏肉のスープ肉の焼いたものはこちらでは「ニャマ・チョマ」と呼ばれ、地元レストランでは注文してから肉を焼き始めるところも多く、焼き上がるまでに1時間くらい掛かる場合もあります。
日本人の私はついイライラしてしまいますが、ドリンクを飲みながら肉の焼ける音やその香ばしい香りを先ず楽しみ、そして知人等と歓談しながらゆっくりと時間を過ごすのがケニア式です。ヤギの肉は多少クセがあるものの、慣れると抵抗なく頂けます。また、タマネギ、トマト、ニンニク、パクチーの千切りを混ぜ合わせた生野菜サラダ(カチュンバリと呼ばれる)をニャマ・チョマと共に頂くのが一般的で、これを頂くと脂まみれの口の中がスッキリとします。
店頭でニャマ・チョマを作っている食事にはナイフやフォークを使用せず、食べる前に手をきれいに洗い、右手の指先でウガリを上手にこねて丸め、スープや具とからめて頂きます。
同僚らの昼食の様子また、海の魚を揚げたものも道端でよく売られていますし、お店によっては揚げたタコを売っている店もあり、コースト地域ならでは食の豊かさを感じます。朝はウジ(トウモロコシ粉のお粥)、チャパティ(小麦粉を水と油で練って薄く延ばして焼いたもの)、マンダジ(揚げパン)などをチャイ(ミルク・ティー)と共に頂きます。大抵の職場では朝10時がティータイムでチャイを飲み、サモサやバジア(ジャガイモを小さく切って豆の粉を付けて揚げたもの)などのスナックを食べながら、同僚とのおしゃべりを楽しみます。同僚の中には朝食を食べずに職場に来て、チャイの時間にしっかりと食べている人も多いです。チャイには砂糖をたっぷり入れ、またこぼれるくらいカップ一杯に注ぐのがケニア流で、カップ7分目くらいまでしか入れない日本流だと「どうしたの?具合でも悪いの?」と最初は聞かれることがしばしばありました。家庭を訪問すると日本で日本茶を出すように熱いチャイを客人に振舞います。
コースト地域では他に「スワヒリ料理」と呼ばれるスパイスをふんだんに使った料理を頂くことができます。ピラウ、ビリヤニと呼ばれる肉入りピラフ(炊き込みご飯)のようなもの(スパイスの種類が違います)、ムシカキと呼ばれる牛肉の串焼き、ココナッツ・ライス、魚、鶏肉の煮込みスープなどがあります。ひき肉とタマネギ、卵をクレープの皮のようなもので包んで焼いたキーマ・チャパティもムシカキと共に、皆が家路を急ぐ夕方の活気付いた街中の食堂前の軒先でよく売られています。
ココナッツ・ライスは郊外では生のココナッツを使って作ります。家庭にはココナッツ果実の内部の固形胚乳(白い部分)を削り出す専用の道具があり、そこに座ってココナッツの実を割った後、ココナッツ・ジュースを出して固形胚乳を削ります。その後、お湯を混ぜて絞りココナッツ・ミルクを抽出します。このココナッツ・ミルクで炊いたご飯はココナッツ特有の甘い香りが豊かで食欲を掻き立てやみつきになります。
(1)ココナッツ果実の断面、
この白い部分が固形胚乳。
(2)ココナッツの固形胚乳を削る道具(ここに腰掛、突き出た刃物で器用にココナッツの実の中身を削り出します)
(3)ココナッツの実を割り、ココナッツ・ジュースと分けます。
(4)道具の先でココナッツの実の中身(固形胚乳)を削りだす。
(5)ココナッツ・ミルクを絞り取る。
他の地域に比べて食のバラエティーが豊かなコースト地域。おやつにも生のフルーツの他、コーストならではのお菓子が売られていますが、ここではとても紹介しきれません。機会が許せば、ぜひ現地を訪れて味わって頂きたいです。
私の任期も早いもので残りあと約半年となりました。日々、かなり忙しくボランティア活動を展開していますが、健康に留意しながら、現地の人々と楽しく充実した毎日を過ごしていきたいと思います。
左上からチャパティ、鶏肉のスープ、ココナッツ・ライス、牛肉のピラウ