現地隊員レポート             「りる」第53号より 

                                                       ケニア  M.F.
                                                             平成21年度1次隊
                                         観光業
    

 

ケニアの東海岸から(3)
『モンバサ・マタツ事情』

 皆さん、こんにちは!いつも遠く日本から応援頂きありがとうございます。こちらに来て早いもので1年が経とうとしていますが、元気に活動させて頂いています。今回は、隊員活動でも毎日のように利用している庶民の足、マタツをご紹介します。

 マタツ(matatu)は主に日本の中古のバンを14人乗りに改造したミニバスです。座席だけではなく、スピーカーやネオンを取り付けて大音量で音楽を鳴らしたり、夜はカラフルなネオンを点滅させながら走るマタツもあります。

  ケニアの庶民の足、マタツ

 マタツにはドライバーの他にあずき色の服を着たコンダクターが乗車しており、開けた窓から身を乗り出して「フェリー、フェリー(フェリー乗り場行き)、ベバ、ベバ(スワヒリ語でcarry)!」などと顧客を呼び込んだり、乗客の行き先を確認して集金したりします。乗客が乗降するステージ(停留所)の場所はだいたい決まっていますが、コンダクターに言えばその他の場所でも大抵停車してくれます。

朝と夕方のラッシュの時間帯、マタツ・ステージは乗客で溢れかえり、自分の目的地行きのマタツがやってくると、開いたドアに我先に群がり、乗り込みます。列も秩序もなく、争奪戦に挑めない私はいつも長時間待つことになるので、できるだけラッシュの時間帯は避けてマタツを利用するようにしています。マタツが走る路線はだいたい決まっていますが、時間帯によって行き先が変わったり、別の道を通ったり、とかなりいい加減です。

 料金の目安はありますが、ラッシュの時間帯には高くなり、雨が降ると高くなり、外国人を見ると高くなり、とこちらもまたいい加減です。着任当初はケニア人より高い料金をコンダクターが請求してくることもありましたが、そんな時は周囲の乗客が「汚いことをするな!」と抗議し、私を守ってくれました。

 今年1月、お正月明けの2日間、全国的にマタツストライキが実施されました。その背景は、ケニア警察がマタツを停めては無理やり理由(ケチ)をつけてチャイ(賄賂)を要求することにマタツ協会が反発したため、ストライキに至ったというものです。マタツという公共交通手段を失ったモンバサの街は人々で大混乱となり、早朝から長距離をひたすら歩く人々の波には驚きました。学校は休校になり、職場によっては休みになったところも多かったようです。普段は車内で音楽を大音量でかけるマタツや荒い運転のドライバーに閉口することも多々ありますが、この時ばかりはマタツの有り難さをつくづく感じた次第です。

 こちらで1年近くもボランティアとして現地生活をしていると、顔見知りのドライバーもできてくるものです。そのうちの1人がマタツドライバー歴10数年のラダックさんです。彼はラッシュの時間に私が人混みの中でマタツを拾えず困っていると、他の乗客が座る前に私の席を確保してくれる優しいおじさんです。

  朝の風景

しかし先日彼は勤めていたマタツ会社を突然解雇されました。原因は知りませんが、雇用契約書も労働組合もないケニアの職場ではよくあることだそうです。わずかな賃金で生計を立てるマタツドライバーは仕事が無くなるとその日の食事にも困ります。心配していたところ、幸い彼は数日後に別のマタツ会社で臨時雇いの仕事を見つけ、今は何とか生計を立て、元気に働いています。

 後日、彼の解雇は私のような外国人の友人がいることを上司がねたみ、それが一つの原因だったと聞きました。普段、『自分の身を守るため、人付き合いには注意しなければ』と思っていましたが、『相手の身を守るため、私自身の立ち振る舞いにも配慮しなければならないこと』を実感させられる出来事となりました。

  マタツステージでマタツを待つ人々。満員のマタツは停車せず通過していく。

任期もあと残り1年余り。隊員活動や日々の生活、そして人々との触れ合いから、より多くを感じ、学びながら元気に頑張っていきたいと思っています。プログサイト(http://blogs.yahoo.co.jp/fukadamari)も引き続き更新中ですので、良かったらのぞきにいらして下さい。