現地隊員レポート             「りる」第52号より 

                                                       ケニア  M.F.
                                                             平成21年度1次隊
                                         観光業
    

 

『ケニアU シモニ村の生活』

 皆様こんにちは。いつもご支援ありがとうございます。先日もお守りや絵葉書、文具等お送り頂きありがとうございました。早速使わせて頂いています。

 先日ケニア南東部、タンザニア国境近くのシモニ村に滞在する機会がありました。この村はケニアからタンザニアに抜ける幹線道路から未舗装道路を20分程入った海沿いにありますが、今回はこの村についてご紹介したいと思います。

 シモニ沖には配属先のケニア野生生物公社(Kenya Wildlife Service/以下KWS)が運営管理するキシテ・ムプングティ海洋国立公園/保護区があります。KWSコースト保護区の調査部署が年に2回定期的に海洋沿岸生態系調査を実施しているのですが、今回はそのチームに同行させて頂きました。村にあるKWSの敷地内の宿泊施設に泊まり、毎日朝からボートを海に走らせます。

 シモニのKWS事務所の正面玄関。

 シモニ村には電気、水道が一応あります。と言うと整備されているように聞こえますが、その水道から供給される水は真水ではなく、多くの塩分を含む塩水です。シモニでの生活は「塩水の生活」とは以前から聞いていたものの、実際体験するとその不便さが実感できました。顔を洗ってもベトベトして洗った気がしません。石鹸も全く泡立ちません。歯を磨いても口の中が塩臭く、シャワー後の髪も体もべたついてサッパリ感はありません。

その水道すらしょっちゅう断水になってしまいます。塩水によって蛇口や配水管など多くのものが腐食してしまい、損傷も早く、泊まった部屋の洗面台も穴が開いたところから水が漏れてボロボロでした。洗濯や調理に塩水を利用することはできないので、定期的に給水車から購入した真水を大きなポリタンクに保存して、少しずつ大切に使っていました。

  電気も不安定で、停電も毎日長時間にわたって続きます。連日真夏の暑さの中、停電のため扇風機の回らないシモニのKWS事務所内は無風になると文字通り『蒸し風呂状態』となり、そこで働く職員たちはなかなか仕事にならない様子でした。

 村の生活は主に漁業と観光業、あとは小さな商店などのビジネスで成り立っています。村には数件食堂がありましたが、海沿いの村らしく食事はやはり「魚」が中心でした。揚魚、煮魚をウガリやチャパティと共に頂きます。村にはバーも数件あり、日没後にはちょっとした社交場になります。私たち調査チーム一行も立ち寄りましたが、そこを訪れる人達の手には懐中電灯が握られていました。村には街灯も殆どなく、未舗装道路は比較的起伏も激しく、路面も凸凹なので、懐中電灯は夜間歩く時の必需品です。

 シモニ沖合い、キシテ島近くの海中。熱帯魚も珊瑚も本当にきれいです。

 そんな一見不便さを感じるシモニですが、沖合いの海洋国立公園は手つかずの豊かな自然が残されており、そこに生息する色とりどりの熱帯魚と珊瑚が本当にきれいです。

 また、シモニはイルカを観察できるポイントとしても有名で、調査中のボートからイルカの群れを何度も見ることができました。沿岸の干潟には蛸足状に根を張ったマングローブの林が広がっています。この美しい自然を求めてディアニやモンバサなど、近郊のリゾートホテルから毎日のようにシモニ村の日帰りツアーやダイビングツアーが催行されており、多くの観光客で賑わいます。ケニアの海は東側でインド洋に面しているため夕日を望むことはできません。しかしながら、シモニは半島になっているため、海に沈む夕日を見ることができます。

 シモニの夕日

 夜には眩いばかりの満天の星空が広がり、さざ波の音を聞きながら夜空を満喫できます。また村の中心部近くにはシモニ・スレイブ・ケイブスと呼ばれる洞窟があります。ここはかつてアラブとザンジバルで行われていた奴隷貿易の中継地点となっていたそうです。ケニアと言えばアクティブな『野生動物のサファリ』という印象を受けますが、実はこのような『豊かな自然の海辺の村』を楽しむことができる環境があることも、ぜひ知って頂ければ幸いです。

 スレイブケイブスにて。鎖の後が残されています。