コミュニケーション   「りる」創刊号より

                                                    ケニア  Y.M.
                                                             昭和62年度3次隊
                                    理数科教師

                                                                

    私は1990年4月、ケニアより帰国し、5月に志度町のK株式会社に入社。現在は転勤して、同社の台湾現地法人で勤務している。
 ケニアと台湾は、文化、国民性、歴史的背景、政治情況などは、全く異っている。同様に、青年海外協力隊員と、企業の駐在員とでは、海外にいても立場が違う。その異なる経験をとおして「コミュニケーション」について述べてみたい。

 協力隊員は「現地の人達と生活を共にし、コミュニケーションをとりながら、技術移転をする」という目的をもっている。コミュニケーションによって、日本および日本人を理解してもらい、また、帰国隊員より途上国の情報が語られ、日本社会に波及してゆくことが、秘められた目的のようにも思う。

 隊員は、現地の人と同じものを食べ、同じ所に住むことなどで、社会の一構成員として認知される。それだからこそ、部外者には許されない伝統儀式へも参加できる。
 ここで重要なのは、価値観の違う人達とのコミュニケーションである。共通の価値観、文化的素地がないと、相互理解は非常に困難である。

 例えば「信号を守る」ことにしても、日本なら警官がいなくてもこれを守る。台湾ではそうではない。価値観はお互いに相容れない部分があるが、同時に存在することを、あるがままに受け入れることが大切である。
 ただし、途上国特有の時間観念に慣れすぎて、日本社会に再適応できなくなる人もいるので注意。

 企業の駐在員の場合、本社の命令で来ているため、早く日本へ帰りたがる人が多い。また、通訳がいるので語学が上達せず、現地の友人をつくる機会も少ない。従って、都会で閉鎖的な日本人村ができ、ゴルフ、酒と極めて画一的な娯楽を楽しむこととなる。

 この生活方式を否定はしないが、外に働きかけてコミュニケーションをとったほうが、もっと楽しく暮せるだろう。そして、コミュニケーションがうまくとれれば、もっと素敵な国民になれると思う。

 余暇の時間に生徒と将棋を指す