現地隊員レポート    「りる」第34号より

                                                    ヨルダン   K.W.
                                                             平成15年度1次隊
                                     音楽
                                                                

 「アッサラーム・アライクム」

 みなさま、こんにちは。お元気ですか?本誌登場2回目のK.W.です。私の活動も8ヵ月目に入りました。前回投稿させていただいた後に赴任先の大学が長期休暇に入り、最近になってまた始まったところです。この休暇を利用してヨルダン国内旅行に行きましたので、今回はヨルダン旅行記を書かせていただこうと思います。

 ヨルダンは、国土の8割を砂漠・又は土漠が占めており、北から南へとのびるデザート・ハイウェイの西側に主要都市は集まっています。北から南の端までも、バスで約6時間程度で行く事が出来るので、一週間あればヨルダンを周る事が出来ます。1月・2月がヨルダンで最も寒くなる時期で、北部高地の方では雪が積もる事もありますが、標高の低い場所では気温も高く、天候がよければ海で泳ぐ事も可能です。

 この前、雪が積もった時☆

 まず私が最初に訪れたのは、ヨルダンが唯一海に面している、南端に位置するアカバ。冬でも温暖な気候と美しい紅海に惹(ひ)かれ、国内外から多くの人の集まるヨルダン随一のリゾート地であります。ただし、ここはイスラム教徒の住むヨルダンという事をお忘れなく!

基本的に女性が人前で肌を見せる事はハラーム(いけない事)とされており、異教徒のいわゆる外国人であっても水着で海に入ろうものなら、皆の注目を浴びる事間違いなし。子供は水着になったとしても、女性は服を着たまま水の中に入ります。そのため水着で泳ぎたい人は、ホテルのプライベートビーチを利用する方がよいでしょう。それでも、ダイバーの憧れと言われる紅海の美しい珊瑚や熱帯魚は一見の価値ありです。

 次に私が訪れたのは、アカバからバスで1時間北東に走ったところにあるワディ・ラム。ここの説明を一言で言おうとすると「何もない。」本当に何もないのです。

一面に広がる砂漠と荒々しいほどの岩山。雲ひとつない青い空。シーンと音が聞こえそうなくらいの静けさ。アカバからここに来ると、また全く別のヨルダンを発見する事が出来ます。

荒々しく削り取られた岩山、滑らかな曲線を描く岩山。太陽のあたる具合によってピンクに見える赤砂と、岩山の地層。この全てが自然の力によって作られた風景で、どこまでも続く砂漠を見ていると、いかに自分がちっぽけな物かを思い知らされます。この素晴らしさを、うまく言葉で伝えきれない自分の語彙(ごい)力の狭さも感じてしまうほどです。

  ワディ・ラムの岩山

 このワディ・ラムの砂漠には、ベドウィンと呼ばれる遊牧民族が暮らしています。ヤギの毛を紡いで作られた家となるテント。財産である羊・ヤギ・ラクダを連れた、自然の中での生活。そんなベドウィンを訪れると、その自然に逆らわない生活方法にも感心させられるばかりでした。

 一度アカバに戻り、そこからバスで2時間北上し訪れたのがペトラ。紀元前6世紀ごろから古代ナバタイ人によって栄え、その後19世紀に探検家によって発見されるまで、現地の人に頑(かたく)なに守られ、外部から侵入されることのなかった都市。入り口からシークと呼ばれる深い岩の裂け目のような道を1.5km程歩いたところで、美しいバラ色のエルハズネ神殿がチラリと見えた、あの時の感動は言うまでもありません。

その他にもローマ円形劇場や王家の墓などがあり、全てを歩いて一日で周るのは大変ですが、観光客用のラクダやロバもいます。これらに乗って周ると、まさにアラビア体験といったところでしょうか。ここの遺跡が全て岩をくりぬいて造られた物という事実にも驚かされます。映画「インディ・ジョーンズ」の舞台ともなったこのペトラは、ユネスコの世界遺産の一つにも指定されています。

  ペトラのエルハズネ神殿

 そこから今度は車で2時間ほど北に走り、死海を訪れました。死海は、世界で最も海抜の低い位置にある湖で、塩分濃度が30%程もあるため、生物が住む事は出来ず、どんなカナヅチでも浮いてしまいます。季節によっては、その濃い塩分が岩塩となって美しい結晶をかたどっている様子を見る事も出来ます。

この死海の天然塩や泥が日本で売られているのを見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。これらは天然のミネラルをたっぷりと含み、美容に良いとされているため、私もここぞとばかりに塩を拾い、泥を全身に塗りたくってきました。この塩分濃度の高さは、水を舐めてみると、「しょっばい」というより、「苦い」と感じるほどでした。この死海での浮遊は、実際に体験してみないとなかなか分かりづらいものかもしれません。海に入り、足を上げると体が自然に浮いて、本当に不思議な感覚です。死海の対岸にある、イスラエルに沈む夕日もとても印象的でした。

 死海の岩について固まった塩

 そして最後に訪れたのは、アンマンより北にバスで1時間の所にあるジェラシュ。かつて、ローマ帝国が栄えた紀元前後に造られたローマ遺跡が、美しい状態で残っている場所です。ハアザミの葉の彫刻が施された建築物、地下水路の上に敷き詰められた長い石畳、劇場や競馬場、教会や浴場、整備された街並みの様子からはローマ帝国の繁栄が感じられます。二千年たった今もなお、当時の劇場を利用して毎年音楽祭が行われており、連夜満員になります。ここアラブにあるローマ帝国の遺跡を見て、この国の様々な歴史を思い浮かばされました。

  ジェラシュ、北のローマ劇場の上からの景色

 以上が今回の私の旅です。今ヨルダンでは季節は冬ですが、雨季という事もあり、様々な場所で草花を見る事が出来ます。雪が積もる事もあるこの時期に、緑が増えていく様を見る事は、日本人の私にとってとても不思議な感じですが、「水があるから緑も生える」と、とても自然の摂理に適(かな)った事のようにも思います。夏の間、はげ山しか見る事の無かった場所に、緑が生えたそのすがすがしさ。人にとって水や緑が、いかに重要な物であるか身をもって感じる事が出来ました。これから春に向けて暖かくなり、もっとたくさんの緑が生えそろうのが楽しみです。