現地隊員レポート             「りる」第50号より 

                                                    インドネシア  S.O.
                                                             平成19年度2次隊
                                         栄養士
    

 

『インドネシア便り』
平成19年度2次隊 インドネシアで栄養士として活動しています、大谷幸奈です。JICA四国、香川県青年海外協力隊を育てる会の皆様いつもご支援ありがとうございます。

 私は、インドネシアに派遣されて、早1年5ヶ月が経ち、活動も終盤に差し掛かっている?ところです。まずは、私の任地をご紹介します。任地は、南スラウェシ州(アルファベットのKの形をしたスラウェシ島の南部)の州都マカッサルから車で約2時間のジェネポント県という所です。面積749.8Km2、人口330,735人で面積の割り合いに対し比較的人口が多く、幹線道路沿いには家が建ち並んでいます。

 宗教は99%がイスラム教で、残りの1%はキリスト教となっています。南スラウェシ州で主に使われている言葉はブギス人が使うブギス語とマカッサル人が使うマカッサル語です。ジェネポントでは、マカッサル語を使用しています。インドネシアではインドネシア語が共通語ですが、村ではインドネシア語は使わずマカッサル語がほとんどです。

 南スラウェシの家は高床式の木造住居で屋根はトタンが一般的です。また、天井は無くビニールシートを張っている家もよく見られます。家は木で出来ているため軽いので、男性達が担いで家を移動させるという光景を見ることもあります。やはり、高床式なので風通しがよく涼しいですが、家の中で人が歩くとグラグラ家が揺れるのが難点です。住んでいる住民は家が揺れることは普通のことですが、私は揺れるのが苦手で長くいると酔いそうになってしまいます・・・

                 高床式の住宅

 もちろん、高床式の木造住宅ではないレンガを積み上げた住居もありますが、やはり村では高床式の住居がほとんどです。

 住民の多くは農業か漁業または海藻の養殖をおこなっています。田んぼや畑では、とうもろこしや米、もち米、唐辛子、赤たまねぎ、にんにくなど様々な作物を育てており、海では漁師が魚を取ったり海藻を養殖したりしています。海の近くの村に行くと、海藻を天日干ししており、内陸の村ではとうもろこしや米を天日干ししている光景を見ることができます。

             とうもろこし畑と、とうもろこし

海藻は乾燥させた後、州都マカッサルに持って行き、ゼリーの材料に加工されます。とうもろこしは、先進国の家畜の餌にするため輸出されています。家畜の餌も、機械など無いので乾燥させるのも房から実を取るのも、人が一つ一つ手間をかけて作っています。その餌を食べた家畜を、私たち先進国の人々は食べています。

 また、ジェネポントの一部の海沿いの町では塩を作っており、乾季になると海岸線に塩の山をすごく綺麗に見ることが出来ます。雨季になると塩は作れないので、同じ場所で魚を養殖しています。

             塩田と道沿いの塩販売所

 そして、ジェネポントの名物として忘れてはいけないのが馬です。町にも馬の像がドーンっと建っており、県のマークも馬がモチーフになっています。また、南スラウェシ名物のチョトマカッサルという牛肉と内臓の濃厚な煮込みスープがあるのですが、ジェネポントでは牛肉ではなく馬肉を使用しており、名前もチョトクダ(クダは馬という意味)として食堂で食べられます。一杯13,000Rp(約130円)。


町の中心にある馬の像

チョトクダ(馬肉と馬の内臓の煮込みスープ)

 私の任地南スラウェシ州ジェネポント県のことについては、お分かり頂けたと思います。ここからは、私の活動についてご紹介いたします。私の配属先は ※1県保健衛生事務所の家族保健課というところで、栄養士、助産師が所属しています。所属は県保健衛生事務所ですが、実際の活動はプスケスマスという所で行っています。※2プスケスマスには、医師・歯科医師・看護師・助産師・栄養士・予防接種担当者・薬剤師・検査技師等が働いており、日本でいう診療所と保健所の機能を合わせ持ったところです。

病院は?と思われる方もいると思いますが、病院は県に1ヶ所しかなくプスケスマスで治療できないような重病患者を病院に運ぶという形を取っています。

 お金の無い住民は病気になるとプスケスマスや※3プストゥ(プスケスマス支所)に行くのが一般的です。日本の保険証のようなものがあり、それを持っていると医療費・薬代が無料になるためです。

 私の活動は、プスケスマスの栄養士(女性)と予防接種担当者(男性)と一緒に毎日※4ポシアンドゥ(医療サービススポット)を巡回し、乳児や幼児(0歳から5歳まで)の体重測定や、村の助産師と妊婦さんの検診を行なったり、母親達に栄養指導を行なったりしています。

 私はインドネシアに来る前、村では食べ物が無くて栄養失調児が沢山いると覚悟をしていましたが、実際1年ちょっと村で活動してきて、本当に貧しくてご飯が食べられないために栄養失調になっている子供は、ほとんどいません。母親の食べさせ方や食事の内容に問題があると感じています。

 その一つとして挙げられるのが、スナックの与えすぎです。インドネシアの村にはキオスという日曜雑貨やお菓子などを売る店が沢山あり、そこでお母さんやおばあちゃんが子供が泣きやまないので、スナックを買い与えるのです。朝からお菓子を、食べながらポシアンドゥに体重測定に来る光景をよく見ます。なのにお母さんは子供がご飯を食べないからビタミンを頂戴と言ってくるのです。ビタミンを与えれば、ご飯を食べてくれると思ているようです。なので、よく私はお母さん達にビタミンと野菜は同じものだよと言います。また、ご飯を食べさせてからお菓子を与えてねと言うのですが、なかなか直すことは難しいようです。

 お菓子を持ってポシアンドゥに来た子供

 そして、気になるのが虫歯の子供と爪の中が真っ黒の子供が多いということです。虫歯になってしまうと食欲が無くなってしまいますし、爪が真っ黒でそのまま口に入れてしまうと下痢や寄生虫が住み着く原因になってしまいます。栄養と切り離して考えることのできない問題です。

 保健所栄養士の提案で、ポシアンドゥに体重を測定しに来た子供の爪を切るというデモンストレーションを始めました。母親に爪切る大切さを知ってもらえたらなと思っています。

 子供の爪を切っているところ

 4月には、ポシアンドウで6ヶ月から12ヶ月の子供をもつ母親に栄養教室を開いて、母親に正しい食事の指導(離乳食デモンストレーション)と歯磨き指導を行う予定です。

 次回、この活動の報告ができたらと思っています。


カデールさんが子供の体重を量っているところ

プスケスマス

ポシアンドゥ

以上

※1 県保健衛生事務所(ディナス ケセハタン)
  県の医療保健行政の中核を担っている。プスケスマスでの書類を集めて州へ報告したり、州からの情報をプスケスマスのスタッフへの情報提供が主な仕事。

※2 プスケスマス
  保健所と診療所の機能を合わせ持つ。郡に1ヶ所ないし2ケ所。

※3 プストゥ
  保健所支所。プスケスマスに遠く、住民がプスケスマスに来られない村に1ヶ所。助産師や看護師が常駐。

※4 ポシアンドゥ
  医療サービススポット。村に1ヶ所。医療ボランティアの※5カデールの家の軒下など。1つのポシアンドゥには約5人のカデールが所属している。

※5 カデール
  医療ボランティア。村のお母さん達。時々、おじさんもいる。完全なるボランティアではないが、ほとんどお金はもらえない。