べーケッシュチャバより    「りる」第20号より

                                                    ハンガリー  U.H
                                                             平成10年度2次隊
                                       野球
                                                                

        

  今、ゆっくりと昼食後のティータイムを過ごしながら、この原稿を書いています。ハンガリーに来て早くも三ヶ月が経ち、この間に何があっただろうかと振り返っています。
  首都ブダペスト王宮の丘

 私は現在、首都ブダペストより東南へ約二百キロ離れたべーケッシュチャバ(人口約六万人)という町に赴任しています。ハンガリーは三月の訪れと共にようやく、少しずつですが暖かくなってきました。十二、一、二月と寒い日が続き、よく雪が降りました。チームのメンバーたちも「今年はいつもに比べて寒い」と言っています。寒い日にはマイナス十五度にもなるそうで、マフラーと手袋と耳あては必須アイテムです。

ハンガリー東部には、広大なハンガリー大平原が広がっています。このハンガリー大平原に二月十一、十二日に大雪が降りました。多い所で約70cm、私の町は約20cm程度でした。この大雪のせいでハンガリー大平原の交通網は寸断され、食料品の配送ができず、軍のヘリコプターが出動して空から食料をばらまいたそうです。私はそんなことになっているとも露知らず、「また今日も雪か」と思った程度でした。そうです、私のアパートには、テレビが一応はあるのですが、年齢30歳(30年前のテレビで白黒、及びスイッチを押してから10分待たないと画面が映りません。)なので普段は全然見ません。

だからまわりの人から聞く以外は何が起こっているか分かりませんでした。またこの雪のせいで川は増水し、また雪溶けの水でハンガリー大平原は至る所で、水浸しとなり湖のように広がりかなりの被害を被(こうむ)りました。この光景は、私も2月末に首都ブダペストヘ向かう列車の中で何カ所も目撃しました。

さてこの降雪直後の2月13、14日と私は恥ずかしながら、チームのメンバー達とのん気に雪合戦とそり遊びをしていました。日本では雪に慣れていない為に十分に楽しむことができました。特にそり遊びは初めての経験だったのでスリル満点で楽しかったです。そり遊びは、山がない為に近くの村の川まで車で出かけ、堤防を利用してのものでした。

 さてさて話がかなり横道に逃れましたが、この辺で、私の本来の業務である野球について話を進めて行きたいと思います。配属先はハンガリー体育スポーツ局野球連盟です。ハンガリー東部地域の担当として、今この町でコーチを務めています。現在ハンガリーの野球連盟は1部から3部までの約30チームで構成されており、私の赴任しているチームは2部リーグ東部地域に所属しており、チームは20歳から30歳位までの学生、社会人約15名で構成されています。

  観光都市ショプロンの町並

その運営は、スポンサー費用によって運営されています。現在、市、銀行、地元企業などがスポンサーとなっていますが、その数は少なく十分な費用を賄(まかな)うことができず、チームには、ユニホームのパンツとスパイクはありません。活動状況は、11月から3月中旬までは、室内で、3月下旬から10月いっぱいまでグラウンドで行います。今年の2部リーグ戦は、4月18日より週末を利用して始まり、年間約20試合程度をこなす予定です。

私は1月22日に赴任して来ましたがチームのみんなは快く受け入れてくれました。自分も選手として試合に参加することができるのでみんなと一緒になって汗を流しています。さて室内での活動ですが、これが思うような、練習をすることが出来ません。というのも、小学校の体育館を利用しての練習ですが、週2回しか行えず、体育館と言っても日本の小学校の教室一部屋分しかありません。この為冬場は体を鈍らせない程度の練習です。軽いランニング、ストレッチ、跳パワートレーニング、メディシンボールトレーニング、ティーバッティング程度です。

ティーバッティングは、室内でボールが使えず、ネットもないので、新聞紙を丸めてテープを巻いてボールを作って、壁に向かって打っています。日本人は単調な練習でもまじめに取り組みますが、彼らは飽きやすいのでチームを2つに別けて、ゲームを取り入れるなど工夫しなければいけません。まだグラウンドでの練習が少ししかしていませんが、バッティングに関しては、レギュラー選手のレベルはかなり高くなってきています。パワーもあり、肩、脚力も高いので、後は小さな技術を覚えていくだけです。一つ問題はグラウンドの状態が悪く、内、外野共に凹凸が激しく、かなりの手人れが必要です。冬の間にグラウンドは荒らされ、外野には、ボールー個分埋まってしまう程の穴がたくさん出来ており、現在整備を始めたばかりです。

 現在、やっと冬が終わったばかりで十分な練習が出来ていませんが、4月からは毎日練習します。6月には、ブルガリアに遠征の予定(?)で選手達は楽しみにしています。「夏場は日が暮れるのが遅く、夜8時半頃に日が暮れて、日暮れまで練習する(?)」と彼らは言っています。自分自身、これからグラウンドでの指導、練習が楽しみです。



  体育館での選手たち(後列中央筆者)

 今、チームの2人の選手が、家庭教師として、3月からハンガリー語を教えてくれています。そうです、東京での訓練から約半年が経ちましたが、まだまだ上手に話すことが出来ず、指導もジェスチャー中心になって理論を話すことが出来ません。メンバーと話をしても彼らの言っていることの約3割程度しか理解出来ません。

 まだ隊員活動は初まったばかりです。試行錯誤を繰り返しながら、やっていきたいと思います。次回報告は、少しは成長した自分と活動状況について報告したいと思います。それでは、またの報告を楽しみにして下さい。