ガーナにて 「りる」第25号より
ガーナ S.I.
平成10年度2次隊
理数科教師
昨年、着任して半年ほど過ぎた頃に学校の紹介、赴任して感じたこと、学校の問題点などを書き、「りる」に投稿しました。今では日常となってしまった色々な出来事、習慣が当初は、まだもの珍しく、新鮮な気もちでいたことを思い出します。さて、今回逆に帰国まで半年となり、さらに報告より1年、文章の組み立てでいうと起承転結の「承転」のあたりをガーナで過したことになります。この一年何をして、何を感じたのか、思い返しながら、この報告を書いてみようかと思っています。
1、今学期は楽しかった
ガーナは日本と同じように3学期制です。1月に1学期が始まり、5月より2学期、9月より3学期となっており(2001年より9月スタートに変更)昨年の3月に活動を開始して今学期(2学期)は、1年を過ぎたころになります。
私の要領が悪いのか、努力が足りないのか、最初の一年は(1年も!)憤れない日々で明日は何をしたらよいのか、どうやって授業を組み立てようか、どうやって英語で説明しようかずっと悩んできたように思います。(ちなみに数学担当)「教員免許はあっても、教職経験はなし」の私がいきなり教壇に立つわけですから、これは予想されたことでもあります。「明日も学校かぁー。はぁー・・・。あっ、明日の準備何もしてない!予習しなくっちゃー。」と用意をはじめるが「あれー、採点も残ってるよー。」とバタバタバタ・・・。自転車操業のような日々をくり返したころもありました。
「教壇に立ちたくないなあー。」とうつうつ夜を過したこともあれば、うまく授業ができた日は、「1年くらい延長してもいいかな」と大きな気もちになったりと、日々、気持ちの変化が激しいころもありました。
しかし、一年が過ぎ、やっと慣れてきて、いい意味で手の抜き方も覚えたし、3年生を受けもつようになって生徒が卒業試験(とても重要な全国規模の試験)にパスできるようにがんばろうと目標ができたこともあって、今学期は楽しく充実した学期が送れました。
2、パソコン出張講義
ガーナのシステムエンジニア、電子機器などの隊員が集まって組織しているエレクトロニクス分科会が年に数回、高校や職業訓練校でパソコンについて講義するという企画があります。今回、私の学校にもぜひと思い、6月12,13日出張してくれることになりました。
学校には、タイプライターが一台あるのみで、生徒はコンピューターをみたこと、まして言葉の概念さえ十分にわかっていなかったと思います。
パソコン講義講義は「パソコンとは何か」「ワープロのデモンストレーション」「デジタルカメラのデモンストレーション」という内容で、最後は生徒ひとりひとりがコンピューターにさわり、自分の名前をタイピングしました。
普段、数学が得意でない子がほんとに興味深そうに、ちょっとはにかみながら、でも満面の笑みで(どんな笑顔?)でコンピューターに向かっていた姿がとても印象的でした。あの笑顔は何ものにも代えられないものです。みなさんに見せてあげられないのが残念です。
この講義で、生徒たちがコンピューターを理解したとは思わないし、それが目的ではありません。これをきっかけに「技術」に興味をもってもらいたいし、将来、進路あるいは仕事を決めるときに「あのときパソコンに、さわったな」「もっと勉強したいな」と思ってもらえればうれしいです
3、数学のクイズ大会
ラジオ番組で高校生のクイズ大会があるなど、ガーナでクイズ大会は人気があり、エンターテイメントの1つです。そこで数学のクイズ大会を企画し、2年生を対象に行ってみることにしました。やり方は色々ありますが、今回クラスを3つのグループに分け、グループの代表者6名を選びました。ある生徒に対して問題をクイズマスターと呼ばれる人(だれでもよい。陽気な人なら盛り上がる。)が出題し、30秒以内に答えます。(3点)答えられないと次の人に解答権が移ります。この場合、正解なら1点。
数学クイズ大会
このようにして最終的に各グループの合計点を競います。他の生徒たちは見ているだけではありません。だれも答えられないと観客も答えられるので、代表者と同じように解答を考えています。自分たちのグループが解答したときはもちろんすばやい解答や難しい問題を答えると生徒たちの間から歓声が上がります。この日のために100問ほど、数学の問題を考えましたが、当日、生徒たちも盛り上がり、好評を得ました。
クイズ大会は、数学に限らず、一般知識、英語、理科など、いろんな分野で開かれています。
4、マンパワーとしての活動
これまで、学校内の一教師としての活動しかしていません。マンパワーです。(代用教員とも言えるかも)教師隊員(理数科以外も含めて)の活動は「技術移転」は難しいし、即時の結果は得られにくいです。しかし現実問題として教師が不足していて、勉強を望む生徒が目の前にいる以上、ただ見ているだけにはいきません。
個々のJOCVの活動は、もちろんピースコー(APC:アメリカ平和部隊)やVSO(イギリス海外ボランタリー・サービス)を含めてほんとうに小さな小さな活動だし、しかし、それを確実に行うことが、この国を支える土台となると思います。教育は長く時間のかかるものだけれども、私たちの教え子が、この国を支える役割を担うようになると考えるとなんともワクワクすることではないだろうか。