現地隊員レポート 「りる」第86号より
ガボン A.K.
令和元年度2次隊
コミュニティ開発
「ガボンでの活動について」
ガボン共和国は赤道直下に位置し、ギニア湾に面した熱帯の国です。一年のほとんどが雨期であり、その降雨の恩恵を受けた国土の85%が森林で覆われています。森から切り出される木材の輸出はガボンの主要産業の一つですが、森林はカバやマナティ、ゾウ、ゴリラなどの希少動物の住処でもあります。
また、ガボンはOPECの加盟国であり、原油の輸出によりサブサハラ・アフリカの中では比較的発展しています。そのため近隣諸国や中東、中国からの移民も多く居住しています。私は現在首都リーブルヴイルにある零細漁業センターに配属されています。同センターは日本の無償資金協力により建設された行政機関であり、ピローグと呼ばれる小さな船を使った漁師たちの水揚げ場であるとともに、水揚げされた鮮魚等を仲買人たちが販売する市場でもあります。タイやボラなど瀬戸内海でも見かける魚もよく水揚げされますが、日本のように多種多様な水産物を高鮮度で手に入れられる環境は十分整っておらず、日本のコールドチェーンが高い技術と漁業関係者の努力に支えられていることに気が付かされます。
配属当初から見られた課題の一つとして、魚商人の女性たちが市場に連れてくる子どもたちの安全確保と女性たちの負担軽減がありました。かつて日本でも見られた光景ですが、乳児を抱えた女性たちは一日中子どもを抱えつつ、授乳しながら仕事をしなければなりません。また歩けるようになった児童は親の目を離れて市場内を走り回り、ハイハイができる幼児は魚の汚れがついた床の上を這っていました。
自動車や荷車が走り回る市場では事故の危険性がある上、汚れた手やゴミを口に運ぶこともあるため衛生的にも問題があります。別の市場では児童が海に転落して亡くなる事故も発生しており、私の配属先でも不幸な事故が起こってしまう前に対策が必要でした。そこでレストランとして利用されている建物の一室を利用して保育所の開設を企画しました。開設にあたっては隊員の活動経費を利用して机椅子等を購入するとともに、香川県青年海外協力隊を育てる会からも玩具の寄付をいただきました。さらに、こういった支援が呼び水となって所属先もマットレス等を自前で準備し、職員たちとも協力して保育所の飾り付けを行いました。
今後の継続的な保育所の運営には引き続き所属長の監督が不可欠な状態ではありますが、子どもたちの安全確保がなされ、さらには幼児教育も積極的に提供され、女性たちが安心して働く環境を整備することができました。育てる会の皆さんには、この場を借りて感謝申し上げます。