本場コロンビアコーヒーの味とは?  「りる」第19号より

     コロンビア          M.M.

                     平成8年度3次隊

                     経済

  日本人の生活習慣に定着し、多くの人々に親しまれているコーヒーですが、戦争の影響で一九四四(昭和一九)年に輸入停止となった後、再びコーヒーを日本で楽しめるようになったのは、その六年後、コロンビアからの輸入に始まるそうです。

 そして、日本は今や世界第三位にランクされる消費国になり、一人当り年間に三〇〇杯近くも飲んでいることになります。片や、当地コロンビア共和国はブラジルに次ぐ世界第二位の生産国になりました。

 生産地域は、気候・土壌ともにコーヒー栽培に理想的な条件を備えたアンデス山系の傾斜地に広がっています。そのため、コーヒー園のほとんどが山斜面の森の中に隠れており、機械化された大規模のプランテーションは成り立たず、それを陰で支えているのは零細な労働力なのです。

 つまり、見渡す限りの広々としたコーヒー園が遥かかなたまで続くブラジルのように、よく熟したものもまだ青いものも一緒くたに枝ごとしごいて機械で収穫するのではなく、赤く熟れた実だけを人の手で選り分けて摘むのです。これこそが、コロンビアコーヒーの味の真髄であり、その高い品質の秘密なのです。

ところが、実はここで飲む”Tinto”(本来は赤ワインの意なのですがコロンビアではコーヒーがカップに入って供されるのをそう言います)は、お世辞にも美味しいとは言えません。というのも、高級品はすべて輸出にまわされ、国内に残るのはあまりよくない豆ばかりとか。名だたる生産国よりも日本のほうが、おいしいコーヒーを味わえるというこの矛盾。コーヒー輸出に依存するモノカルチャーの悲哀が、こんなところに見え隠れするのです。

  国立コーヒー公園

 コロンビアにコーヒーが持ち込まれたのは一七三二年とのこと。その後一九世紀末には商業的栽培が始められるに伴って、急速に拡大し、この国の経済を支える主要輸出品となりました。そして現在ではアンティオキア州、カルダス州、トリマ州の3州が主産地となっています。

 さて、そんなコロンビアコーヒーをもっとよく知るために是非一度は訪れたいのが、キンディオ州モンテネグロにある「国立コーヒー公園」です。園内には、資料館や園内をコーヒーの木を沿道に配した4kmも及ぶ散策コースなどがあり、多くの観光客を集めています。

 その中でも展示品類は興味深く、”まさにこの国の鷹揚とした雰囲気そのもの”が滲’にじ)み出ている気がしました。他方、それに混じってぽつんと置かれた日本の機能的なコーヒー自動販売機の居心地の悪そうな風情がなんとも印象的でした。

 さて、最後に”良いコーヒーの条件”をご紹介しましょう。それはスペイン語でコーヒーを意味する”CAFE”のローマ字四文字をあしらってcalgente(熱い)、amargo(苦い)、もしくはacido(酸味のある)、fuerte(強い)、espeso(濃い)なのだそうですが、ラテンアメリカの情熱的、擬人的な心憎い表現によれば、良いカフェーとは「夜のように黒く、愛のように熱く、接吻のように快く、恋する乙女の唇のように甘い」ものだそうです。