青海湖探訪         「りる」第6号より

     中国          Y.T.

                     平成4年1次隊

                     日本語教師

 

 『青い海の湖』これを聞いた人は誰しも素晴らしい風景を想像することでしょう。確かに、この世のものとは思えぬ、まるで天国のような光景がここにあります。

 


 去る六月末、私は中国青海省西(うかんむりに丁)の西部に横たわる”青海湖”を訪れてきました。”青海湖”は海抜三千メートルの高原に広がる中国最大の塩湖です。面積は琵琶湖の約三倍、周囲九百キロメートルといいますから、相当なものです。

ただでさえ交通の不便な中国、ましてや青海湖周辺には鉄道はもちろん、バスすらも一日数台というあり様。青海湖を見ようと思えば個人的に車をチャーターするしかありません。

 

青海湖一泊二日の旅は西(うかんむりに丁)市で働く同じ協力隊員の木元さんの会社に車を手配してもらうことから始まりました。しかし残念ながら初日は大雨、走っても走っても空にはどす黒い雲が何層にもおおっています。

西(うかんむりに丁)から約一時間、やっと右手に青海湖が見えてきましたが、やはり鉛色の水、あたかも私が訪れたことを拒んでいるようでした。しかし、車はさらに湖岸の道を西へ西へと進んでいきます。

 

午後三時頃、ようやく空が切れ、一筋の光線がさしてきました。不思議なことに、今まで鉛色の幕に覆われていた青海湖は一瞬にして、青々とした湖に変化するではありませんか。まるで白黒の世界からカラーの世界ヘトリップした様です。

青々と水をたたえる湖、その向こうには、夏であるにもかかわらず頂上に雪をいただく山々、湖岸一面に咲き乱れる菜の花、そこに点々と散在する羊やヤクの群れ、皆さん想像していただけますでしょうか、この彩色の風景を!私も三十年の人生でこんな素晴らしい景色を見たことはありません。皆さんに視覚的に伝えられないのが残念です。

 

   琵琶湖の三倍もある中国最大の塩湖(青海湖)

 

  青海湖畔にて



 午後四時すぎ、車は青海湖南西にある茶(峠の字の右側)塩湖に到着。ここは名前の通り塩分が多く湖面は真白、湖畔に製塩工場が寂しくポツンと建っています。実はこの地域、外国人未開放地区ですが、ドライバーさんの配慮でくることができました。

 二日目、朝起床すると絶好の晴天。昨日とは比較にならない、口で言い表すことの出来ない風景が一面に広がっていました。

 今日のメインは”鳥島”
 ここには無数の渡り鳥が飛来してくるとのこと。胸をワクワクさせながら一路、鳥島へむかいました。島といっても砂洲により陸つづきになっています。島の入口でチェックを受けたあと、車をおりて徒歩で島へ。

ここ一帯、青海省の自然保護区に指定されているため、管理も厳しい。私は、島中央に建てられた半地下式ドームに入り、その窓から島をながめるといった具合です。

 

窓から見える風景も、またこの世のものかと疑うほど異様なものでした。一面真っ白のジュータンでも敷きつめたかのような鳥(カモメ類)鳥・鳥。思わずヒチコックの映画の島を思い出してしまいました。

 帰途についた車の中で私は、「天国ってこんな光景かな?」と眠気のおそってきた頭でぼんやりと考えました。

 まだ外国人には知られていない青海湖の美しさ。もし機会があれば、ぜひ皆さんも訪れてみては・・・。