現地隊員レポート 「りる」第57号より
ブルキナファソ N.N.
平成22年度2次隊
青少年活動
『ストリートに生きる子ども達』
前回、「りる」に原稿を載せさせてもらった時は一回目ということもありブルキナファソについて浅く広く読者の方々に紹介しました。今回は私の活動のメインであるストリートチルドレンについて書いていこうと思います。
○路上で寝る子ども達
想像してみてください、もし自分が子どもだった時、自分の親がいなければ?親がいても学校に行けず日々の暮らしの為に働かなければならないとしたら?また、親からの虐待に耐え切れず家から出なければならないとしたら?日本だったらまず親がいなければ施設に入るでしょうし、親戚の家に引き取られるかも知れません。親には子どもを学校に行かせる義務があるので学校に行かせず働かせていたら捕まるでしょう。日本で虐待にあった子どもは施設で保護されたり保護者に指導がはいったりします。多分ひどい虐待に耐えかねて家を飛び出し路上で生活しているような人はいないのではないでしょうか。このように日本では親がいなくても、学校に行かせてもらえなくても、虐待をされても、社会がセーフティーネットを引いてくれているので大抵の子どもが路上で暮らすようなことはありません。
でもブルキナファソのストリートチルドレンは首都だけで2000人以上もいます。彼らは夜は路上で寝泊りします。熱くても寒くても雨が降っていても外です。病気になってもお粥を作ってくれたり、ヨーグルトを買ってきてくれる優しい家族もいません。もちろん布団なんてありません。普段の日本の生活では考える事も難しい子ども達、ストリートチルドレンが世界には確かにいるという事を感じてもらえたらと思います。
○今日を生きる為にどうやってお金を稼ぐ?
彼らは路上という劣悪な環境の中どうやってお金を稼いでいるのでしょうか?一つは道行く人々に物乞いをします。信号待ちしている車に、歩いている人に、レストランでご飯を食べている人に、白人に黒人に、色んな人々にお願いしているのです。つぶらな瞳で口に手をやり食べるポーズをしながら「僕は食べていない、お腹が減っている、食べ物」という事をアピールします。これは日によって稼ぎが変わってくるのですが、50FCFA(5FCFA=1円)の時もあれば食べ残しのご飯だったり、子どもによっては白人にお願いしたときに10000FCFA(セファフラン)も手に入れる場合もあるようです。ご飯は一食150FCFA〜で食べれるし、公務員の月給平均15万FCFAで警備員が3万FCFAなのを考えたらかなりの額です。
子ども以外でも障がいをもっている人などはその障がいを逆に生かして物乞いをするので貰える割合も他の人より多かったりします。耳が聞こえない人が楽器を奏でたり、歌を唄ったり、目が見えないおじいさんを子どもが先導していたり、赤ちゃんを3人も背負ったお母さんや、交差点の木陰で家族でグッタリしながら物乞いする人など様々な種類の物乞いがいます。
子ども達は物乞い以外にも鉄や銅を集めて売ることもあります。ジュースの缶、コードのゴム部分を剥いだ中の銅線、釘、針金など集めた鉄や銅は1s500FCFA程で売れます。
他にも自転車屋、タバコ売り、屋台のウェイターなどなどちょっとした仕事をして一日500FCFA程を稼いだりします。
良くない事ではありますが盗みを働く子どももいます。私が働いている施設にいる子どものほとんども何かしら盗んだ経験があります。自転車や携帯など盗んだものは市場で売られます。子どもの中には自分の教科書やボールペンなどの勉強道具を全部売って、どこかに消えてしまった子もいます。盗んでるのがもし見つかったらボコボコに殴られます、鞭で背中を打たれたり、刑務所に入れられる場合もあります。とはいっても彼らは悪いと解っていてもそれをしなければ生きていけないのです。他に選択することができないのです。
丸一日働いて500FCFA、物乞いをしていてもお金が手に入らない日もある、お腹が減る、その中で盗むという行為は彼らが生きるための一番手っ取り早い方法になっているのかもしれません。
○教育を受けられない子ども達
ストリートチルドレンは大抵が教育を満足に受けていません。ブルキナファソ場合は田舎だと家で暮らしていたとしても家の手伝いがあったり稼いだりしなければならないので教育を受けていない子もまだまだ多いのです。学校に行かないとどうなるのか?まず簡単な計算が出来ません。2×5=7なんて言う10代も半ばの子どももざらにいます。
またフランス語はもちろん自分の部族の言葉も満足に読み書き出来なかったりします。私が子ども達と関わる時にはフランス語の出来る子どもに通訳を頼んで出来ない子と話をしたりします。
順番を守ったり、皆でまとまって動いたり、話しを聞いたりといった集団行動も苦手で、ケンカも日常茶飯事、でも不思議な事に仲間意識はとても高いのです。例えば誰かがタバコを吸っていたり、物を盗んだとしても周りの子ども達は「チクル」ということをせず、逆にあいつは何もしていないと仲間を庇ったりもします。一度子どもの一人が施設で盗みを働いて全員が晩御飯抜きにされた時もその子どもに対して不満を言った子は一人もおらず先生に食ってかかる子ばかりでした。
朝はコブシとコブシをぶつけあってその場にいる全員と挨拶をします、これは見ていて気持ちが良いものです。
○子ども達の娯楽
ブルキナファソで一番人気はサッカーです。サッカーをしている時の子ども達は本当に活き活きとしていて楽しそうです。他にもちょっとしたボードゲームやトランプ、また、ダンスや映画等は好きです。特にアクション映画は人気で日本人の私に中国人俳優についてよく質問してきます。
でも路上に住む彼らはこれら以外にタバコやドラッグ、シンナーなどにも手を出してしまいます。ビニールにボンド等を詰めて100FCFAで普通に売っています。これを吸引するとフラフラになって気持ちよくなり辛い事などを考えなくなり空腹もなくなるそうです。特に夜と土日は空腹を紛らわすために10才に満たない子どもも吸っています。
たまに子どもがフラフラで目が据わった状態でシンナーを吸いながら施設に入ってきて、堂々と盗みをする時があります。その時の目は本当に恐ろしく、変な話ナイフを持っていたら人を刺すのではないかと思うほどでした。もちろんシンナーやドラッグは良くない物ですし、そんなことは子ども達も知っています。
ですが彼らの置かれている現実は本当につらいものがありすぎます、実の親に捨てられ、もしくは虐待され、人からの愛を感じる事が出来ず、毎日の食べ物も満足に確保できないこんな状況を忘れるために子ども達は薬に手を出します。そんな子どもの状況を利用して金儲けをしようとしている大人がいることに憤りを感じます。
○ブルキナファソを通して日本を振り返る
ブルキナファソで暮らしていて逆に日本の事を考えることはよくあります。一つ子ども達の劣悪な状況を考えていて思ったことがあります。こんなに悪い環境に住んでいて自分で命を絶とうとはしないのだろうか?日本では自殺が一つの社会問題になっています、ですがここブルキナでは自殺があるなんてほとんど聞いたことがありません。ストリートチルドレンやブルキナファソ人の生活を見ているとブルキナファソよりも日本の方が生きていく希望が持てる(物や制度の面で)と思うのですが、それと自分で命を絶つかどうかは別問題なのかもしれません。日本人はもう駄目だと思ったら自殺という手段が一つの選択肢にあるが、ブルキナファソではそんなものはなく、犯罪を犯してでも、路上で暮らそうが何しようがとにかく生きる。ある意味そこにブルキナファソの強さ、日本の弱さを感じるのです。
以上ブルキナのストリートチルドレンの現状を書いてきて、読み返してみるとあまり楽しい内容でないことに申し訳なく思います。もちろん良い部分に光を当てることも出来ましたがそれは多分他の方が書いてくれていると思いましたので、今回はこんな内容で・・・。次に書く機会がありましたらブルキナのストリートチルドレンがどのように支援されて路上生活から抜けていくのかを書きたいと思います。