ブルガリアでの日々(T) 「りる」第17号より
ブルガリア S.I.
平成9年度2次隊
日本語教師
ブルガリアに着いたのは12月初旬、寒い寒いとは聞いていたけれど、一面雪で真っ白なブルガリアは大変美しく、寒さよりもその美しさが私のブルガリア第一印象でした。そんな雪の上で昼寝をする野良犬たち。何故かブルガリアには野良犬が多く、しかも中にはドーベルマンやシェパードもいて驚きです。3〜6匹の友達同志で散歩をしている姿は微笑(ほほえ)ましいけれど、犬を愛する国民性あってのこと、犬が苦手な人には恐怖の国かもしれません。
大学の時計台 鐘が鳴って素敵です。手前の犬は死んでいるのではなく昼寝中。
犬と同様、ブルガリアの人々もまた、当り前のように毛皮を着ていて、なんだか大変ゴージャスに見えます。というよりは毛皮を着ないとやってられない寒さ、けれども3月に入って比較的暖かい日が続き、雪はすっかり溶けてしまいました。パザールと呼ばれる市場でも、以前は雪をかぶり半分凍って売られていた野菜は姿を消し、それなりに品数も増え、活気づいてきました。野菜は日本と同じものも多く、時々「中国の豆・キャベツ」と呼ばれているもやし・白菜も見かけます。
ブルガリア語で「はい」は「ダ」、「いいえ」は「ネ」と言いますが、首のふり方が日本と逆で、横にふると「はい」縦にうなずくと「いいえ」の意味になります。これが未だに私を混乱させるジェスチャーの一つで、買い物先で「〜はありますか?」と聞くと店の人は皆首を横にふる、ああ、ないのかーと思って帰ろうとすると無言でその品を手に持っていたりします。私の住む街に日本人は私一人、小さな街なので初めは興味津々という目で見られていましたが、最近少しずつ友達も増え、いろんな人と知り合いになり、それなりに生活に慣れてきました。
ブルガリアの人は大変フレンドリーで、初めて会ったその日に一緒にワインを飲んだり卓球(話しているうちに何故かそうなってしまった)したり、ブル語がまだまだ未熟の私と一生懸命コミュニケーションをとろうとしてくれるのでとても嬉しいです。私の目から見たブルガリア人は、自然を愛し、芸術を愛し、またその才能も知識も豊かで、おだやか、そして親切です。見習うべき点がたくさんあります。
スヴィシトフ市 丘からの風景
そうそう、職種について書くことを忘れていました。私は一応日本語教師としてこの街唯一の大学に通っています。学生は皆勉強熱心、日本の大学でもよく第二外国語として何かを選択しますが、ここでもその一つとして日本語のクラスが存在します。学生の専門は経済、第一外国語として英・独語を学んでおり、日本語は楽しむ程度に学んでいるのだろうと思いきや、「もっと授業数を増やして下さい。」と言ってくる程熱心です。
かと思えば突然「今日はコーヒーを飲みましょう。」と言って一コマ=75分の授業を潰し、喫茶店に行ってみたり、「〜市に自分の店があり、明日から忙しいので来られません。」と長期欠席してみたり、うーん、何でもありなのねーと感心しつつ、自分もそれを楽しみながら少しずつ授業を進めています。長野オリンピックで日本への関心をますます高めてくれた生徒たち、その割には朝鮮半島を指さして「日本はここです。」と自信たっぷりに言ってくれる生徒たち、少しでも日本を知ることや日本語を学ぶことが楽しいと思ってもらえるよう、自分なりにがんばりたいと思います。
最後に・・・今私は自室でこれを書いていますが、私の部屋の窓からはあの「美しき青きドナウ」で有名なドナウ河が見えています。残念ながら「美しき青き・・・」とは言えませんが(夏は美しいらしい。けれど河から大量に蚊が襲ってくるとか・・・。)対岸にはルーマニア、しかも走っている車がわかる程近くに見え、なんだか今頃になって東欧に来たことを実感しています。ブル人絶賛の、春夏の豊かな自然を楽しみに、ブルガリアののんびりした時間で、のんびりした生活を送ろうと思います。
それではこのへんで終わりたいと思います。また。これがドナウ河 対岸はルーマニアです。泳いでいけそう・・・